軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百五十話 世界が知る

――優勝し、欲しかったものを手にした少年は、全てを思い出した大切な人と改めて向き合い……そして決別をする……そう、少年はもう故郷へは……帝国へは……帝国にはぁ~、帰らないのであ~~るぅ!

色々とノリノリのナレーションとうまい具合の編集で、帝国とカクレテールでの対比を映し出した光景は、場面変わって浜辺に映る。

そこには、二人きり。

浜辺で向き合うアースとサディス。

二人は見つめ合い、そしてサディスもアースも涙ぐんでいる。

『可愛い子には旅をさせよではありませんが……納得したわけではありませんが……私はもう何があろうと、坊ちゃまの味方です。正しい、正しくないはもう知りません。坊ちゃまのお望みのまま……どうか存分に……』

『サディス』

『坊ちゃまを勇者の息子としてしか導こうとせず……何がアース・ラガンにとって一番正しかったのかを見極めることができなかった私にはもう……何もできませんし……資格もありません……ですが……せめて坊ちゃまを見送り……祈ることをお許しください』

それは、決別のシーン。

「……こ、こんなシーンまで……」

『……しかもこれは……童がメイドに余のことを明かした場面……なるほど……つまりもう、パリピに余のことは完全にバレていると……』

「……いずれにせよ……パリピがうまい具合に編集してくれて良かった……」

『まぁ、奴も色々と考えあってのこと……いや、考えてはいないか……企んでいるだけか……』

アースが空を見上げながら、現在エルフの集落でエスピとスレイヤとアミクスとシノブを筆頭に、皆が涙潤ませている場面は、アースがトレイナの存在をサディスに明かしたシーンでもあり、その決定的な場面だけはうまい具合にカットされていたので、アースもホッとした様子。

そのためか、最初は「パリピの野郎、ぶっ殺す!」とか「もうやだ恥ずかしい……」となっていたアースもだんだんと落ち着いてきた様子だった。

『そして、坊ちゃま。最後に……私からの我儘を一つだけ言ってもよろしいでしょうか?』

『ん?』

『最後に……ハグをさせてもらえませんか? いってらっしゃいの意味も込めて』

『それなら、喜んで』

――少年は……幼いころから想いを寄せていた初恋の人とハグをする……そして、女にとっても少年は世界で最も愛おしい存在であり……互いに最愛同士……しかし、それでも……

『サディス。今まで……ありがとう……そして……見送ってくれて……ありがとう』

『坊ちゃま。旦那様に、『どうだ!』と言えるぐらい……世界に轟くほどの方になるのを待っていますが……つらくなったらいつでも……』

『だか、ら……甘やか……うぅ……なよ』

『大好きです。この世界中の誰よりも。これから先、何かあろうとずっとあなたのことを想っています。いつでも私を呼んでください。世界の果てでも駆けつけますから』

――少年は……世界へ出ることを決意……女もそれを受け入れ……そして、その成長と無事を誰よりも祈りながら、少年を見送るのであった……

と、そこで場面が暗転する。

まるで「めでたしめでたし」と締めているように。

「うばぁああああ~、サディスちゃん~~、大人になったねぇえ!」

「なるほど、あれがお兄さんの初恋か……」

「どうしてぇ? アース様もサディスさんもお互い好き同士なのに、うぅ~、どうしてさよならするのぉ?」

「愛するからこそ追いかける私と違い、サディスさんは愛するからこそ見送る……賛同はできないけども、サディスさんのハニーへの愛は伝わるわ……同時に、ハニーもやはりサディスさんは特別だというのが……悔しいわね」

そして、そこで一息ついたかのように皆が各々声を上げた。

特に幼いころからのサディスを知っているエスピはそれなりに思い入れがあるのか涙を流し、アミクスも二人の結末に涙し、シノブも複雑な心境であった。

「あ~~、とりあえず終わった! 終わったんだよな! くっそ、パリピの野郎ぅう!」

「お兄ちゃん、今は余韻に浸ってるから、しっ!」

「浸るなぁ! 俺からすればこんなの羞恥以外の何ものでも……つーか、世界中に変な形で俺のこと知られたし……」

「っていうか、お兄ちゃんは嬉しくないの? これで世界中の人がお兄ちゃんのこと『すごい』って認めたと思うよ?」

「はぁ? 嫌に決まってんだろ! ああいう大会中に賞賛されるとかは嬉しいけど、こんなパリピの編集交えて俺の武勇伝ひけらかされるもんなんて、恥ずかしいにもほどがあんだろうが!」

「え~、私はいいと思う! 今まで誰も分かっていなかった、お兄ちゃんがど~~~れだけすごいのかをようやく世界中の、特に帝国の人たちも分かって、ざまーみろって思ったけど……」

色々と精神がボロボロになって、途中から落ち着いたアースだが、それでもやはり恥ずかしいことには変わりない。

皆が色々と感想を言い合っていることすらも、全部自分のことなので更に恥ずかしかった。

「しっかし、お兄さんが暑苦しいのは知ってたけど……いや、ほんと一つの作品見せてもらった気分なんで」

「私もけっこー感動しちゃったし、大会の途中から普通に応援しちゃってた」

族長や奥さん……

「どうやら幕間のようなのじゃ」

「そのようですね。これ以上何があるか分かりませんが、小生も受け止めきれません」

「よし、今のうちにちょっと茂みでオナッてくるのじゃ! 色々と婿殿のオカズもゲットでき……って、今この場に婿本人がおるのじゃし、婿ぉ、わらわとセック――――」

「大将軍、空気読みましょう! 余韻に浸る皆の気持ちを……それと、子供たちの教育に悪いです」

ラルやノジャ……

「んふふふ~、シノブの見る目は正しかったようやぇ……それにしても……彼が故郷にもはや帰る気がないということを知れたのは何よりの収穫……これなら、ウチの家に婿入りしてもええゆうことや~ん」

「カゲロウ、お前も空気を……と言いたいところでござるが……正直……拙者もシノブの婿としてもはや彼のことが欲しいでござる」

「父上、母上……それは俺も相違ない」

シノブの家族である、カゲロウ、オウテイ、フウマ……

「いや~、しっかし、アースくんも熱いのぅ、そしてとんでもないことになってしまったのう」

「まったくじゃない。てか、あの闇の賢人……随分と帝国やヒイロの評判も下げて……何を考えて……いやぁ……そもそも『何を考えているか』と考えること自体が無意味じゃない」

「確かにのう……あやつが考えていることなど一つだけ」

「……『面白そうだから』……じゃない? 奴が昔から考えているのは」

ミカドとコジロー……

各々がアースのカクレテールでの出来事を見終えた感想を話し合っていた。

だが、どんな感想をバラバラに言い合っていても、それでも誰もが、それこそ世界中の者たちが共通に抱いた思いは……

アース・ラガンはすごい。

という賞賛で埋め尽くされていた。

そして……

――え~、世界中の皆さま、ご視聴パナイありがとうございます。いかがでしたでしょうか? 新時代の英雄の真実……五部作の『第一部』、すなわち序章は?

そこでナレーション……パリピの声だけが世界に響いた。

――今日は皆さんも突然のことでパナイ驚いたでしょうし、もう夜も遅いので疲れたでしょう。良い子だってもう寝る時間です。このまま半分寝ている状態で続きを見せても勿体ない! ということで、続きは明日の同じ時間にまた配信したいと思いますぅ!

そして、また再び世界は同時に同じことを思った。

「ええええ、まだ続きがあるの?!」

「なんと……っていうことは、やはりボクたちとの出会いとかも!」

「ご、五部作!? すごい……アース様の……それこそラガーンマンの大冒険をあと四つも!?」

「……どうしよう……ハニー……私はハニーを振り向かせる努力をすると決意したのに、これ以上好きになったらハニーを無理やり襲ってしまいそうで自分が怖いわ」

「おお~、パリピも良い仕事をするではないか! では、明日に向けてスッキリとヌイて、グッスリ眠って備えるのじゃ~! あと、忍びの娘ぇ、わらわも混ぜてくれるのであれば、婿を襲うの手伝ってやらんでもないのじゃ!」

「ちょっ、大将軍! にしても、あと四部あると……まさか過去でのアレも? ……ん? 大将軍……ノリノリで楽しそうですが……大将軍とアース・ラガンの戦いの『アレ』とかも……」

「お兄さん……あ~、ドンマイ」

「あら、真っ白になってる……」

「は~、これはこれは楽しみや~ん。ほんで、シノブ。ノジャの力を借りてもええから、はようアースくんと契って子種もらって孕むんや」

「というより、彼は一体どんな濃厚な武勇伝が他にも……恐ろしいでござるな」

「ふぉっ……だ、大丈夫なのかのう?」

「これはもう、全て見終わった後に、世界がどうなっているか不安と楽しみでいっぱいじゃな~い」

五部作の第一部? 序章ってなに!?

と。

「あと……よんぶ……あるの?」

『……つまり、天空世界、過去、そして最近のやつとかも……あやつは全て公開する気と……なんということだ』

「ちょっ……それって、天空世界ならまだしも……過去のはまずいんじゃ……」

『しかし、どうしようもあるまい。もはやブツはパリピの手にあり、こちらからパリピと連絡する手段もなければ、居場所も分からぬのだから……』

アースは真っ白になって固まった。

誰もがパリピ主導の上映会に大歓声を上がる。

そして翌日は、パリピの宣言に従い……

「おっし、今日の現場はこれまでだ! 全員、さっさと体洗ってメシ食って備えろぉ」!

「「「「「おうっ!!」」」」」

世界中の者たちが仕事を早めに切り上げたり……

「お母さん、ゴハン早くぅ」

「分かってるわよ。今日はゴハン早く食べて準備万端で見るんだからねぇ」

夕食を早めにしたり……

「おっし、今日は俺んちの庭にみんなで集まろうぜ!」

「うん、私も行く!」

「もちろんだよ! なんてったって……」

「アース・ラガンの物語、一人で見るよりみんなで見て盛り上がろうぜ!」

「僕も行くー!」

友達や家族で集まったり……

「っしゃ! 酒もツマミも準備完了だ!」

「さ~、早く始まれぇ~始まれ~」

「うお、飲み屋が今日はどこもいっぱいじゃねえか……仕方ねえ、酒とお菓子だけ買って公園に集まろうぜ!」

「おう、俺ひとっ走り行って場所確保してくるぜ!」

飲み屋や公園などに集まったり……

「俺、今日は走ってくる!」

「僕もだ!」

「家まで走って帰ろうぜ!」

挙句の果てにはアースに感化されて急に走り出す者たちまで……

皆が『アース・ラガンの物語の続き』に備えた。

それは、アース本人が予想している以上に熱を帯びて世界中に伝播していた。

そして、今日もまた世界が知ることになる。

英雄の息子でありながら期待に応えられなかった男が、誰でもない自分自身の力で、努力で、己が何者かを示した。

屈しない。努力を怠らない。強い。そして……

『ういっく、あちゅいから……脱ぐよ~服は脱ぎます。折りたたみます。万歳なのら!』

酒に酔うと脱いでしまい……

『ねぇ~、サディス~』

『坊ちゃま! 気をしっかり、あ~、もう、誰かお水を! あと、坊ちゃま、全裸はシャレになりません!』

『いいのら~、俺、サディスにお願いがあるの!』

『え? お、お願い……ですか?』

『そうだよ~、なんでとぼけちゃうの? サディス~、約束~』

『や、約束……ですか?』

そして……

『優勝したら、おっぱい!』

『う゛ぇえ?』

アース・ラガンはオッパイが好き。

『ぼ、ぼっちゃま……あの……え~っと……いや、確かに約束ではありましたが……』

『だって……だって……俺……男の子だからしょうがないじゃん!!』

『『『『ダメだこいつは、早くどうにかしないと、せっかく誕生した新たなヒーローが!』』』』

アース優勝の祝賀会。

前日の感動や熱さが全てふっとんでしまうような衝撃で、カクレテールの住民たちが入れたツッコミと同じことを世界中の者たちが思った。

酒飲んで全裸でオッパイをねだるアースの姿に。

そして本人は……

「ふぎゃああああああああああああああ、やめろぉおおおおおお、うわあぐあああああああ、もうどこにも行けないぃぃい、ふがぁぁあああああ、馬鹿じゃねえの馬鹿じゃねえの馬鹿じゃねえのバーカバーカ! ……死にたい……」

前日以上の精神的ダメージを負ったアースがエルフの集落を頭抱えてのたうち回ったり、色んな所に頭を打ち付けて自傷行為をしていたのだった。

それに対する、アースを知る者たち、慕う者たち、両親、そしてアースに恋する乙女たちの反応は――――