軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百話 できる最低限のことは最低に

「くっ……兄者め……。しかし、やはりこれはまずいでござる! 今ので国民の感情はさらに抑えられなくなった! これまでは小さな反乱とデモ程度で済んでいたが……もし王国側が本当に強制徴収などを始めたら……」

オウテイさんの言葉は大げさではない。こんなことを国民も黙ってないだろう。

リアルに内戦が始まる。

「旦那、落ち着くじゃない」

「しかし、コジロウ。もう某も逃げ隠れしている状況ではなくなったでござる。単に兄者が某の首を取ろうとしているだけならば、某たちだけの問題であったが、こうなってしまえば……」

「……じゃあ、どうすると?」

「……某が兄者と交渉を……」

「その余地がないからオイラたちは逃げてきたわけじゃない。旦那……もう、今更そんな話し合いに応じるような国王様じゃないってことは、旦那が一番分かっているはずじゃない」

その通り。今までコジローやミカドのジーさんが傍にいても言うこと聞かず、それどころか二人を首にして、実の弟をも殺そうとしている国王に、今更話し合いなどが通るはずがない。

「ま……そんなオウテイさんをおびき寄せる作戦かもしんないしね。コジローの言う通り、ちょっと落ち着こうよ」

「確かに……とはいえ、ボクたちも事が起きるまで手をこまねいて待機しているだけというのもね……あの様子だと、この土地も奴らは平気で踏み荒らしにくる。この土地の手続き関連を色々とやって誤魔化していたのがコジロウだと分かれば猶更ね」

「では、どうする? まさか、小生たちで攻め込む……などと言うのではないだろうな? 王を討ち……そこのオウテイとやらを、王にするか? あまりにも業の深い大罪になるぞ?」

「国王は選挙で決まるわけじゃない……である以上、国民の過半数が今の王を断固反対というなら……そういう……力づくの手段しかないんだろうけど……その前に、俺たちエルフの立ち振る舞いも決めなきゃだけど……逃げるか関わるか」

みんなもどうやら問題が非常に大きく、そしてこれを変える方法として思いつくことが一番ヤバいことしかない様子。

それは、今の国王を討ち取って、オウテイさんを新たな王にするという……

「お兄ちゃんはどう思う?」

「ぇ……俺?」

そこで俺に振られても! というか、さすがに俺にこんなことの答えが出せるはずがない。

「……今の王様をって……それってもう完全に革命的な戦争……そう……戦争だよな。まさかこのメンツで国民率いて今の王族倒せとか言うんじゃねえだろうな?」

改めてそう俺が皆に問うと、さすがにみんなも分かっているように頷く。

「でも、そうしないと……ここもどうなるか分からない……だから悩ましいよね」

「っ、つってもなぁ……」

コジローたちもエスピたちも、そういう時代を生き抜いてきたわけだしな。

でも、俺は正直そんなことをやっていいものなのかと踏み出せない。

これは天空世界に乗り込んだ時のように「みんなで攫われたヤミディレを救出しよう」みたいな単純な理由があるわけでもない。

ただ、王様のやり方に気に食わないから……ってのはなぁ……

『童……ならば……今できることをやるしかないな……』

『え?』

『何かあるのをただ待っているだけではなく……今できる行動……状況を調べに行くことだ』

そのとき、答えを出せない俺に対して傍らのトレイナが耳打ちしてきた。

『だから……―――――』

それは……あっ……そうか……

「エスピ、俺はこの国の王をどうこうってのは正直嫌だな。シノブたちが襲われたりとか、エルフの集落がどうのってのには関わるけど、今の時点ではな……」

「うん。だよね。でも、だから……『そうなる』まで待機するかってことになるよね」

「ああ。でも……待ってるだけじゃアレだし……今は気になることを調べるってのはどうだ?」

「?」

現時点で俺らにも分かっていないことがある。

それは……

「コンコン……くわ~あ……」

ここでノンキに欠伸をしているノジャ。

そう、こいつらに何があったのかをだ。

「シテナイは守秘義務ってことで言わなかったが……ノジャやベンおじさんを襲ったやつらは魔族……しかも現魔界政府とは反対側の奴ら……そいつらがジャポーネと関わってる……」

「ああ、そういえばあのシテナイも……魔界最強がどうとか……魔界最強……ねぇ……」

「それ次第によっては……もう問題は俺らが『内政干渉だから口出せない』なんてことは言えなくなるし……それに……まぁ、気は進まねえけど……その……」

「ああ。ベンリナーフとノジャのこともあるし、帝国や魔界も干渉しやすくなるしね。そうなれば、お兄ちゃんや私も……ね」

回りくどい言い訳づくりになるが、ただ、そうでも考えないと今の時点で「王をぶっ倒して新しい王に」なんてできないからな。

「なるほど。確かに、ベンリナーフがどうなったのか気になるじゃない。それに、この件に……ハクキが絡んでいるのなら、ヒイロや魔界のライファントにも声をかけやすくなるじゃない」

そして、コジローたちも腑に落ちたように頷いた。

だから、

「だから、何かある前に……シソノータミで何があったのか……ベンおじさんや調査団たちはどうなったのか……それを調べに行く。シテナイはあそこにはもう調査団はいないって言ってるけど……手がかりぐらいはあるだろ」

今の俺がこの国の中でできる最低限のこと。

それは、行方不明のおじさんや、帝国と魔族の調査団について調べに行くこと……の……だったんだが……

『ヒハハハハハ、ボスがそーんな地道な捜査なんてメンドクサイことする必要ないって』

「「「「…………え?」」」」

『手がかり探しに行かなくても、オレがすぐに情報網使って、その行方不明の調査団たちがどこにいるのか教えてやるよ~、ボ~ス~♡ 捕まってるなら、そこをボスたちが襲撃しちまえ♪』

あまりにも寒気のする邪悪な声がその場に響き渡った。

それは、俺の懐にしまい込んでいる……魔水晶から。

「え? な、なに? お兄ちゃん、今の……なんだか、聞いただけで腹の底からムカついちゃう声は……」

「ん~? な~んか……ものすご~く……気のせいだと思うけど、ものすごく懐かしく聞き覚えのある嫌~な声……じゃない?」

エスピもコジロウも眉を顰めて……ああ……まずい……

「は、ハニー……い、今の声……ま、まさか……」

そして、事情を知っているシノブだけハッとして、顔を青くしている。

たぶん、俺の顔も青くなっているだろう。

『こ、こやつは……余もこれは考えていなかった……』

そしてトレイナも頭を押さえている。

俺はもうこの状況に耐え切れず、叫んでしまう。

「う、わ、あ……あ……」

『やほー! ボスの忠実な右腕だよ~!』

「ほぎゃあああああああああああああああああああああああっっ!!!???」

またややこしいことになってしまった。