軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百八話 冥福を祈る

顔を青ざめさせ、世界中が絶句する中、帝都の王宮では……

「こ、こんなことをするとは……パリピめ……いくら何でも……」

『まずいゾウ……真面目に……魔界新政府の重役であるノジャの威厳が完全に地に落ちたゾウ……いや、というかあやつ、もう人前に出てこれぬのでは? しかし、これはあまりにも……』

「パリピめ……これは、魔族との友好を推し進めようとする世界連合と魔界新政府への妨害を込めて?」

『分からぬゾウ。いくら何でも……やりすぎだゾウ。もうノジャの魔族の民に対する発言力もなくなるゾウ……』

ソルジャとライファントが顔を青くしながら真面目にそう呟くと、同じく顔を青くしていたライヴァールが……

「いくらパリピとはいえ、同じ六覇の同志であったノジャのこの羞恥を、ただの嫌がらせやウケ狙いで世界に報じるわけがない……恐らく何か深い思惑があるのかもしれん」

「「「「『(あっ、つまりパリピには深い考えがなく、純粋に嫌がらせとウケ狙いでこれをやったのか……)』」」」」

そう呟くものなので、その場にいた全員が主催者のパリピの心情を確信に近い形で予想したのだった。

その日以来、その存在は世界の子供たちに大きな影響を与えた。

近い未来、世界にその名が広がる。

――んもう、ちゃんと我慢しないでおトイレしないとダメでしょ? このままじゃ将来、お漏らしノジャになっちゃうわよ?

――やーい、おしりぺんぺーん、ブリブリノーッジャ♪

――漏らしてるー! やーいやーい、お前は、●●こたれなのじゃ~♪

六覇の怪物は人間の世界では恐怖の対象。

母たちは『良い子にしてないと六覇が来る』とか子供たちに言い聞かせていた。

そして今日以降、子供の教育の中でノジャの名前は頻繁に出てくることになるのだった。

伝説の六覇。歴史に名を刻んだ生ける偉人。教科書に載り、後世まで伝えられる存在。

幼女闘将ノジャ改め、お漏らしノジャ。ブリブリノジャ。う●●たれなのじゃ。

世界はいつまでも残酷であった。

「ねぇ、ヒイロ……ラガーンマンの正体をノジャが既にアースだと知っていたとして……アースがノジャにあんなことをしていたのだから……その、た、多少は目を瞑ってあげても……いいのかなって……」

「ま、もう俺たちにアースの恋愛事情を口出せるわけでもないし、アースが無理やりノジャに……ってことでもなけりゃ……うん……なんつーか、六覇に同情するのって人生で初めてだ」

かつての宿敵であり、正直性癖やら含めて敬遠する存在であるノジャのあまりの哀れで悲惨な過去に、ヒイロもマアムも同情を抱いた。

「……同じ六覇の時代から吾輩はあやつとは合わなかったが……哀れだな……しかし……」

その想いは六覇最強のハクキですら抱くほどのもの。

だが、ハクキは同情と同時に口元を抑え……

「まさにあやつは文字通り、六覇の名を汚したと言うことか……敗北の意味でも、尻の意味でも……ぷっ」

「「んなっ!? (ハクキが自分で冗談言って自分でウケて……でも、えげつない!?)」」

そう、ノジャを知らなったものたちには、まさにその名は「汚名」として広がり、一方でノジャを知るものたちからは、種族やかつての敵味方問わずに「同情」が広がっていた。

「お、お前、かつての仲間なのに……」

「仲間だったが、それでも道は一緒にはならなかった。大魔王様が討たれた後の世に対して、まだ吾輩たちは戦える状況でありながらも白旗を上げたノジャとライファントには、未だに思うところはあるものだ。だからこれは……いい気味だ、と、少しぐらい嫌味を言っても罰は当たらんだろう。それに……」

そして、ハクキは自分の傍らを見て……

「……いつも鉄面皮な『傍らの女』が、腹を抱えて捩れるほど笑い転げている……吾輩とて少しぐらいは砕けたことを言いたくなるというものよ」

「「??」」

「というか……笑いすぎだな。こやつのこんな姿を見るのは吾輩も初めて……バサラが居たら嫉妬するところだろうがな……まぁ、バサラ自身も今は笑い転げているだろうが……」

目を細めながら、ヒイロとマアムには意味不明なことを呟いたのだった。

そして、ハクキの言う通り、バサラも当然……

「ぐわーっはっはっは、ぶひゃひゃひゃひゃ、あひーー、いんや~、すごいぞ小僧! あのノジャに大魔螺旋カンチョーをする奴など、カグヤの時代から誰一人おらんかった! まさに史上初の快挙を歴史に刻み込んだわけか! 刻み込んだのは肛門にじゃがな……だーっはっはっはっは!」

砂浜で足をバタバタさせながら笑い転げていた。

だが、笑っているのはバサラだけ。

他は……

「我は……ずっとアースと両思いだと思っていたのに、全然そんなことなかったと天空世界で知らされた時、我以上に滑稽な女は居ないと思っていたが……そんな程度のことで落ち込んでいた自分が恥ずかしい……我なんかと比べ物にならぬほど辱められた女が居たとは……」

「伝説の六覇……あのパリピと並ぶ怪物……それなのに、あまりにも不憫……私もヴイアール世界では坊ちゃまのお尻や私のお尻を互いにホジホj……うおっほん! でも、こんな中身を出させるほどのことはあまりにも残酷……とはいえ、これ、ノジャが坊ちゃまに責任を取らせようと迫ったらどうすれば……」

「流石にゴメンじゃすまないよねぇ……僕もこれは……」

「なんと恐ろしいことをしていたのだ、あいつは……ワザとではない命がけの中での流れとはいえ……」

「……師範やあのパリピと並ぶ存在の尻にあんなことをするとは……確かに考えただけでも恐ろしい……」

「うーん、でも流石に可哀そうすぎるかなあ? っていうか、ひどいのはパリピの方じゃないかなぁ?」

「ま、私もあんなの世界に流されたら死にたくなるっすね~」

と、アースが六覇のノジャを退けたということよりも、ノジャに対する同情の方が強くなってしまっていた。

「……しばらくカリーはお休みにしましょう……クロン様」

「……そうですね……あ、でも、トロトロしたものではなく、た、たとえば、カリー味のチキンとか―――」

「いえ、しばらくこの鑑賞会がある間はカリー自体に拒否反応が出ると思いますので……色的に……」

「う、うう、せっかくコーヒーも分かりましたのに……」

建設現場で神妙な顔をしてヤミディレがそう宣言すると、クロンは悲しそうな表情を浮かべてどうにかならないかと模索する。

せっかく順風満帆にきたカリー屋と更なる味の向上の可能性を秘めたコーヒーの存在。

いつかアースと結婚してカリー屋を開く将来のためにと抱いていたものが、ここに来て停滞を余儀なくされた。

「す、すまねえ、クロンちゃん……俺らも関係ねーと言いたいところだが……」

「あんな豪快に……や、もちろんすぐに大丈夫になるとは思うが……」

「うん、流石に鑑賞会がある間はカリーを出されるとどうしても思い出しちまう……」

「……くそぉ……あんなばっちいのを流しやがって……いや『くそ』とかも言っちゃダメか……」

建設現場の男たちも大ファンであるクロンを悲しませたり、大好物であるカリーをしばらく断つのは苦痛ではあるが、どうしても刻み込まれたダメージからはすぐに回復できそうになかった。

「うぅ~、ブロぉ~、くやしいですぅ~パリピの所為でぇ~」

「かっかっかっか、しゃーねーさ」

半泣きのクロンがブロに泣きつくも、ブロも苦笑しながら頭を撫でて宥めた。

すると……

「ま、こうなったらいっそ、明日から数日の間は期間限定でカリー以外のサイドメニュー的なものだったり、違うジャンルの弁当を配ったりしたらどうだ?」

「サイドメニューや違うお弁当……ですか?」

「おう、食材はあるんだからよ。将来、愛しのあいつと結婚したとして、お前さんは毎日毎食あいつにカリーを食わせんのか? 他の料理も身に着けるいいチャンスじゃねえか?」

「ッ!? そ、それは、確かにその通りなのです!」

ブロの何気ない言葉だったのだが、半泣きだったクロンは雷に打たれたかのような衝撃を受けた。

「確かに、私はアースと結婚してカリー屋さんをやることばかりを考えていました! でも、結婚生活のことを考えると、カリー以外の料理も当然必要になります! それに、私もアースに手料理を食べてもらいたいです! サディスのように!」

「お、おお……カッカッカ、その意気だぜ」

きっかけはノジャのアレではあるのだが、これを一つの機会にすればいいというブロの意見に心から納得してしまった。

「じゃーよ、スパイス使わないで……たとえば、サンドウィッチとか……あ、米もあるんだし、ジャポーネのライスボールとかどうだ? 女神の手作りライスボールとか、これはこれでウケるんじゃねえか?」

「らいすぼーる……ですか? 手で握るアレですか? ふ~む……こう、ニギニギというのをするのですよね?」

「「「「ッッ!!??」」」」

手でライスを握るのをイメージしながら、クロンは動作を見せる。

一方で男たちはクロンのその姿を見て……

「「「「(え!? クロンちゃんが素手で握ったライスボールとか……え? なにそれ? 超食いたい……)」」」」

希望者にはカリーを出すが、それ以外にもということで、しばらくは女神のカリーの売り上げは落ち、代わりにクロンが丹精込めてその手で握ったライスボール、『女神のおにぎり』……これが超絶に売れることになるのだった。

そんな中、もっともカリー作りに執念を見せていたヤミディレは……

「ノジャ……安らかに眠れ……貴様には思うところあったが、今は冥福を祈ろう」

と、空を見上げながらお悔やみの言葉を呟いていた。

「いやいや、師範、あの六覇の狐、死んでねーんだろ?」

「いや……死んだ……あやつは、今頃死んでいる……」

「……まぁ……コレ、本人も見てるならそうかもしれねーけど……」

「ノジャは死んだ……死んだのだ」

そして、ヤミディレがそう断言した通り……

「え、え~っと……でも、健康的でいいんじゃないかな? ほら、お母さんはこの間便秘とか――――」

「アミクス、しっ! 今はそっと……って、お母さんのことをサラッと言ってんじゃないわよ!」

アミクスが無理やり明るく声を上げるが、それでも大人たちは目を瞑り、そしてノジャにかける言葉がなかった。

「みーんな、みんな、しねばいいのじゃ~……ひとはみなきたないのじゃ~……でも、いちばんきたないのはわらわなのじゃ~……あ、おはなきれい……わらわとちがってきれいなのじゃ~」

それは死んだ……目に生気なく、完全に心が壊れてフラフラしているノジャ。

「ノジャ……」

「あ~……むこどの~……こうびしたいのじゃ~……あ、むりか……わらわのような、くちゃいきちゃにゃいたえられない……そんなくそおんなじゃだくきにもならんのじゃ~……あは……くそおんな……わらわにぴったりなのじゃ~……ぐすん」

「あ、あわ、の、ノジャぁ……」

それは当然、ワザとではないとはいえ原因の一端であるアースもまた、心を抉られる光景だった。

「……いや、ほんと……私もゴメン」

そして、同じく原因の一端であるエスピも謝罪するしかなかった。

ただ、アースが原因の一端だったとはいえ、それでも全ての元凶は当然別に存在する。

「ひーはっはっはっはっは、ひははははははは!」

泣く程パリピは笑っていた。

「……同じ女の子として、もし私があんなの世界に流されたら、死にます……だけどその前に……あなた様に地獄以上の苦しみを与えてから……だから大丈夫ですか?」

コマンはそんなパリピを少し心配していた。

ここまでやってしまえば、ノジャ本人が怒り狂って復讐心を抱いてパリピを……と。

「何を言う! 笑いのために命を賭けなくてどうするんだい! パナイ真剣にやらないと!」

「……私、ノジャが攻めてきたら守らず逃げますから……」

だが、パリピは言われたことに対して、キリッとした顔を見せ、もうコマンも呆れたようにため息を吐いてそれ以上そのことについては言わなかった。

「いずれにせよ、これで第3部は終了ですね?」

「ひはははは、まーね。まさにパナイぐらいキリがいいでしょ、フン切れ含めて~」

「汚いです。槍を肛門から突き刺して口まで貫いて抉りますよ?」

「まあまあ……これで、今日は皆さん、パナイ興奮して眠れないとかじゃなくて、グッスリ眠れるでしょ~?」

「?」

そう、これにて第三部は終了。

丁度空でもそのことを世界に告げた。

確かにキリが良かった。

だが、一応パリピの思惑はそれだけではなかった。

「今日の第三部……昨日の第二部のエスピのくだりから、誰もが気になって気になって仕方ない……そうなってしまい、実は寝不足気味のやつらも居たわけよ。でも、今日はキリよく終えたし、こーんな終わり方だったし、みんなももう今日は感想会とかもせずに、とりあえず今日は静かにグッスリ寝るでしょ? きっと明日は皆、健康的に元気ハツラツでしょ!」

「……え? 何をおっしゃって? あなた様が人の睡眠や健康に言及するなど……」

皆に今日は夜更かしさせずに眠らせるため……と、あまりにも似合わない言葉を口にするパリピに怪訝な顔をするコマン。

だが、パリピはニヤリと口元に笑みを浮かべて……

「だって……二日続けて徹夜になって、寝不足で第四部は皆寝ちゃいました……なんてことは許さないからね。これこそみんな、お目目パッチリパナイ開いてもらわないといけないんだからね! ひははははははは!」

パリピがノジャの羞恥を晒したことに深い意味はない。

ただの嫌がらせと悪ふざけ。

しかし、それでも一応この構成での思惑はあった。

「第四部、これに関しては誰も寝ることは許さないからな……魔界も含めて全人類にパナイぐらいに刻まないとな!」

そう、第四部……それはまさに教科書の中身が変わる……史実として語られてきた歴史がまさに引っ繰り返る真実を、全人類が知ることになるのであった。