軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百八十九話 より大きな問題に

「「「「ボクメイツ!!??」」」」

魔水晶の向こうから名乗られた『シテナイ』という噂の男の本名。

それは、流石の俺でも知っているものだった。

『こやつ……イナイの息子……そんな者が居たとは……余も知らなかった』

トレイナすらも驚くその名前は、かつて人類の裏社会で名を馳せた組織のボスにして、魔王軍の将軍とも所縁のある人物。

「噂のシテナイが……ボクメイツ……」

「これは驚きじゃない。ヒイロとソルジャが壊滅させたボクメイツファミリーのボス……イナイ・ボクメイツの息子……まぁ、お兄さんがヒイロの息子のアースくんだったって方も驚きやら訳が分からないやらで混乱じゃない」

当然、エスピとコジローもその名前に驚き、挙句の果てには……

「「「「えええええええええ!!!?? ぼ、ボクメイツ!? ってか、シテナイ様の本名初めて知った!!!???」」」」

「って、お前らの方もかよ!?」

シテナイによって集められたハンター風の男たちまで驚愕している。

『ははは。面倒になるから俺もフルネームはあまり使わないようにしていたんだ。でも、君には名乗っておきたいと思ってね。ファンとして』

確かに驚くし、予想外だったな。

でも、分からねえ。

「ちょ、ちょっと待てよ。あんた、俺のファンって……恨んでるの間違いじゃねえのか?」

『ん? それはどういうことだい?』

「とぼけんなよ。ボクメイツファミリーをぶっ潰したのは俺の親父だろうが。だったら、親父だけじゃなくて俺にだって思うところがあるはずだろうが。それなのに、何でファンなんだよ」

俺も詳しくは知らないが、それでも親父がボクメイツファミリーを潰したということは知っている。

それなのに、なぜ俺を?

しかし、そんな俺の言葉に魔水晶の向こうのシテナイは機嫌よさそうに笑った。

『ははははは、どうやら俺はよほど器が小さいと思われているようだね。まぁ、自分で大きいと自惚れるほど、俺は大した人間でも男でもないが……それでも心外だね』

「なに?」

『親の因果を何故子にまで? 勘違いしないでくれたまえ。俺は別に恨んではいない。父に対して特に思うところはない。いや、そもそも……君は『勇者の息子』であることを放棄したではないか。その上、公衆の面前で帝国に見切りをつけ、大勇者ヒイロの顔面を殴った』

「ぬっ……むぅ……」

『本来なら誰もが羨むような恵まれた裕福な環境で育ち、未来は幸福が約束されるような立場であったはずが、君は父親に、帝国に反発し、さらにはその戦闘スタイルも勇者ヒイロとは全く違うものを選び、勇者の息子ではなく自分自身を認めさせようとした』

「…………」

『さらに、カクレテールでは誰もが君を勇者の息子だなんて特別扱いしない環境で、君は努力し、六覇ヤミディレの門下生たちを倒して栄光を掴み、誰でもない自分自身を皆に認めさせることが出来た。とてもカッコいいじゃないか。自分より一回りも年下の青年に憧れを抱いてしまったよ』

な、なんだ? こいつ物凄いベタ褒めじゃねえか。

敵……なんだろうけど、ちょっと照れる。

「うんうん……なんだ、お兄ちゃんのことよく分かってるじゃん……でもカクレテールの大会ってのは知らないなぁ……後で教えてもらわないと」

「いや、エスピ嬢。いま、サラリと六覇のヤミディレの名前まで出てきて……どういうことじゃない? ヒイロの息子のアースくんが家出したのは聞いたけど、どうなってるじゃない?」

しかもエスピはシテナイに同意して深く頷いている。

『だからこそ、俺もヒイロ・ラガンは仕事の邪魔という意味で嫌いだが、君にも……そして父の組織と抗戦していたブロ・グレン氏にも特に恨みは無いし、むしろ好きな部類だよ。二人ともかわいいお尻……いや、なんでもない』

なんだか自分の頬が熱くなっていってるのが分かる。

だが、もしこいつが嘘をついていないのだとしたら、この状況は……

『まぁ、それはさておき、俺は今回依頼を受けてジャポーネに弊社所属のハンターたちを派遣させてもらった。目的はコジロウ氏と、ジャポーネ王国のウマシカ国王の実の弟にして、かつて結婚と同時に王宮から離れたオウテイ氏……その妻であり名門忍者の女頭首でもあるカゲロウ氏……この三人の捕縛や始末……だったが、捕縛と始末は無理そうだし、足止めはもう十分できたので、ここは弊社のハンターたちを引かせてもらいたいんだ』

「はぁ? 何都合のいいこと言ってやがる!」

『見逃してくれたら、君たちに一つ情報を提供してもいい……取引としてね』

ここは引き下がるから見逃してくれとでも? 何て都合のいいことを……ん?

「ふざけ……え?! ……国王の……弟!?」

「ッ!?」

「え?」

サラッとシテナイの口からまたもやとんでもない言葉が飛び出した。

「……後で話そうと思っていたでござる……」

「まじで?」

俺たちが振り返ると、オウテイって奴は少し俯いてしまったが、否定をしない。

ヤバい。本当に整理しないと訳が分からなくなってきた……

「ったく、……あ~、つうかただでさえこの状況がゴチャゴチャしてきてるのに、情報? 一体なんだよそれは。大体引き下がるって言っても、もしそこのハンター共がまたこの地に足を踏み入れたりしたら……」

『分かった。弊社はその地には今後携わらないこととする。取引でウソはつかない。それに、今回の依頼はここまでだからね。これ以上はジャポーネの内政にも俺たちは干渉しない。何もしない。それとも殺すかい? 千人のハンターを』

「ぬ……む……まぁ……それなら……」

とにかく、こいつらがこのまま退散し、この地にも今後干渉しないというのであれば、それでもいいのかな?

何となくだけど、こいつはウソをついていないような気がする。別に俺のファンだからとかは関係なく。

無駄に千人ぶっとばすよりは手っ取り早いし、エスピも特に反対もないようで頷いている。

『恩に切る。では情報とは……ノジャ氏と……シソノータミにいた帝国と魔界の調査団について』

「「「ッッ!!??」」」

それはまさに俺たちやコジローたちも一番知りたかったことだ。

どうしてノジャがこうなったのか? そして、調査団はどうしたのか?

それは……

『調査団はとある魔族の襲撃によって壊滅した』

「な……なに?」

『そして、その人物の手によってノジャ氏は洗脳されたみたいだよ。今回俺はその人に依頼を受けた。誰かは契約上教えられないが……いずれにせよ、コジロウ氏たちが帝国に亡命しようとしても、シソノータミには既に帝国の調査団も居ない。そして俺たちが足止めしている間に、大陸の主だった港と船は全てジャポーネ王国が取り押さえている』

「「「「ッッッ!!!???」」」」

『あなたたちは、この大陸から逃げられないよ……まもなく……とある大魔導士の手で大規模な結界を張られるだろうしね……』

それは、俺のためというよりは隣に立っているコジローたちのための情報でもあった。

だが、同時に俺の脳裏に子供のころからよく会っていたフーの親父さん……

「ベンおじさんは!? ベンおじさんは無事なのか!? 誰がそれをやったんだ!?」

『死んではいないよ。無事かは分からないけど。そして、依頼人が誰かは言えない。ただ……ヒントは……現・魔界最強……かな?』

「な、なに!?」

まずい。親父や母さんたちは知ってるのか? つか、何をやってるんだ? ベンおじさんは?

一体何が起こってるんだ?

これは、単にジャポーネ王国内だけの問題じゃなくて、もっと……もっと大きな問題に?

そして、俺が混乱している傍らで、ずっと黙っていたトレイナは……

『現・魔界最強……調査団を壊滅……ノジャだけでなく、七勇者のベンリナーフもまとめて……となると……奴ぐらいしか思いつかんな』

何か確信したような表情でそう呟いていた。