軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百三十九話 今さらな質問

「いや~……驚いたなぁ。まさか偶然出会ったお兄さんが俺のマスターキーを拾ってくれたなんて……」

「あ、ああ……じゃぁ、これ返した方が……」

「ん~……いや、いいや。一度は無くして決別した気分だったのに、俺がそれをまた持って……ってのも違うし」

「でも……」

「お兄さんには色々と助けてもらった……オーガに関しても、今回も……だから恩は必ず返すよ。ディスティニーシリーズ書きまくるし、このマスターキーを使って得られるものも好きにすればいいんじゃない?」

元々は族長の所有物だったというマスターキー。

ならば返そうかとも思ったが、族長はどこか複雑そうな顔をしながら拒否した。

何か色々と深い想いがあるのではないかと読み取ることができる。

「なぁ、族長……あんた一体……何者なんだ?」

「ん~?」

思った疑問をそのまま口にしてみた。

それは、トレイナも気にしているようだったしな。

だけど、族長はとぼけた顔して背を向けて……

「おーし、んじゃ早速、転送装置に向かおうか。いや~、長距離を隠れながら歩かなくていいから良かった~」

「族長!」

手を叩いて皆にそう告げる族長。

「一瞬で移動できるとか、あなた、本当にそんなものがあるの?」

「うん。っていうか歩いて結構すぐだよ。ほら、移動移動」

俺の質問に答える気は無いのか?

そう思ったとき……

「俺は誰かと誰かが愛し合って生まれたんじゃなくて……業の深い奴らが試しに造り出した実験体……」

「……なに?」

「遥かなる時を越えて……逃げて逃げて……自由になって……」

族長がポツリと遠くを見るような目でそう呟いた。

その言葉の意味が俺にはよく分からない。

だけど、何かとても重要なことを言っているんじゃないかというのが分かる。

「はは、分かんないよね。でも、説明できないというか……説明の仕方が難しいというか……だから、今はただの作家先生とでも思ってくれればいいよ。それに嘘はないし、俺はシソノータミのことを知っていたとしても、あの技術を使ってこの世をどうこうしようなんて欠片も思ってないから。手に余るもの……あの方も後世に継承しようとしなかったみたいだしね……」

「い、一体何を……」

「っていうか、お兄さんもそういう意味では不思議な人だよね。普通の人なのに……普通じゃないというか……お兄さんも何者?」

「……俺こそフツーだよ……色々と拗らせて……好きな女を困らせたり……親に反発したり……」

「あはははは、そのフツーこそが今の戦乱の世では難しいんじゃない? 逆に言うと、それをフツーと言えるなんて、お兄さんは今までどんな世界で育ってたのやら……。しかし親への反抗や好きな女の子にとか……はは、思春期だねえ」

結局、族長は本当のことを何も言う気はないようだ。

でも、やっぱり普通じゃないというのが分かる。

そして、そのとき俺はあることに気づいた。

というか、今更過ぎてずっと聞きそびれていたというか……

「そういや、族長。あんた名前なんて言うんだ?」

「え? えぇぇぇぇえ? 今更……って言おうとしたら、そういえば族長ってみんな呼んでるから……」

そう俺は族長の名前を聞いてなかった。本当に今更だった。

「あ、でも……ディスティニーシリーズの本……原作者の名前はたしか……『タケノコ』……」

「いやいやいやいやいや! それはペンネームだからね! いや、自分でも何でそんなペンネームとか思ったけど……まぁ、今まで通り族長って呼んでよ」

そう言って族長は恥ずかしそうに……っていうか、恥ずかしいなら何でそんな名前にしたんだよとも思うけど。

「あっ、でもそれを言うなら逆に俺もお兄さんの名前――――あっ、みんな! そこ! そこの大岩!」

「え? これですか? 族長!」

と、そのとき、族長が俺の名前を聞こうとしてきた。

あぶねえ。よくよく考えれば俺はこの時代で気軽に名乗れないどころか、エスピとスレイヤにも名前を明かしてないんだよな。

それこそ、ラガーンマンとかタピル・バエルとか偽名しかない。

だけど、その名前を問われる前に、どうやら目的地に着いたようだ。

とはいえ、そこは森の中にある巨大な大岩にしか見えないけど……

『こんなところに、シソノータミの技術が?』

「おっきい岩だね、お兄ちゃん」

「でも、こんなもので本当に? お兄さん、どう思う?」

「小生でも何の魔力も感じられぬ……族長殿、本当にこれがそうなのか?」

「ねえ、あなた……」

見た目はただのデカい岩にしか見えない。流石にこれがそんなとんでもない技術と関連するものとはとても思えなかった。

それはトレイナを含めたみんなそのようだ。

すると、族長はその大岩の前に立って……

「まぁ、見てなって。お兄さん、この大岩にマスターキーを」

「え、あ、あぁ……」

言われるがまま俺はマスターキーを取り出して、大岩にかざしてみる。

すると……

【マスターキー確認シマシタ】

「「「「「ッッッ!!!???」」」」」

大岩が喋った。

「ちょっ!?」

「岩がしゃべった!?」

「いや、それとも誰かが中に……?」

「ぬっ、い、一体何者だ……!」

突如言葉を発した大岩に、その場に居た全員が飛び退いた。

俺やエスピたちは思わず身構えてしまった。

ただ……

『……童……今の声……』

『トレイナ?』

『今の声……あの時計と同じ声ではなかったか?』

『時計? ……あっ!』

言われてようやく俺も気づいた。

確かにそうだ。

俺たちがこの時代に来てしまった原因と思われるアイテム。

「ど、どういうことだ……?」

「ねぇ、お兄ちゃん。それって、たしか前喋った時計だよね? ジューデンしてくださいとかって」

「時計が喋る? 何を言っているんだい、エスピは。お兄さん、どうしたんだい?」

懐から俺は例の時計を取り出してみた。

だが、岩と違ってこっちの時計は相変わらずウンともスンとも言わない。

「ん? ……どうぇええええええええええ!? お、お兄さん! ちょ、え? お兄さんそれ……」

「え?! ぞ、族長? こ、これ知ってるのか?」

「いや、知ってるも何も……あ……あ~~~~~、あ~~~~~~、あ~~~~~~~! ……そういうことかぁ……あ~……」

族長が時計を見て、マスターキーを見たとき並みの驚愕の声を上げた。

これのことも知っている?

そして族長は大声を出しながらも、「あ~」と言いながら次第にどこか納得したように頷きだした。

「ちょ、あなた、どうしたの? ねえ、この岩がしゃべったり、ねえ、あなた!」

「族長!?」

他のエルフたちからすれば意味の全く分からない状況。

だけど、族長はその問いに答えず、ただまっすぐ俺を見つめて……

「ねぇ、お兄さん。ちなみにお兄さん『は』、……未来? 過去? どっち?」

「ッッ!!??」

『こやつ!?』

その問いに俺も、そしてトレイナもこれ以上ないほどの衝撃を覚えてしまった。

「……み…………未来……」

「そ。じゃあ、被ってないね。俺は過去だし」

「ッ!?」

「これはお兄さんとは色々と支障が出ない範囲ですり合わせが必要だね……ま、とりあえず移動が先だけど」

ヤバい。心臓がバクバクしてきた。

族長ってひょっとして、普通のエルフじゃないどころじゃなくて……もっと、何かもっととてつもない秘密が……

【扉ノロック解除ノパスワードヲオ願イシマス】

「「「「「また喋ったぁ!!??」」」」」

そのとき、大岩がまた喋った。

もう何が起こっているのか、どうなっているのかがもう訳が分からねえ。

するとそんな中で族長は落ち着いたように大岩に向かって両手を上げ……

「とりあえずまずは……コホン……」

軽く咳ばらいをして両手を上げて……

「さぁ、扉よ、我が声に従い閉ざされた古の戸を開けるがよい! え~……『開け ゴマ』!」

【パスワードヲ認証シマシタ。ロック解除シマス】

次の瞬間、大岩が勝手に後ろへとズレて動き、その下に真っ暗な地下へと続く階段が現れた。