軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百二十二話 夜の来訪者

「あの地を取り返してくれるとはね……しかも一人の犠牲者も出さず……やっぱ、すごいね。お兄さんたちは」

「へへへ、なんてったって、俺はラガーンマンだからな」

「でも、結局ボスのハクキとのバトルはなかったのは残念。せっかく私とお兄ちゃんの最強コンビでぶっとばしてやろうと思ったのにぃ」

「うん。ボクとお兄さんのスペシャルコンビネーションを見せたかったよ」

宴の席で一通り食って盛り上がって、周囲の状況を見計らって俺とエスピとスレイヤと族長は、少し離れた場所でチビチビやりながら話をしていた。

「そうだったんだ……でも、それが居たら居たでどうなっていたか分からないでしょ? 実際あのハクキってメチャクチャ強いんでしょ? あれから十数年経っているし……」

「確かに、今はどれだけ強くなっているか見当もつかねえな。それに、えげつないアイテムやらもまだ持っているみたいだしな……」

「ああ……そうみたいだね。古代人の遺産ね……」

土地は取り返し、ベンおじさんだけは助けられなかったが、それでも死者も出さずに何とか乗り切ることができた。

とりあえず、今はこの勝利を噛みしめながら、それはそれとして今後のことについても少し俺たちは話した。

「なぁ、族長。他にあの遺跡で何かヤバイものとかってあるのか? 一応マスターキーは俺が持ってるけど……。ハクキもこれ以上はジャポーネに関わる気はなさそうだったけど、何か国王にオモチャを持たせた的なことを言ってたし……」

「え? お兄さん、そーなの? オモチャ……オモチャねぇ……」

ハクキの仲間であるオーガたちや、鬼天烈何たらって連中も、正直なところ弱くはないんだが、油断さえしなければ負ける気はしなかった。

だからこそ、むしろ今後脅威になるのは、オーガの軍勢というよりも、むしろ……

「まぁ……大陸や世界を転覆するようなものは流石に……そういうのは大魔王トレイナがシソノータミを滅亡させたときに無くなっただろうし……そもそも、俺が居た時代は創世記の時代だし……ただ、あの遺跡は色々と奥深いから……重機とかロボ……いや、鉄のゴーレムとか色々とあるだろうけど……でも、そういうのは『使い方』を知らないとどうしようもないから、そこまで心配いらないと思うよ?」

特に心配いらない。族長はそう言った。

だけど、俺はそれに素直に頷けなかった。

その理由は……

「もし、ハクキが使い方が分かっちゃったらまずいか?」

「まずいんじゃないかな。地上も魔界も含めて星全体の文明レベルも変わっちゃうし。まあでも、ガチの古代人とかそういう知識がある奴が傍にいないと無理だよ。そういう意味では俺が操られちゃったら非常にまずいから、お兄さんたちも何かあったらまた助けてね」

もし、本当にハクキの傍に誰かがいるのだとしたら、それは屈強なオーガの軍団と戦うよりもはるかに厳しい戦いになることは間違いなさそうで、ちょっとだけ気分が憂鬱になった。

「う~ん……だってさ、お兄ちゃん」

「そういうことになると……ハクキとの戦いはなかなかキツイものになりそうだね……」

そして、エスピとスレイヤも俺と同じ気持ちのようで、二人とも苦笑いを浮かべていた。

「は? なんで?」

その意味が分からない族長は首を傾げている。

そりゃそうだろうな……でも……

「たしかに、なかなかキツイものになりそうだけど、心配いらねえよ」

そんな甘いものじゃないのは分かっている。だけど、俺はあえて笑って見せた。

「ハクキの傍に誰が居ようと……俺と師匠の方が強いに決まっている。そして、ハクキがどんな力を振るおうと……エスピとスレイヤの方がツエーに決まってる! だから、俺ら『四人』で何も問題ねぇ!」

「お兄ちゃん!」

「お兄さん!」

「ん? 四人……? 俺のことじゃないよね? 師匠? なにそれ?」

族長が少し顔を青ざめさせたけど、安心しろ。族長のことじゃない。

そして俺の言葉の意味をちゃんと理解したエスピとスレイヤは、ガキの頃のように屈託なく笑って頷いた。

「とにかく、明日からまた色々とやること山済みだ」

「そだね。捕まっていた帝国の調査団と魔界の調査団……まぁ、これはどうでもいいとして、問題はジャポーネの徴税で攫われた女の子たちだよね」

「ああ。助けたはいいけど……そのままジャポーネの王都に帰してやってもな……もう、オーガの税務部隊みたいなのは壊滅しちまったけど」

「ジャポーネの王都軍たちがどう出るか……そもそもジャポーネが明日以降どう動くか……ミカドやコジロー、そしてオウテイさんたちとしっかり話し合わないとね」

正直、ジャポーネ国内の内乱的なものにまで俺も深く首を突っ込むことは避けたいところ。

とはいえ、だからって完全にフルシカトっていうのもなんだし、何よりもシノブも関わっているし……

「ん?」

その時だった。

「……誰かな?」

「アミクスたちじゃないね……それに……何だか……」

「なんか禍々しいけど……あの、マジで誰ですか?」

妙な気配を感じて俺たちは立ち上がった。

一瞬、聞き耳立ててる胸のデカい猫でも隠れているのかとも思ったが、そんな感じじゃない……これは……

「笛?」

「なに? 笛の……魔力が籠ってるね」

「ふっ、小賢しいことを……気に入らないね、誰だい?」

「あ、なんか危なそうだ!」

突如、笛の音色が響いた。

そして……

「あ、ごめんなさい。驚かせるつもりなかったの……ただ、用事を済ませに来ただけで……」

「ッッ!?」

「でも、流石だな……私の笛の音色なんかで全然動じない……こんな人たちに襲われたら簡単に殺されちゃうのに、あの方は本当にひどいなぁ……帰ったら再生しかけた眼球をもう一回潰して差し上げようかなぁ?」

その時、闇夜の森の中からそいつは現れた。

思わず耳を塞いでしまう、ゾッとするような笛の音色と共に……

「お前は……」

「こんばんは、アースくん。約束通り、魔水晶を返してもらいに来たよ」

あいつが……俺のかつてのクラスメートであり、パリピのスパイとして帝国に潜入していた……

「……コマン……」

正直、どう反応していいか微妙な奴が現れやがった。