軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百九話 ミカドの剣

七勇者という歴史に名を残す人類の英雄たち。

その七勇者が誕生する遥か以前から人類の守護者として魔王軍と戦い、数々の伝説を作り上げた存在。

「……御老公様よ~、なんてメンドクセーことされてやがるんだよ」

初めてこの爺さんと出会ったときは、好々爺って印象だった。

しかし正気を失い、ただの戦う人形のようになった今の状態はどうだ?

『魔族と違い……人間には……だったな、族長の話では』

「ああ……」

色々と弄られて正気を失っている。ノジャのように。

だが、同じように弄られていても、意味合いが大きく変わってしまう。

「……コラシメル……」

人間だと、むしろ強くなるとかなんとか……実際、ベンおじさんのこともコジローはそう感じていたみたいだし。

『童……神経を張り巡らせよ……そして出し惜しみは無用』

「ッ……」

『奴の単純な『武』は……これまで貴様が実戦で戦った者たちとは質が違う。そして、これも何かの縁……せっかくだ……体感せよ。六覇とは違う人類の境地の一つをな』

正気を失って、ただ歩いてくるだけ。それだけなのに汗が噴き出る。

『まず、奴の手刀には気をつけよ……それが奴の得意体術攻撃……』

『手刀?』

『奴は術も使うオールマイティな存在でもあるが……まずは手刀だ』

色々とアドバイスくれるトレイナだが、まずはやってみないことには始まらない。

ただ、始まる前からトレイナの忠告無くても、目の前のジーさんの底知れなさが、肌で感じ取れる。

だからこそ……

「ブレイクスルーッ!!」

まさに的確な助言だった。出し惜しみは無用。

「お兄ちゃんッ!?」

「ハニーッ!?」

もともと数百人のオーガたちに囲まれ、ベンおじさんまでいて、さらなる伝説まで出てきたんだ。

ゴチャゴチャ小細工でどうにかなる状況じゃねえ。

「ここで後手に回ったら、逆に飲み込まれる! 今、暴れるしかねーんだよっ!!」

「お兄さん……ッ、そうだね……」

「いくぞっ!!」

みんなに、そして自分に言い聞かせるように俺は吠える。

「だね、お兄ちゃん!」

「わかったわ、ハニー!」

そして、俺の叫びを受けて、エスピやシノブたちも同時に頷いて動く。

「テキハ……」

「コラシメル」

対して敵も動く。ミカドのジーさんの両脇にいる、ケースって男とアシストって男が同時にまずは走り出した。

「させぬっ! 闇魔法・メガダークネスサイクロンッ!!」

「多重分身の術ッ!!」

だが、それを迎撃するかのようにラルウァイフが黒い竜巻でケースを包み込み、さらにシノブは大量の分身を場に出現させてオーガたちを迎撃させようとする一方で本体である自分自身はアシストへ。

「こちらも簡単に王手はさせぬぞ、正気を失った英雄どもめ!」

「アシスト先輩……正気を失っているのは残念だけれど、今の私の成長した姿をぶつけさせてもらうわ!」

そう言って、シノブとラルウァイフは各々の敵を選んで身構える。

だが、二人までそう動いたら、パワーアップしたオーガたちは……

「おいおい、テメエら、相手はそっちだけだと思うなよなぁ?」

「おう! 俺たちを放っておいていいのかい?」

「けっ、何が分身だ! 分身体は本体の十分の一程度……今の俺らの敵じゃねえッ!」

「囲んで半殺しに――――」

いや、大丈夫だ。

「……こんこん♪」

「「「「「あっ……」」」」」

ある意味で一番ヤバイのがまだ余ってたから大丈夫だと思うことにしよう。

オーガたちもそのことに気づいて顔を青ざめさせているから。

だから、問題は俺の方。

こっちに集中だ。

「よし、こっちもいくぜ! ミカドのジーさん!」

ブレイクスルーで俺は中距離から拳を振るう。

音速の衝撃波を連射する。

「大魔ソニックフリッカーッ!!」

まずは左で牽制。だが、当たればダメージも十分与えられるし、態勢も崩せる自慢の左。

うなる鞭のような衝撃波を、伝説の御老公様はどうやって……

「コラシメテアゲヨウ」

「ッ!?」

避けない? 次の瞬間、ゆっくり歩いて近づいてきていたミカドのジーさんは中腰になってダッシュ。

速い。ジジイとは思えない。

だが、まっすぐ突っ込んでくる。

このままじゃ俺のフリッカーを正面から……

「無刀」

「なにッ!?」

俺の音速の左の衝撃波を、手刀一本を振り回して相殺した!?

しかも、連射した衝撃波をすべて。

「無刀――」

そして、そのまま俺の懐に……なら、呼び込んでスマッシュで迎撃――――

『ダメだ! 横に大きく飛び退け!!』

「ッ!?」

俺が身構えて迎え撃とうとした瞬間、トレイナの指示通り、俺は咄嗟に横に飛び込んだ。

「五段突き」

それは、恐ろしく高密度なエネルギーを纏った右の手刀突き。

一瞬で五種の突き。

「なっ……」

それは空振りに終わった。だが、俺は思わず寒気がした。

もし、今のをまともに食らってしまったら?

俺の眉間、喉、両肩、心臓をすべて同時に貫かれていた……

「こ、の……怪物ジジイがッ! 大魔ジャブッ!!」

だが、必殺技の空振り直後は最大の隙でもある。

俺は飛び退いた状態から即座に態勢を立て直し、最短最速の左をミカドのジーさんの顎にめがけて放つ。

が……

「無刀壁」

「ッッ!!?? いがっ、つ……」

次の瞬間、俺の左手首が痺れるほどの激痛。拳が伸び切る前に側面から弾かれた。

こいつ、空振り直後だっていうのに、すぐに反応しやがった。

だが、これで終わりじゃねえ。

「なら、右だ! 大魔ソニッ―――」

「無刀壁」

「うがっ!?」

追撃のために放とうとした右手首を再び手刀で側面から弾かれた。

俺のパンチを完全に見切られ、しかも側面から難なく弾くなんて……

『童、すぐに立て直せ!』

「五段―――」

って、ちょっと待て! 俺の攻撃を弾いた直後に、またさっきの技を―――

「造鉄魔法・羅生門!!」

ヤバイ……そう思った次の瞬間、俺の目の前に鉄の壁が障壁となって現れ、ミカドのジーさんの手刀を防……いだと思ったら、簡単に壁に亀裂が?!

「ふわふわエスケープ!」

だが、一瞬でも壁が盾になってくれたおかげで、俺はエスピの能力で後方まで引っ張られて、何とか手刀を食らわずに済んだ。

「お兄ちゃん、大丈夫?」

「あ、ああ……」

「ふぅ……恐ろしく強い手刀だね……僕の羅生門を容易く貫くとはね……」

二人が咄嗟にサポートしてくれたおかげで何とか無傷ですんだ。

だが……

『気を抜くな!』

「ッ!?」

距離をいったん離したというのに、ミカドのジーさんが一呼吸置く間もなく再びこっちへ向かってくる。

「にゃろ、ふわふわ―――」

対して、エスピが能力でミカドのジーさんを捉えようとする。

が、次の瞬間、ミカドのジーさんは鋭いステップで横にカットし、俺らの背後に回り込みやがった。

「げっ、速い! 捉え切れな……スレイヤ君ッ!」

「まったく! 造鉄魔法・天魔雷光牙突ッ!!」

エスピの能力が間に合わないと判断するや否や、鉄の槍を手に持ったスレイヤが振り向きざまに高速の突きを繰り出す。

だが、

「無刀壁」

俺の拳の時と同様に、ミカドのジーさんは手刀でスレイヤの槍を側面で叩いて鉄ごと『切り裂いた』。

だが、スレイヤは慌てることなく、むしろほくそ笑み……

「両手はこれでふさがったね。地より貫け……造鉄魔法・百鉄華繚乱ッ!!」

スレイヤが足で地面を叩いた次の瞬間、ミカドのジーさんの足元から刀や槍や斧などの武器が地中から一斉に飛び出して襲い掛かる。

『ほう……地中で鉄を精製したか……器用なことをするな』

完全に虚を突いたスレイヤの強襲。これは当たる?

「無刀塊」

「ッ!?」

スレイヤが繰り出した地中から無数の刃攻撃はミカドのジーさんに直撃。

だが、避けられないと悟るや否や、全身の血管が浮き出るほどにミカドのジーさんは全身に力を込めた。

すると、放たれた刃たちがミカドのジーさんを貫けず、むしろ弾かれた。

「自身の全身を鉄の刃と化し……へぇ……流石だね……」

「無刀流……」

「むっ!?」

全身を鉄のように化し……そして直後にミカドのジーさんは両手を前にかざす。

両手で作った手の形が、まるで獣の咢のようになり……

「虎咬弾!」

「くわっ!?」

突きだした衝撃波が、虎を模ってスレイヤに襲い掛かる。

その衝撃に耐え切れず、スレイヤが後方へふっとばされちまった。

「スレイヤッ!? っ、このジジイ!」

「下がってお兄ちゃんッ! 私がぶっとばし返すっ!」

「エスピッ!?」

「ふわふわ世界ッ!!」

だが、こっちも戸惑ってないで反撃とばかりに、今度はエスピが森の木々や巨大な岩などをかき集め、ミカドのジーさんへ一斉に投下。

なら、俺もだ。

「大魔ソニックフリッカーッ!!」

今度は俺のフリッカーだけじゃなく、エスピの攻撃も合わさって四方八方から隙間ない攻撃だ。

手刀じゃ防ぎきれねえはず。

なら、もう一度体を固めるか?

だが……

「極大無刀」

「「ッッ!!??」」

右手刀を上に掲げるミカドのジーさん。すると、その手刀にまるで俺の大魔螺旋のような巨大なエネルギーが集まっていく。

目に見えるほどの輝きを放つソレは、やがて極大な剣の形になり……

「天地終焉斬」

その極大の剣を振り回すだけで、エスピが投下した物や俺の衝撃波を粉々に砕いて、そして消滅させちまった。

「わぉ……十年以上ぶりに見た……さっすがだねぇ」

「いたたた……結構効いた……流石は伝説のミカドと言ったところだね……」

雲までも。でも……

「けっ、だからどうした! 六覇に七勇者、冥獄竜王と出会ってきた俺が、今更こんなもんでビビるかよ!」

だからどうしたと、俺は惚けず再び拳を構える。

「だね、お兄ちゃん」

「その通りだとも、お兄さん」

エスピも、そして一度ふっとばされたスレイヤだがそれほどダメージもなさそうで、まだまだ自分たちもこんなものではないと笑っている。

そう、俺たちだって、まだまだこんなもんじゃない!