軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百四十五話 二度目の技

今回トレイナは戦わない。でも、俺たちを見ていてくれる。

そして、あいつが俺に頼むと言ったんだ。

俺にしかできないと言ったんだ。

なんだろうな、この高揚感は。

あの帝国での御前試合で、トレイナが俺の背を押し出してくれた時以上の感覚。

負けてたまるかってんだ。

「フー、フー……ア~……めっちゃくちゃにするぜ……アースっつったか?」

「来やがれ!」

俺の名を呼んでそう告げるゴウダの息は荒い。だが、さっきまでより気持ちは落ち着いているように見える。

だが、その落ち着きも嵐の前の静けさ……大爆発の前の静けさであり、ビリビリと寒気のする圧迫感に変化はねえ。

すると……

「踏みつぶしてもいいんだが……ウロチョロされっから見失うし……なら、こうするぜ」

「……ん?」

「はあ、はあ、ぬどらああああああああああああああああああああああああ!!」

「ッ!?」

ゴウダが再び吼える。しかし、吼えて飛び掛かってくるわけではなく、その場で唸って全身に力を込めているだけ。

何をする気だ?

そう思ったとき、ゴウダの全身に変化が起こった。

「な、なにあれ、ゴウダの体が……」

「巨大化していたゴウダの身体が元に? いや……収縮されているように……」

「ゴウダ様、何をされるおつもりだ? 巨大化を解除するとは……」

「いや……あれは……解除というより……膨張している肉体を無理やり小さく絞ろうとしている感じだね……」

ゴウダが巨大化から元に戻ろうとしている。

だが、それは単純に巨大化を解除というよりは、族長の言う通り無理やり筋肉を絞っているように見える。

「か、は……んぐ、ぐぬぬぬ……」

まるで、今まで大きな服を着ていた人が、急にサイズの違うピチピチの服を着ているかのように、ゴウダは自分の身体を元に戻そうとしている。

「テメエ何を……」

「へ、へへ……魔力と筋肉操作で……まぁ、あれだ……こうすることによって……見失わねえ……絞ったから軽くなり……スピードも上がって……」

「ッ!?」

「まぁ、無理やりやってっから……この刺激で……爆発までの時間が一気に縮まったが……瞬殺すっから関係ねえぇぇ! テメエをもう逃がさねえってことだよゴラァァァ!!」

サイズは元に戻った。だけど、無理やり筋肉を収縮させたから更に密度が高くなり、しかも何だかスゲエ興奮状態になっている。

そして、同時に俺はこの今のゴウダの様子をどこかで見たことがあったのに気づく。

あれは、カクレテールで……

「ッ!? そうだ、マチョウさんの……パンプアップ!」

筋肉や血流のコントロール。

それにより、マチョウさんは格段にパワーもスピードもアップさせた。

それと同じ? いや、それ以上だ。

そして次の瞬間、大地を蹴ってゴウダが――――

「死ねやゴラァァァ!」

「は――――」

速いッ! 避け……無理、軌道を……

「大魔パリィッ!」

ステップで回避する暇はねえ。

直線的に飛んでくるゴウダのパンチの軌道を変化させるしか、いや、無理。完璧には……弾かれる……

「大魔スリッピングアウェー!」

俺のパーリングをものともせずに弾いて、そのまま俺の顔面目掛けて飛んでくるゴウダのパンチに対して、俺は首をひねって受け流す。

「な、ん~~~、ナンダソリャっ!」

なんてパンチだ。拳圧で遠くの瓦礫がふっとんでやがる。

さっきまでの破壊力はそのままに、スピードだけ段違いに上がってやがる。

「もう一発うぅぅぅ!!」

ゴウダが今度は左のフックで。しかも次の瞬間、ゴウダの左腕だけが大きく膨張しやがった。

これは、筋力操作の一種? 必要に応じて必要な箇所の筋肉を強化? そんなことまでできんのかよ。

だが、腕を振り回すだけの単純な左フックだ。

一発目は想像以上のスピードに驚いて俺の動き出しが遅れたが、冷静にゴウダの筋肉の動きや目線、肘や拳、関節を見れば先読みできる。

「ここだ!」

「アンッ?」

その場でしゃがんで左フックを回避。

しかも、同時にチャンス。ここはゴウダの懐で、見上げればがら空きの顎。

「大魔フロッグパンチ!!」

「ッ!?」

しゃがんだ状態から、蛙のようにジャンプしてアッパーを打ち込……

「な、か、かってぇ!?」

「ア~……」

サイズダウンしても体の硬さは同じ? いや、むしろ密度を高めたことで余計に?

完全なタイミングと角度で打ち込んだアッパーなのに、首を刎ね上げるどころか、俺の拳が逆に痛む。

「痒いこと……してんじゃ―――」

怒号の衝撃波が来る。あっ、これは離れねえとな。

「大魔エスケープ」

「ねえええええええええええええええええ!!」

うるせぇ、鼓膜が破れそうだ。つうか、叫びだけで衝撃波の威力ってどんだけだよ。

でも……

「あっぶね……」

俺の先読みの方が早かった。なんとか範囲外まで離脱できた。

「ちぃ、また……逃げてんじゃねええええええ! 漢なら止まって打ち合わんかああああ!!」

ゴウダはまだ追撃してくる。腰を落としてまるで獣みたいな態勢になっている。

そして次の瞬間、ゴウダが両足をパンパンに筋肉を膨れ上がらせて、砲弾のように勢いよく真っすぐ飛んできやがった。

この爆速……直線的な動きだったら、ブレイクスルー状態の俺より速い。

フェイントで……いや、こいつフェイントなんか構わずとにかく真っすぐ飛んできているだけだ。

なら……

「大魔スイム!」

「んがっ!?」

低い姿勢で正面から飛んでくるゴウダに対して腕を上から被せて泳ぐような流れで横にかわす。

「こ、こんのぉ……はあ、はあ……またウロチョロ、うるああああああ!」

まるですり抜けるかのようにゴウダを横にかわした俺に対し、ゴウダは急ストップしてから、振り向きざまに右ストレートを叩きこもうとして来る。

単調だ。これには合わせられる。

「大魔クロスカウンターッ!」

右でのクロスカウンター。ライトクロス。

「つ、ぅ……んが……」

「ぬぅ……ガキが……」

あっ、ヤバい……大魔螺旋砕かれたときに痛めた右腕……今ので、拳の骨が折れ、肘が……肩も?

腕力ねえな、俺……こんだけ打ち込んでも相手にあんまダメージなく、俺の方がダメージ受けてるし……でも、知るか!

「大魔ハートブレイクショット!」

「うぶっ!?」

俺のクロスカウンターくらっても揺らがねえゴウダに対し、左の拳を心臓目がけて叩き込む。

ダメージなくても、これによって一瞬だけゴウダの身体が硬直。

その瞬間に、引き戻した左に魔力を溜めこんで……

「うおおおおお、大魔螺旋アース・スパイラル・ブレイクゥゥゥッ!!!!」

「うお、ごおおおあああああ!!??」

がら空きのゴウダの腹部に大魔螺旋を叩きこむ。

完全に入った。手ごたえもある。

「風穴開けてふっとべぇぇぇ!!」

腹筋を削っていく。

感覚的に分かる。確かに強靭で硬質すぎる筋肉。

だけど、体の硬さなら冥獄竜王バサラの方が上だ。

バサラには大魔螺旋でもまったく歯が立たなかったが、ゴウダの肉体にはかろうじて歯が立つ。

先端がわずかでも腹筋にめり込めば、あとは一気に―――――

「舐めんなクソガキャぁぁぁ!」

「ッ!?」

しまっ、入り込み過ぎた!? 距離を取……遅い。大魔螺旋に神経を集中させ過ぎて、足が止まっていた。

「捕まえたアアア!」

「ぐ、あっ!?」

俺の大魔螺旋を腹に受けながら、ゴウダはむしろ自分から強引に前へ進み、腹を削られながらもその腹筋で無理やり大魔螺旋を砕き、両腕を大きく広げて俺の背中に回してガッチリホールドしやがった。

ダメだ。この拘束、逃れられねえ!

「はあ、はあ、このまま握りつぶしてもいいが……いっそ脳天から叩きつけてぐっちゃぐちゃにしてやらァ!」

ゴウダが俺を頭上に持ち上げる。

まずい。持ち上げてこのまま叩きつけるつもりか?

これは、確かマチョウさんのパワーボムと同じ。

それをこいつにやられたら、脳天どころか俺は……パワーボム?

「ここだ!」

「ア゛?」

咄嗟に俺は両足でゴウダの頭を強く挟んで、そのまま斜め後ろに飛ぶように回転し……

「大魔コークスクリュー・ヘッドシザースッ!!」

「んごっ!?」

反動を利用して、逆にゴウダの頭を角ごと地面に叩きつけてやった。

「わ、わ!? お、お兄ちゃんッ! すごい! もう速くて全然分かんないけど、すごい!」

「す、すごい……すごい! すごいよ、お兄さん! あのゴウダの攻撃を全て回避するどころかカウンターを叩きこむなんて! 今のもすごい! かっこいい!」

「な、なんと豪快でありながらも速すぎる攻防……とても追いつけぬ……こ、この二人……」

「お、おおおおお、あれは昔資料で……フランケンシュタイナー!?」

危うく死ぬところだったが、あのときと同じだったから助かった。

カクレテールでのマチョウさんとの戦いで披露した技だ。

トレイナに教えてもらうも、こんな派手な技はマチョウさんとのあの一戦以外で二度と使わないだろうなと思っていたのにな。

「くっそが、度胸もあってツエーくせに、小細工ばっかしやがって……アースゥゥ! だが……気持ちいいことしてくれるじゃねぇか……おかげで何度も肉体の暴走で意識が飛びそうになるも……そのたびに起こしてくれるじゃねぇか……ア゛ア゛ン?」

「ちっ、大魔螺旋をモロに腹にくらって、脳天も叩きつけられて……ダメージあるはずのくせにケロッと立ち上がりやがって……」

こんな技すらも瞬間的に引き出すことが出来た。

今回トレイナの助言はない。でも、トレイナの教えの全てが今の俺には染みついている。