軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百六十九話 謝るけど飼われない

まさか、ノジャが俺のことを知っただと?

「なんでだ?! 俺はあのとき顔を隠してただろ!? いくら同じ技を使ったからって、何で俺がラガーンマンってバレるんだよ!? 普通、俺がアイテム使って過去の時代に行ってたとかそういう発想にならねぇだろ?」

「うん……そうなんだけど……そうなんだけどね……うん、本当にごめん……」

ここに居る者たちと、あとはスレイヤぐらいしか知らないと思っていたことを、まさかノジャまで知った?

何でそんなことになっているんだと、俺は思わず立ち上がった。

――………ッ……

床下の猫も息を殺して聞き耳を立てている。

すると少し顔を反らし気味にエスピは……

「あのね、その……もともとノジャはラガーンマンの正体をヒイロだと思ってたみたいなの……ラガーンマン……ラガンで……」

「お、おぉ……」

「それで、戦争が終わってヒイロがマアムと結婚するってなった時、ノジャが二人の結婚を潰すために動き出そうとしていて……でも、二人が結婚しないとお兄ちゃんが生まれないから、私とスレイヤ君が必死にそれを止めて……」

そんなことがあったなんて知らなかった。

まさかエスピとスレイヤが、親父と母さんの結婚の裏で六覇と戦ってたなんてな。

「でね、でも、その、ノジャは強くて……そして、どうしても中断させようとしたから……私たちも必死に……熱くなっちゃって……」

「うんうん……」

「思わず私……『そもそもラガーンマンの正体はヒイロじゃないし!』……って、言っちゃって」

「……なにっ!?」

「そ、それでノジャが反応しちゃって……結婚式を潰さない条件で話を聞かせろって……その……話しちゃったの。私たちだけじゃなくて、元ノジャの部下だったラルさんにも同席してもらって……」

そして、力づくで抑えることが難しいノジャに対して、当時のエスピとスレイヤは説得を試みたと……まぁ、口を滑らしたというのもあるんだろうけど。

しかも、ラルウァイフまで関わっていたとはな。

「ノジャも半信半疑だったけど、実際にヒイロとマアムの間にアース・ラガンくんが生まれて……信じるようになって……まぁ、そのときは我慢できずに赤ちゃんだったお兄ちゃんを誘拐しようとしたりしてまた揉めたりしたけど……でも、お兄ちゃんが15歳になって帝国アカデミーの卒業御前試合で家出してから数か月……いずれにせよ、懐中時計をお兄ちゃんに渡してお兄ちゃんが過去の時代に行って、そこから帰ってくるまでは絶対に会ったらダメって言い聞かせてたんだけど……お兄ちゃんが帰ってきた後はもう我慢しないとかなんとか……お尻の責任絶対に取らせるって……」

お尻の責任。

大魔螺旋をノジャのアレにぶち込んでしまったこと。

とはいえアレは事故だし、いや、とんでもないことやってしまったし謝らなきゃいけないことなのは分かっているけど……

「あ、謝ったら許してもらえるかな?」

「無理。婿にして首輪をつけて魔界で飼うって……」

冗談だよな……と思ったけど、あいつなら本当にやりそうだ。てか、やるだろうな。

――ガタンガタンゴトン!

床下の猫も驚いたようだ。

「お兄ちゃんのことをライファントにも帝国にも話さない……時を越えるアイテムについても公表しない……でも……もし抵抗するのであればとか……もし嘘だったら、シソノータミの地下遺跡を破壊するとか、全部自分が奪い取るとか……本当に脅しみたいなことを色々と言ってて……」

「ただ、それでもノジャ様も律義に十数年以上も大人しく待ち続けられたのだ……いや、途中で誘拐未遂をしかけたりもしたが……とにかく、当時の小生らには正直に話す以外には、暴れるノジャ様を止めることはできなかったのもあるが……」

「それでもさ、遺跡を破壊するとかはね……特に……お兄ちゃんとお別れしたあの最深部の場所は万が一に備えて、私が通路を壊して瓦礫とかで塞いで通れないようにしたんだよね。懐中時計が何かあったりとか、そういうのにも備えてあの場所は無傷にしとかないとだし。あの場所には他に隠しえれべーたーっていうので行けるのは族長さんが教えてくれたしね」

ラルウァイフも少し申し訳なさそうな様子だ。

まぁ、確かに話だけ聞いてると、それ以外にノジャを止める方法はなかったのかもしれねえな。

しかし、それで時間を稼いだものの、それも俺がこうして過去から戻ってきたことで、もう終わりになったということか。

『……あ……ああ……そういう……』

一方で、ずっと黙っていたトレイナが今の話で何か気づいたかのような反応を見せた。

何を……

『童よ。パリピからマスターキーを貰った時の話を覚えているか?』

『ん? パリピ?』

『パリピが言っていたではないか。遺跡の最深部へ通ずる道は破壊されて通れなかったと……』

『……あ……』

――最深部もまたいくつか道が枝分かれしていてさ……中にはあまりにも建物が古いからなのか、もしくはどっかのバカが人為的にやったのか……とにかく壊滅的に破壊されて通れない道とかもあってさ……オレでも何があるか分からないルートもあるから、それは知っておいてね

言われて俺も思い出した。

たしかに、ゲンカーンでパリピから送られてきたマスターキーを受け取った際、魔水晶を使っての会話で、確かにあいつはそんなこと言ってた。

つまり、その犯人はエスピであり、原因は俺にあったと……まさかそんな風につながっていたとは……

「お兄ちゃん? 笑い事じゃないよ? 真面目な話だよ?」

「あ、ワリーワリー」

思わず苦笑しちまったが、確かに今はそんな場合じゃなかったな。

パリピの話は一旦置いておくとして……

「とにかく、この状況をどうにかするには……一つはお兄ちゃんが本当にノジャのお婿さんになっちゃうか……お兄ちゃんがノジャでも全然いいとか……好みのタイプとか、そういうことなら私たちはべつに……」

「絶対に嫌だ!」

「となると……抵抗して逃げちゃうってこと……ノジャは追いかけて来るし、色々と言いふらされちゃうかもしれないけど……でも、私とスレイヤ君とお兄ちゃんの三人なら何とかなると思うし!」

「うぅ、に、逃げるか……まぁ、悪いことしたのはこっちだからバトルはあんま……いや、でもあれは戦争でのことだし……あ~、でも……」

なんてことだ。まさか、あのお尻に大魔螺旋による勝利がこんなことになってしまうとは。

過去の時代での色々や、ゴウダとの激戦を終えてようやく帰ってきて、エスピとスレイヤとも再会できて、「さぁ、これから」って時に、まさか六覇が俺に首輪をつけて飼おうとしてくるとはな。

だけど、俺は……

「まぁ、俺は飼われるのはごめんだ。やりたいことがあるからな。もっと強くなって、色んなところへ行きたい。果てまで、どこまでも。終わりなんてないさ。俺はそうやって生きていくって決めたから」

そう、それしか今は考えてない。

俺はこれからは「四人」で思うがままに生きたい。

だから……

「謝るけど、飼育されるかどうかは別の話だ。一度ノジャと会い、その上で向こうが力ずくでくるなら……悪いが俺も精一杯抵抗するさ」

「お兄ちゃん……」

ノジャの望む責任の取り方はできないけども、一応何も言わずに逃げ回るだけじゃなく謝罪はしておこう。そうすることに決めた。

「ふ……相手は六覇のノジャ様だ……今では伝説の一人相手に、力ずくで来たら抵抗するなどとよく迷いなく言えるものだ……流石だな」

そんな俺の言葉にかつてノジャの部下だったラルウァイフも苦笑している。

確かに、ちょっと前までの俺だったら無理だったけど……

「流石に六覇にはもう慣れた。お腹いっぱい過ぎてな」

舐めるわけじゃない。が、いつまでもビビッて逃げ回るままじゃない。

そうでもしねぇと、全力を出し合って戦ったゴウダやアオニーに恥ずかしいからな……