軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百九十七話 朝から全開

「これからどうなるんだろうな……」

「明日の朝の朝刊……もしくはジャポーネの様子次第だろうな。オウテイという存在にジャポーネの現国王がどう動くか……会ったこともない人物では余も何とも言えぬ」

「だよなぁ~」

ヴイアール世界で今日一日の様子を振り返りながらトレイナと今後について話していた。

と言っても、トレイナでも流石に今の時点では何とも言えないようだけど。

「ハクキがこの件に絡み、ノジャとベンリナーフを強襲したのは間違いないだろう。そして、奴が一体何を狙っているのか……例のシテナイという男、更にはジャポーネ王国と繋がっているのか……。いかに国王がバカという話でも、流石に連合加盟国でありながら、今ではお尋ね者のハクキと手を組むことで何かメリットがあるとも思えぬが……」

「でもよ、それでコジローもミカドのジーさんもこんなことになっているわけだしな……」

「そうだな。国王にとっては仲の悪かったという二人を排除できたとも言えるが……余がハクキの立場であれば……ミカドとコジローという両巨頭を失ったジャポーネなど恐れるに足らん。更に現在は多くの戦士が流出しているとのこと。こんな好機は逃さぬ。戦を仕掛けて領土を大幅に削り取り、甚大なダメージ……なんなら滅亡させているだろうな」

魔王軍の大魔王だったものとしての表情でトレイナがそう口にした。

その強い口調にゾクッとさせられる。

「そういう意味では、何でミカドのジーさんはアッサリと国王に捕まったんだ? あのジーさん強いんだろ?」

「それは間違いない。それこそ何十年……もっと大昔……余やハクキ、バサラたち魔界の天敵として幾度も戦った。女勇者カグヤや、その他……モンスターテイマーのピーチボーイ、バトルアックス担いだゴールド、知将と呼ばれしトンチのワンナイン……それらの伝説と並び、同時に人類の誰よりも長く魔界と戦った戦士だ」

「伝説かぁ……」

「ヒイロたちの世代になったときには既に老いて、長時間の戦闘もできなくなったためにほぼ軍略家としての立場となり、最前線には立たなくなったが……やはり、七勇者という世代が現れるまでは、魔族にとって最大の天敵であった」

そう語るトレイナも苦虫を潰したような顔を浮かべている。

それほどまでに凄いジーさんなんだ。

「とはいえ、奴のお人好し度や国家に対する忠誠心もまた強い。いかに愚王とはいえ、国家に対して力ずくで反旗を翻すことは奴の流儀に反したのだろうな……」

「あぁ、だから……抵抗しなかったってことか?」

「そういう男だ。あやつはな」

トレイナはどこか確信しているかのようにそう言った。

そう、たしかに現在のジャポーネの国王のことは分からなくても、トレイナはミカドのジーさんのことはよく知ってる。

それこそ、親父と母さん以上に長年戦い続けた相手なんだからな。

「しっかし、あんたやハクキに、あのバサラもなんて……ゾッとするな。ほんと、バサラいたら人類なんて……」

「たしかにな。まったく、やってくれるというものだ。力にもなるときもあれば……時には世界を滅ぼす要因にもなりかねん……。童も、恋愛には気をつけることだな。あの、忍びの娘も来てしまったことだしな」

「わ、わーってるよ」

トレーニングは軽めに。少しトレイナと雑談したりで体を休めて目を覚ます。

起き上がってまず体の様子を確認するが、特に重さも無いし調子も……

「ガルルルル、グルルル、ウガー!」

「……え?」

そのとき、ベッドの下で鉄の拘束具に縛られて、さらに口には鉄の猿轡を噛まされているノジャが転がっていたのを発見した。

しかも服を着てない。

「な、なんだこれ?」

朝からあまりにも衝撃的なものを見てしまったために、寝ぼけた頭も一気に覚める。

すると……

「そいつはお兄さんのベッドに忍び込んで、襲おうとしたんだよ。でも、安心してくれ。お兄さんの貞操はボクがちゃんと守ったからね」

「え? あ……」

「やぁ、おはよう。お兄さん」

視線を部屋のドアに向けると、既に起きて朝の支度も終えたスレイヤが爽やかにそう言ってきた。

まさか、ヴイアール中にそんなことあったなんて……

「でも、お兄さんも隙だらけだよ。起きている時はあんなに鋭い感知力なのに、寝たらこんな簡単に侵入を許すぐらい鈍いんだからね。気をつけないと」

「お、おお、そうか」

「でも、安心してくれ。これからはボクとエスピが交代でガードするからね!」

そう言って親指突き立てて宣言するスレイヤ。何とも頼もしい。

一方で、これは今後の課題かもな。

ヴイアール中は意識が夢の中だから、現実で何が起こっているのか全然分からないから、寝てるときに何かされたら確かに分からない。

「ウガ! ウガーーー!」

もし、ノジャが洗脳されてなければ流石にスレイヤたちでも簡単に防げないだろうし、確かに気をつけた方がよさそうだ。

「まっ、昨日は……ガードはボク一人……ではなかったけどね」

「え?」

一人じゃなかった? 何のことか分からず首をかしげると、その時部屋の外から足音が聞こえた。

その音は部屋の前で止まり、そして同時にノックが響いた。

「ハニー、起きてる? 入っていいかしら?」

「あっ……お、おお!」

「ふふ、おはよう。ハニー」

入ってきたのはシノブ……え、エプロン着けて……

「ふふふ、泊めてもらった恩もあるし、今朝は私が朝食を作ったの。ハニーも目が覚めたなら来てね」

「あ、お、おお……」

一瞬、新婚みたいな変な妄想が過りそうになってしまった。

家庭的なシノブの姿にちょっとドキッとしてしまった。

「ふふ、実は彼女もね……昨晩は屋根裏に潜んでお兄さんをガードしてたんだよ」

「えっ!?」

「それでいて、朝早くから朝食の準備までして……さっき、彼女の作ったスープを味見したイーテェさんやエスピは絶賛していたよ」

「そ、そうなんだ」

「なかなかイイ娘だと思うよ、お兄さん」

そして、スレイヤはどこか嬉しそうにシノブを褒める。

シノブもまんざらではなかったのかニコリとほほ笑む。

「ふふ、嬉しいわ。ありがとう、スレイヤさん」

「呼び捨てで構わないよ。ボクは確かに年上だけど、お兄さんの弟だし……だからそうなると……もし君が……」

「あら、将来的には……ふふふふ」

「おやおや、気が早いと思うけど、でもそれだけ気持ちをハッキリさせているのもポイント高いじゃないか」

なんか、仲良くなってる? 昨日出会ったばかりなのに。

まぁ、その内容が、何だか俺がこの場で聞いていて良いものなのか悪いものなのか……

「それよりも、ハニー。起きたら言おうと思っていたけど、ハニーは隙だらけ過ぎよ。鈍いわ」

「うっ……」

そんな俺にシノブが途端にキリッとした表情になって一言。

思わず「うっ」となってしまった。

「わ、悪かったよ、ね、寝ている時はどうも……」

「いいえ、寝ている時だけではないわ。戦闘モードではないときのハニーは隙だらけ過ぎなのよ」

「そ、そんなことは……」

「あるわ。ほら、ふん!」

「え?」

そのとき、ベッドまで近づいてきたシノブが俺の目の前でパンと両手を叩く。

急にどうした?

「虫が飛んでいたので始末したわ。気付かなかったでしょ?」

「え? 虫? ウソだぁ!」

虫が居た? そんなの気付かなかった。いや、いなかったはずだ。流石に俺だって目の前を何かが通れば気付くはず。

しかし……

「あら、でも本当よ? ほら、手を見て。だいぶ大きいのよ?」

「え? うそ、ええ?」

本当に居たのか? シノブに言われて俺はシノブの両手を覗き込もうとしたら……

「はい、ウ・ソ……チュッ♡」

「ッッッ!!!???」

まさに朝の第二の覚醒。頬に柔らかい感触が……

「ムアガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!???」

下ではノジャの吼える声。

「ふぅ、やれやれ……」

そして、スレイヤが苦笑しながら溜息吐く声。

「な、あ、なな、あ、し、しのぶ……」

「あら、ほっぺぐらい許して欲しいわね。親しい人への挨拶としての許容範囲でしょ? まぁ、私はハニー以外にしないし、させないけどもね」

「あ、わ、わ、あ」

そう言ってクールに……ではなく、少し頬を赤らめて早口でそう捲し立てるシノブ。

やっておきながら、自分でも照れやがって。俺までもっと照れるだろうが。

顔が近くて息が当たってどうにかなってしまう。

「とにかく、ハニーはこのように隙だらけよ。いい? 私がお母さんから作戦と技を伝授されていたら、私とハニーはとっくに結合済みで、今頃一人ぐらい孕んでいてもおかしくないのだから。これからも気をつけてね」

「は、はい……」

そう言ってポーっとしてしまう俺から離れて出ていこうとするシノブ。

そして最後に……

「私はね……ハニー。ちゃんと君と………………『マクラ』みたいなことは……」

「ん?」

なんだか、一瞬だけつらそうで、消え失せそうな声でボソボソと何か呟くシノブ。

だけど、すぐに顔を上げて振り返り……

「とにかく、早く起きて朝食をいただいてね、ハニー。そして……好きよ。ちゅっ♡」

「ッッ!!??」

最後にまた投げキッスを……いかん……思わず両手で顔を抑えてしまうと、顔がメチャクチャ熱いことに気づく。

「うん……エスピはサディスという娘を推していたけど……うん。いいね」

で、スレイヤはコソコソとなにかメモのようなものを取り始めた。

おまえ、それは何をメモってるんだ?

そして、俺は確かに戦闘モード時以外は隙だらけというか鈍いのかもしれない。

実はこの時のやり取りを、もう一人聞き耳立てていた猫がいたのに気づいていなかったからだ。