軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百二十六話 喰う、とは

「ハクキ……テメエ、アースがこの状態の時に遭遇したのか!? 本当にアースは今も生きてるんだろうな!? 負けたら子分がどうとか先日会ったとかそういうのは俺たちを混乱させるための嘘とかじゃねえよな!? あいつが今も生きているから会ったんだろ!? そうだろ!」

囚われの身ながらヒイロが激しく声を荒げた。

「エスピやスレイヤは現代でも生きているけど……アースは!? この時のエルフたちは!? 一体どうしたの!? どうなったの!? 答えなさいよ!」

マアムも同様だ。

拘束されている手足を引きちぎりそうなほどの勢いだ。

だが、一方でハクキ本人は……

「ふむ……こういう現在進行形で世界が注目する熱きイベントの中で、自分の名や姿が出ている者たちを羨ましいと思ったものだが……」

少ししんみりしたような表情で空を見上げ……

「パリピめ……少しは気を使わぬか。世界中から罵詈雑言が聞こえるではないか」

ちょっと落ち込んでいた。

しかも……

『もう後悔しないで死ねる人生を送ったか? 後悔あるのなら殺さず、捕えず、喰って吾輩の血肉として活かしてやろう』

と、世界中が恐怖に震えるようない瞳と言葉の圧。

これまでハクキ本人と直接会ったことが無く、名前だけしか知らなかった者たちも「あれが伝説の六覇最強・ハクキ」と誰もが理解させられた。

「……自分はもう少し優しく言ったような気がするが……これは切り取りや誇張演出ではないだろうか?」

ただ、本人はやはり不服であった。

「あ、あわ、わわ……ハ、ハクキ大将軍……やべぇ……ヤベエ! アースぐんだちが! アースぐんが殺されちまう! アオニーにも、お嬢も、どうなっちまうだ?!」

男は涙ながらに思わず立ち上がった。

親友のピンチに今にも駆け出しそうなほど慌てて。

『ヒイロたちよりも遥かに劣る……所詮はベトレイアル王国が、金を積んで得られただけの七勇者の肩書か……余談だが……この世に吾輩より強者は存在する。しかしそれでも……大魔王様……冥獄竜王ですら、吾輩を滅ぼせていないのだ。その辺に落ちているゴミをかき集めてどうにかできるとでも思ったか?』

だが、これは目の前で起こっていることではなく、過去の時代で起こっていること。

この場にいる自分たちにはどうしようもない。

「アレが……昔からずっとその名前を轟かしていた魔王軍のハクキ……そんな、アーくんが! エスピちゃんにスレイヤくんも!」

先ほどのアオニーとのぶつかり合いを目を逸らさずに強い心で見続けたアヴィアですらこの状況にはオロオロとするしかなかった。

アヴィアですら子供の頃からその名前を知る、伝説の一人。

それが自分の孫と、その孫を慕う幼い子供たちと遭遇し、これ以上ないほどの危機に陥っているのだ。

「どうなっちゃうの? ラガーンマンどうなっちゃうの?」

「あいつ、こわいよぉ……」

「ラガーマン、た、たおせー! がんばれー! エスピちゃん、スレイヤくん、がんばれー!」

村の子供たちはハクキを知らないが、それでもその圧倒的な存在に恐怖している。

大人たちも同じ。

それは、ヤミディレやパリピやノジャが現れた時とも違う。

バサラのように豪快に笑って威圧感あれども殺意のなかったものとも違う。

それはまさに絶望。

そして、現れた人物がハクキ本人であることを、言葉だけではなく力でも……

『ふわふわ世界! ふわふわ乱舞ッ!』

これまで「かわいい・最強・無敵」で世界を熱狂させたエスピ。

しかし、そのエスピの技がハクキには通じない。

『インフィニティブレイドサイクロンッ!』

才能溢れすぎる可愛い弟スレイヤが繰り出した大剣も、そしてこれまでお兄ちゃんの奪い合いで争っていたチビッ子二人の協力攻撃で、ハクキを押し潰そうとするも……

『活ッッ!!!!』

それすらも圧倒的な気迫だけで全てを吹き飛ばす。

『玩具遊びはもう終わりか?』

それは、ハクキ登場からわずか数分足らずの出来事。

それを見てまず……

「ほ、ほ……本物だあああああああああああああ!!??」

『ぬぅ……ハクキ本人に間違いないゾウ』

ハクキの強さをよく知っている七勇者ソルジャと六覇ライファントのお墨付き。

『……ん? ふふ……大気圏で燃え尽きたか。まぁ、よいか。ゴミが本当に月に届いてしまったら、バサラが怒って飛んでくるかもしれんしな。カグヤ……貴様の墓への供え物は、また改めてにしよう』

それゆえ、その場にいた臣下たちは全員腰を抜かした。

「あ、あれが、十数年前より行方をくらました、世界最高額の賞金首……六覇最強……白き鬼皇・ハクキ……」

「きょ、教科書や手配書以外で見たことないが……な、なんだ……み、見ているだけで震えが止まらない……」

「あの七勇者のエスピと天才ハンタースレイヤが……まるで子ども扱い……」

「いや、子供ではあるけど……って、そういうことはどうでもよくて……」

「殺されるんじゃ……」

「エスピとスレイヤの連携攻撃を正面から軽々受け止めて……そ、それを空の彼方まで投げ飛ばし……」

「めちゃくちゃだ……」

その場にいるソルジャやライヴァールを除いた帝国戦士たち。その中でも王の側近にも選ばれた上級騎士たち。そんな彼らですら立ち向かうことすらできないほど、絶対的な力の差を感じていた。

だからこそ、そのハクキと遭遇している者たちの死を連想してしまう。

「この時は当時の私たちが総がかりでもハクキに敵わなかったのだ……いくら何でもエスピやスレイヤだけでは……アースもあの状態では……」

『まずいゾウ……あの場にいるものが全員殺され……いや、エスピもスレイヤも現代でも健在……ならばこの場面を乗り越えた? どうやって? 殺す気になったハクキを前に?』

「ぐっ、そうだ、ここでライヴァールがアースたちについて逆のことを言えば……い、いや、ダメだ……どんなトリッキーなことになるか分からない……って、私は何を言っているんだ!?」

「……お、落ち着け……ソルジャ。おそらく――――――」

「何も言うな、ライヴァールッ! あぁ~、どうしてこんなことに、どうなっているんだまったく!」

ソルジャもとにかく混乱していた。

ハクキという存在は六覇の中でも七勇者たちにとってはそれだけ特別な存在だからだ。

ただ、一方で……

『ここで始末してやろう……エスピ……そしてスレイヤとやらよ。能力はいらんが……生きたいというのなら喰ってやろう」

ハクキのことを名前以外知らない世代は……

「それにしても……あの鬼……さっきから、あんな威圧する雰囲気出して何ということを言ってるんだ?」

「ああ。エスピとスレイヤに向かって……喰うだなんて……」

「喰うって……なんてことを……」

「あれって、驚かすために言ってるわけじゃないよな?」

それはその中でも若い世代。すなわち、戦争を経験してない二十代前半の兵たちの、ハクキに対する嫌悪も含めた言葉。

「ん? ああ、お前たちは知らぬだろうが、ハクキの喰うというのは、本当に喰うのだ」

「「「「やっぱり!!?? 本当に、それじゃあ……」」」」

「うむ、それはハクキの能力的な―――――」

ソルジャたち戦争を知り、尚且つハクキとも戦ったことある者たちにとっては「その意味」が分かっているので、今のハクキの言葉に驚きはなく、その意味を説明しようとしたら、その前に若き兵たちは……

「いくら七勇者と天才ハンターとはいえ、相手はあんな小さな子供! あんな小さな女の子と男の子に……そういう猥褻なことをしようなんて、鬼畜! 何て鬼畜なんだ! まさか伝説の六覇、ハクキが……そんな変態だったなんて……」

「「『…………ん?』」」

ヒトが人を喰うというのをそういう「食事」以外に捉えたりすることもある。

まさにハクキを知らない世代は、ハクキの「喰う」を「そういう意味」に捉えた。

そしてそれは意外にその場にいた者たちだけでなく……

帝都での若者たちも……

「え、エスピちゃんと、スレイヤ君を食べるって……あ、あんな小っちゃい子を? う、うそでしょ?」

「食べるって、ま、まさか、……その、エロい、意味の?」

「嘘だろ……あんな小っちゃい女の子と男の子にそういう性的なことをしようと?」

「戦争では、そういう凌辱的なことも日常的にあるってのは聞いたことある……でもよぉ……子供相手になんて……」

「信じられない……ハクキが男の子でも女の子でも、小さい子供を平気で……そんな鬼畜なペドフィリアだったなんて……」

「ぐっ、やっちまえ、アース! 目ぇ覚ませ! その変態ペドフィリアオーガをブチ殺せぇ!」

と、それまでハクキの登場と圧倒的な強さに怯えていた帝都民たちも、ハクキの鬼畜な発言に色々と勘違いして、我慢できずに声を荒げた。

ハクキ。一部からは変態鬼畜認定。

「ハクキめぇ~、月にゴミを投げ捨てしようとしておったか……なんちゅークズじゃ、あのアホがぁ!」

怒りをグチグチと口にするバサラ。

その足元では……

「つ、強い……あの二人がまるで相手にならぬだと!? こ、これでは、いくらアースでも……」

「スケールが違います……天空世界で我々が戦ったパリピ……あれ以上のものを感じます」

「六覇最強……勝てる気がしないよ……アース、どうなっちゃうの!? アース!」

「くそ……俺たちはこんなところでただ呆然と見上げているだけなのか!」

フィアンセイも、サディスもフーもリヴァルもただ己の無力さを痛感させられるだけ。

「……そ、それに、喰うって……ど、どういう意味かな? そ、そういう意味でなのかな?」

「そ、そうっすよ……まさか本当に……あんなヤバそうなオーガがガチでそんなヤバいことを?」

一方で、帝都同様にハクキの発言に顔を青くするツクシたち。

「ぬぅ……我もハクキのことは、教科書に載る経歴以外は知らん……サディスは知っているか?」

「わ、私もそういうことまでは……六覇の中で最もハクキが危ないとは聞いていましたが……危ないとはそういう意味でも?」

フィアンセイたちも答えが分からないため、「本当にそういう意味かもしれない」と余計に寒気がしてゾッとした表情をする。

ただ……

「喰うとはそういうスケベ行為をするとかそういう意味ではないぞ。とはいえ、本当の意味がマシな意味かと聞かれたら、頷きがたく、もっとヤバいかもしれぬがのう」

そこで、ハクキをよく知るバサラから訂正が入った。

ただし……

「どういうことです? 師匠。なら喰らうとは……『殺す』的な意味でしょうか?」

「いーや、結果は同じじゃが、意味は違う。喰うとは……本当に喰うのじゃ」

「……は?」

「おぬしらが動物や魚の肉を食う食事と同じじゃ……あやつはガチで食う」

「…………え……」

「比喩ではなく……喰う……本当にのう」

その訂正が入った真実は、ある意味でもっと悍ましいもので、その場にいた全員が一斉に顔を青くし、

「く、くう、ガチで、そ、それって……に、人間を!?」

「人だけではない。あやつは別に何でも食うぞ? まぁ、雑食な奴じゃ。そういう体質で、そういう能力でもあるんじゃがな」

「ッ!?」

絶句し、色々な意味で全身が震え上がった。

マチョウやサディスでも震え、ツクシとカルイは涙目になってアマエを抱きしめて身を寄せ合っている。

「まぁ、そういう意味であやつは……とんでもないものを喰う雑食野郎ということじゃ!」

そのとき、バサラ本人もその場にいた者たちも、バサラが初登場した際にはヘビーモスを喰ってる最中だったことを皆忘れていたが、それだけ皆ショックだったのだ。

ただ……

「そして、喰った相手の魔力やら、能力やら、技やら……そういうのも受け継ぐがのう」

「……え? 師匠、それはどういう意味で……」

そこで、サラっとバサラが最後に付け加えた言葉に、フィアンセイたちは反応。

それは、ハクキの性癖やら食生活やらそういうのとは別の意味での、ハクキに備わっている能力の話で――――

『では。死んで腐敗した肉になるか……喰われて吾輩の血肉になるか……どっちがよい?』

ただそのとき、ハクキが今まさにエスピとスレイヤを文字通り「喰おう」としたそのときだった。

『腹が空いてないなら、殺すな食うな』

『……お?』

『そして森を、山を、自然を荒らすな……って言っても無駄か。世界や生態系を荒らしている連中にはね』

エルフの族長がそこで介入し、ハクキを止めた。

その瞬間、バサラはまた興奮して皆の疑問への回答をそっちのけで……

「おっ、よーし! 族長とやら、ハクキをぶっ殺すのじゃぁ! テイムしろテイム! ピーチボーイみたいにモンスター出せい! もしくは他の能力も見せい! ワシの目は誤魔化せんぞ! ど~せ貴様も『ハクキと同じ能力』を持っておるのじゃろう? 草食ぶっとる場合じゃないぞい! つーか、ワシが許す! ハクキを喰え!」

と、エールを送る。

ただ、その豪快な声で送られたエールのその中身に……

「「「「「……え?」」」」」

また、カクレテールの者たちは固まった。

ちなみに、ここから始まる展開に……

「ひはははは、さぁ、世界よ、目に焼き付けよ! ここから始まる、人と鬼の何かが変わるかもしれねぇ、展開をパナイ目に焼き付けろ! そしてその世界の反応をオレに見せろ!」

この鑑賞会の全ての黒幕パリピは興奮して、ワクワクしながら世界の反応を待っていたところ……

「あの……ちょっとよろしいでしょうか?」

「な~に? いま、パナイいいところなの~!」

パリピの横からコマンがひょっこり顔を出し……

「今、私の方で帝国に仕掛けている監視用魔水晶を覗いたのですが……一部の所で……ハクキの『喰う』はエッチな意味で、そして小さな男の子でも女の子でもイケる変態鬼畜ペドフィリアという反応が……」

「ふぇ? ……え? ……………まぢ?」

それはパリピにとっては完全に予想外。

「え? あれ? そんなことになってんの? アレ? もしそれがハクキの旦那の耳に入ったら……オレ……まさか、ハクキの旦那に真っ先にぶっ殺されるんじゃね?」

「ですね。たぶん。そのまま喰べられるか、それとも喰べる価値が無いと思われて捨てられるか……」

「わお!? え、まぢで!? 帝国の若者バカじゃね!?」

「いえ、ひょっとしたら帝国だけでなく……」

「やばくね!? パナイやばくね?! 誹謗中傷だとかヤバくなっちゃわね?! オレも虚偽の情報流布は……やっべえ、ハクキの旦那に殺される!? ぶっ殺される!?」

自分の想定していなかった反応が人類から起こり、それがハクキの耳に入った時のことを想像して、パリピも珍しく慌てるが……

「ああ~~~~どうしよどうしよパナイどうしよーーーーーーー! ……ま、いっか。ヒハハハハハ、やっちまったもんはパナイ仕方ねぇ~」

秒でケロッとして、再び鑑賞に戻った。