軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百十六話 爆誕の日

鑑賞会でついに自分たちエルフが登場した。

本来ならエルフの集落ではそこで大盛り上がり……のはずなのだが……

「………………」

「あ、あの……イーテェ?」

「………………」

「あ~、あのさ……これ、ほら、十数年前の話だよ?」

「…………」

「お、おーい……」

少しだけギスギスした空気が流れていた。

それは、登場早々に族長がアースたちに土下座するという情けない場面だったからか?

違う。

――族長のくせにって、皆が勝手にさせたんだからね? あのツンツンとメンドクサイお嬢様が勝手に俺と結婚したとか触れ回って……勝手にだからね?

族長が口にした愚痴にイーテェが無表情になった。

「うぅ~、おとーさんのばかぁ……今すぐお母さんに謝ってよぉ!」

「い、いや、これはだな……」

「お母さんはお父さんのこと大好きなのに……お父さん酷いよぉ……私は……愛し合っているお父さんとお母さんの子供だと……うぅ……」

「いやいやアミクス、色々勘違いしているぞ! お父さんとお母さんは別に仲悪いわけじゃなくて、これはある意味で素直になれない根暗な捻くれくんの発言と思えばそこまで重くとらえる必要もないわけで……とにかく、お父さんはお母さんのこと好きだよチョー好き好き、おーせかいでいちばんすきだよー」

「心が籠ってないよおおお、バカぁああああ!!!!

半泣きで族長に怒るアミクス。

自分は愛し合っている両親から生まれていたと信じているために、自分が生まれる前の父の態度に悲しさしかなかった。

ただ……

「やめなさい……アミクス」

「お母さん!?」

ずっと黙っていたイーテェが静かにそう呟いた。

ただし、その表情は無表情で冷めている。

「もうあなたもいつまでも子供じゃないんだから……昔はね、お母さんも前族長の娘ということで……集落にとって欠かせないお父さんと結ばれるように言われたのもあって……」

「お母さん、や、やだぁ! そんなの聞きたくないよぉ、お母さん! お母さんもお父さん大好きなんでしょ!? ねぇってばぁ!」

冷たくそう呟くイーテェにアミクスは涙が止まらない。

母もまた「父との結婚は仕方なかった」、「前族長だった親に逆らえなかった」というような言いっぷりだったからだ。

アミクスだけでなく、集落の他の若者たちや……

「……親の……そういうのってやはりあるのよね。……私は幸せね。ハニーと出会えて、両親にも応援されて……マクラだって本当なら……」

「……拙者はカゲロウに寝室で無理やり襲われ―――いやいや、なんでもないでござる、カゲロウ!」

「はぁ~……そやったんやなぁ~。あの奥さん、そないな感じには見えへんけど……」

シノブたちも複雑そうな表情を浮かべる。

ただ、一方で……

「「「「「はは…………」」」」」

当時からの二人を知る大人のエルフたちは半笑い。

そして……

「……ん~? いやいや……何言ってんだ?」

『……?』

アースはトレイナと並んで首を傾げた。

「あ~あ」

「しーらない」

そしてスレイヤとエスピはクスクス笑っている。

そう、特にアース、スレイヤ、エスピ、そしてトレイナは当時のことをよく覚えている。

アースとトレイナにとってはついこの間の事であり、エスピとスレイヤにとっては十数年の月日だけで忘れることなど不可能なことがこの後に……

「うそだよぉ! だってお母さん、たまにお父さんにニャンニャン―――」

そう、アミクスがソレを口に出そうとした瞬間……

『にゃ~! あなた、帰ってくるのおそいにゃー! あ、あ、あんまりにも遅いから、拗ね拗ねプンプン猫さんになっちゃったにゃー!』

Σ(゜Д゜)

Σ(゜Д゜)

Σ(゜Д゜)

Σ(゜Д゜)

Σ(゜Д゜)

Σ(゜Д゜)

そう、それは……

「ぶっ?! ちょ、え、あ、え……ちょおおお!? うそ、これ、わ、私の……あ!!??」

「ふぇ? お、おか、おか……おかあさん?」

族長たちにエルフの集落に案内されることになったアースたち。

「あ~、あったなこんなの……うわぁ……」

族長も「思い出した」と頭を抱える。

そこで、族長が家を開けると、毛皮ビキニと尻尾と猫耳をつけて顔を真っ赤にしながらも頑張るイーテェ。

『きょ、きょきょ、今日は……今日はいっぱいいっぱいかわいがってほしいにゃん! ゴロゴロ甘えちゃうんだにゃん! いっぱい、好き好きチュッチュしちゃうんだから、し、してくれないと、ひっかいちゃうにゃん♡』

「ちょおお、待って待って待って待って待ってよぉおお! ちょ、ちょお、うおおおい、何やってんのよ!? 」

『ぷ、プンプンしてたら体が火照っちゃったのにゃ……ごごごご、御主人様のこと考えてムズムズしちゃうの……ギュッとして、ナデナデして……そしたら、いけない猫の私は、な、なんでも、言うこときいちゃう、ちょ、ちょっとエッチで良い子な猫さんになっちゃうにゃ~ん……』

「ひぎゃあああああああああああああ!? ちょ、お兄さん、あんたパリピとかいうやつに今すぐ連絡をおおおお! やめ、やめええええ! いやぎゃああああああああ!!!!」

冷めた顔していたイーテェが一変し、顔を真っ赤に目をグルグルさせながら夜空に向かって吠えている。

だが、その声はパリピに届かない。

そもそも、届いてもやめない。

『ご、ごはんと一緒に……朝まで、わ、私も食べてぇ……にゃん♡』

「やめなさい、ちょ、娘が見てるのよぉおお!?」

否。娘どころか世界が見ている。

「お、お母さん……か……か……かわいいいいい! もう、お母さんのうそつきィ! お母さんがたまにやってるニャンニャンのアレ、この頃からやってたんだぁ!」

そして、そうなったら涙も一瞬で笑顔に変わる。

アミクスはこれでもかとニコニコして母と父に抱き着いた。

「あ、あ~……よかったわね、アミクス。にゃ、ニャンニャンね……あざとすぎて私には無理ね……でも、ハニーが望むなら……」

「せやろな~、あの奥さんからはそういう感じしかせえへんかった」

「なんとも……森の賢者エルフもこういうのなんじゃな」

「ははは、そういえばダークエルフのお姉さんもこんな感じで子供たちと遊んでるじゃな~い」

「ぬっ、しょ、小生は猫ではなく兎ゴッコだ!」

「あはは、ラルさん、その反論はあまり意味ないかも」

そう、どんなに取り繕おうとも、イーテェが族長にゾッコンだというのは、もはや知らない者はいない事実。

集落のエルフたちも「お熱い」とニマニマしている。

さらに、この衝撃をパリピはここで終わらせない

編集し、音楽も少し混ぜて……

『にゃ~、拗ね拗ねプンプン猫さん、拗ね拗ねプンプン猫さん、きょう排卵、エッチで好き好きチュッチュ、きょう排卵、エッチで好き好きチュッチュ、きょう排卵、エッチで好き好きチュッチュ、ごはんと一緒に、ごはんと一緒に、朝まで朝まで、私も食べてぇにゃん♡ してくれないと、ひっかいちゃうにゃん♡ にゃ~』

「ふぎゃあああああああああああああああああ!? 改変すなああああああああ! 切り取りよぉ! 切り取って繋いでるぅぅ! 切り取り繋ぎよぉぉおおおお!」

切り取って繋げ、繰り返し、まるで歌って踊っているような『拗ね拗ねプンプン猫エルフイーテェ』を全世界に者たちに無理やり刻み込む。

そう、これはまさに全世界中の人々のほとんどが、初めて見た女性のエルフである。

拗ね拗ねプンプン猫エルフは……

――女エルフ来たアアアアアアアアアアア! しかもニャンニャン!!

――すごい! あ、あざといのに、あの容姿でやるともはや反則!

――ちょっとエッチなエルフ無敵最高!

――族長さん、抱いてあげなさい!

――アース、空気読んで族長と奥さんを二人にしてやれ!

――にゃ、にゃ~……わ、私も彼にやってみようかな……

世界中の至る所で興奮の歓声が轟いた。

そして……

「……ダーリン……あたいもアレ……やってあげようか……にゃん?」

「……せんでもワシはお前のままであれば……」

ナンゴークのアットホーム一家、ショジョヴィーチとマルハーゲンは結婚十数年になるというのに寄り添いイチャイチャしながら、家の庭で観賞中。

「んふふ……でも、本当に可愛いな~、エルフのお嫁さん……ニャンニャンか~……アレで男の子が興奮してバキバキになって獣みたいに犯……可愛がってくれるのも楽しいかも」

「ね~、わ、私も早く外の世界でツガイ欲しい~! キキキ、キスとかさー、したりさー、もう、ヤヤ、やりまく……」

「わたしもー、でもどうせニャンニャンでちゅっちゅするなら強い人がいいよね~。ザコザコな男の子じゃなくて♪」

仲良しな両親、そして現在見た衝撃の光景にニコニコが止まらない三人の娘。

長女のセイソヴィーチ、次女のピュアヴィーチ、三女のロウリヴィーチ。

家族で楽しんでいた。

そして……

「……おい、貴様ら……まったく……あのエルフの族長に何か感じたというのに吹っ飛んでしまったな……まったく……クロン様、あのようなのを真似してはなりませんよ?」

「あら、そうなのですか? とってもとっても可愛いではありませんか! こう……にゃ~ん、にゃんにゃん♪」

「ぶっ?! っ……」

「お母さん?」

「い、いえ、何も……クロン様、ふ、不意打ちでそれはおやめください……思わず鼻血が出そうに……」

「?」

昼間からこの家に訪問していたクロンとヤミディレも、マルハーゲン一家と一緒に今日の鑑賞会を楽しんでいた。

「うん、クロンちゃんがやったら無敵だと思う!」

「だよねー、あのアースくん、絶対好きになっちゃう!」

「それ間違いないよー」

「え、そ、そうなのですか? ふーむ……」

「いえいえクロン様、あのようなあざといの、逆に引かれ――――」

そして、その時だった。

『おうっふ!』

『お兄ちゃん?』

『お兄さん?』

拗ね拗ねプンプン猫エルフを目の当たりにしたアースが、突如変な声を出した。

「アース?」

一体何事かとクロンたちも首を傾げる。

すると……

――このとき、拗ね拗ねプンプン猫エルフを見て、少年は思いました……

そこでパリピのナレーションが入った。

――もし、これと同じことを……『自分と関りのあった女性』がしてくれたら? サディスが? シノブが? クロンが?

『うおっ……』

――想像しただけで、少年は……

それは、あのアースが顔を赤くして、何かを思案している表情から急にニヤけたり、ハッとしたりしている姿。

アースは決して口に出しているわけではないが、パリピのナレーションが入るだけで「本当にそう考えている」ように見えた。

そのことに、クロンは衝撃。

「ッ!? な、ほ、本当ですか!? アースが、アースは、拗ね拗ねプンプン猫さんがいいのですか!?」

「なんっ……ッ! クロン様、前言撤回です、今すぐ猫耳猫尻尾毛皮ビキニを用意しましょう!」

「あら、うふふ、いいかもしれない。ね、クロンちゃん、やってみて」

「ねね、試しにフリだけ……ね!」

「クロンお姉ちゃん!」

アースは拗ね拗ねプンプン猫をご所望……ならば、自分も……そう思ったクロンは、試しに両手で猫の手を作り……

「にゃ、にゃ~……アースぅ、拗ね拗ねプンプンクロン猫ですにゃ~♡ ぎゅってしてくれないと、ひっかいちゃうですにゃん♡」

「「「「ッッ!!!???」」」」

そして……

「…………人生に悔いなし」

「ふぁ!? お、お母さん!? どうしたんですにゃん! あ、じゃなくて、お母さん!? あ、は、鼻血です!」

ヤミディレが鼻血を出してそのまま崩れ落ちた。

「……これ……無敵ですね」

「……私……むり。これ以上可愛いのできるわけない」

「私がクロンお姉ちゃんにぎゅってしてもらいたくなっちゃった」

その破壊力に三姉妹も脱帽であった。

そして……

「……ぼ、坊や、ぼぼ、僕も……女の子なんだにゃん、たまには甘えさせてくれないと……さみしくてひっかいちゃうにゃん……どどどど、どうだろうか?」

「そそられなくもない……スムーズにやるより高評価……しかし、長身男装令嬢……いや、今スカート履いてるけど……うーむ、とりあえず衣装を俺っちが用意する。偶然、同じような衣装が俺っちの倉庫にあるから」

「「はあはあはあはあはあはあ、王子ぃ~」」

ジャポーネでも……

「アース、わ、我も寂しい猫だにゃん! 拗ね拗ねだぞにゃん! ど、どうだろうか!?」

「……フィアンセイちゃん、だめ。かわいくない」

「はぐううう!? ア、アマエ……ぐっ、うう……というより、パリピ! なぜ、わ、我の名前は……う、うぅううう……」

浜辺で試しにやるフィアンセイ。

しかし、アッサリとアマエからダメだし。

「あ、あはは、姫様は凛々しい感じだからああいうのはね……って、リヴァル?」

「……っ、く、う……」

「あ……リヴァル的にはいいんだ……」

そのクオリティにはフーも苦笑してしまうが、どうやらリヴァルは「アリ」のようで、クールに振舞いながらも口元がひくひく動いていた。

「マチョウさん……あ、あの……」

「ツクシ、別にやらなくても構わん……」

「あ、そ、そう……なんだ……」

そして、フィアンセイだけでなく、ツクシや……

「でも、ぼ、僕はいいと思う!」

「オラぁ、何だこの衝撃は、胸が熱いぜ!」

「い、いい……」

「むほぉ、僕もやって欲しいんだな!」

「「「「え!? そ、そうなの!?」」」」

モトリアージュたちと、彼らと最近親しいシスターたちも……

「……おやおや、坊ちゃまは……仕方ないですねぇ」

サディスまでソレに興味を持った。

サディスは表面上は呆れたように笑いながら、しかし、少しだけ浜辺で皆の輪から離れ……

(……『坊ちゃま、たまには甘えさせてくれないと許しませんニャ♡』……いえ、これではありませんね……いや、これではなく先ほど思いついた、ちっちゃい私ならどうでしょうか! 『坊ちゃまお兄ちゃん……サディス猫可愛がって欲しいですにゃ……』……あ、これいいです! これなら坊ちゃまも私を手放さないです! くっ、今日のヴイアールは忙しくなりそうです……)

と、頭の中でシミュレーション。

そう、現在世界の至る所で「拗ね拗ねプンプン猫」が誕生しようとしていた。

そしてエルフの集落では……

「ちょっと待てええええ、パリピいいィ! 俺はそんなこと一言も言ってねえぞォ! 勝手に脚色するんじゃねぇええ!」

『……しかし実際このとき、貴様はクロンたちを猫耳にして妄想していたので、むしろ本当のことだろう……』

アースは妙なレッテル張りだと声を荒げる。

しかし、実際パリピのレッテル張りなどではなく事実であり、トレイナも思わずツッコミ入れた。

そして何よりも……

「あ、あはは、ハニー……い、いいと思うわ! 全然私は受け入れるわ! わ、私も拗ね拗ねプンプンシノブ猫になって、ハニーに甘えちゃうわ!」

「はぁ~、アース様、アリなんだ……拗ね拗ねプンプン猫さん……私もやったら、アース様、喜んでくれるかなぁ? お母さんの衣装、試しに着てみようかなぁ?」

「アミクス、落ち着いて、駄目それ。お兄ちゃんが壊れちゃうから。あと、サイズ絶対合うわけないから。胸とか」

「うん……このときこんなことを……お兄さんったら……」

「アースくんも若いのぅ」

「はは、お兄さんもこういうところは男の子じゃな~い!」

「ええなぁ、シノブ。猫になって、はよう可愛がってもらうんやえ」

パリピの言うように「ああ、そんな妄想してそう」というぐらい、空に映るアースの顔は緩んでいたため、誰もがパリピの言うことを信じた。

「ねえねえ、お母さんってばぁ! 私にも……あ……」

「プルポルジョボルババグランダジャナグリャ」

「ふぁ、お、お母さんがもう何言ってるか分かんなくなっちゃった!?」

拗ね拗ねプンプン猫が意外と高評価だったとはいえ、それをやっている場面を娘どころか世界中に見られたショックは大きく、イーテェは真っ白になって聞き取り不能な言葉を呟いていた。

「おとーさん! どどど、どうしよう! お母さんがノジャちゃんみたいに!」

「あ~……ま、まぁ、時間が解決してくれるかもだから、そっとして――――」

このままでは、イーテェもノジャのようになってしまうと慌てるアミクス。

ただ、ノジャとイーテェでは違うところがあり……

『あなたたちちょっと匂うわよ? お風呂にあまり入ってないんじゃないの? ほら、来なさい。お湯沸かすからちゃんと洗いなさい!』

恥辱を味わいながらも何だかんだで幼いエスピとスレイヤを歓待して面倒を見るイーテェ。

二人きりになった族長にアースは……

『ははは……族長の嫁さんには悪いことしちまったな。でも……優しいんじゃねえのか? あんたも満更じゃないんじゃ……』

と、ニヤニヤしながら尋ね……

「ぶっぼ! ちょ、あ、あああああああああ! をああああああああ! ああああああ!」

「へ? ちょ、お父さん、静かにいい! 静かに! ねえねえ、静かに!」

「ふがふがふが!?」

その光景に族長はハッとして、珍しいぐらいに大声を上げて皆に聞こえないようにするも、アミクスに無理やり口を塞がれ、そして……

『望まない結婚だし、俺は正直小説のネタ探しのために世界を旅したいまでもある。でも……今の情勢の中であいつを残してそれを実行できないぐらいには気になっている存在ではあるということは否定できない』

素直ではない、ひねくれの言葉を顔をそっぽ向けて口にする族長。

しかし、それでもその言葉にはイーテェに対する確かな想いが滲み出て、何よりも……

「ああああああ! お父さん……耳真っ赤!」

そう、ぶっきらぼうに言いながら、当時のアースは気づかなかったが、よく見たらその時の族長の耳が真っ赤になっていたのだった。

「あー、あったなぁ、これ! うわ、確かに族長の耳先が……あっか! 気づかなかったなぁ~」

「うわー、なにこれー! 私たちがお風呂入ってる間にこんな会話あったの!?」

「へぇ~、そうなんだ。だってさ、アミクス」

「あら、そうなのね。つまり……両想いじゃないの」

そう、結局何だかんだで族長もイーテェのことをちゃんと想っていると丸分かりなシーン。

「ぎゃああああ、やめてえええ、これもたぶん切り取りいいィ、パリピいいィ!」

「いや、切り取ってねえよ、族長。これ、まんまだったぜ?」

皆がニヤニヤ族長に視線を送ると、族長は頭を抱えて悶えた。

そして、屍になりかけたイーテェも……

「へぇ~~~~~、あらあらそうなの……へぇ~~~~♪」

急にこれでもかとニンマリと緩み切った笑みを浮かべていた。

「へぇ~、そっかそっかー! へぇ~、そうなのねぇ~! あなたってば旅に出たいのに私が気になって気になって出れなかったんだ~、結局この十数年一度も旅に出ずに~、私のこと気になって好きで好きでしょうがないんだ~、へぇ~」

「な、そんなこと言ってない……」

「へぇ~、そっかそっか~!」

もはやこれでもかとマウントを取ってくるイーテェを睨む族長だが、もはや揺るがない勝ち誇った笑みである。

「も~、なんだ~、ビックリさせないでよー! お父さんもお母さんもラブラブなんだ~! よかった!」

アミクスも安心したようにホッとしてニコニコし、そして……

「………………ぐすん……」

屍は結局、九尾一つのままであった。