軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百三十五話 再認識

皆がアカさんの優しさにほっこりしたり、された仕打ちに怒ったり、でも仲直りできたときには喜んだりと、気づけば引っ越し作業している連中はいなくなり、皆して俺の思い出話を聞いていた。

そして話はあの朝に至り……

「それで、ひっぐ……自分が一緒だと……俺に迷惑かけるからって……友達だからって……置手紙を残して……アカさんの姿はもうどこにもなくて……」

気づけば俺は泣いていた。

あのとき、あの朝、あの手紙を読んだ瞬間を語っているだけで俺は思わず感極まってしまった。

でも、それは……

「「「「「うおおおおおおおお、アカさああああああああん!!!!」」」」」

全員一人残らず泣いていた。

っていうか……

「かなしいよぉ、アカさんなにもわるいことしてないのに~……」

「ま、まったくエスピは子供だな。すぐに泣くなんて。ボクは……ぐすん……な、泣いたりなんて……」

「いいオーガ……いいや、いい男……いいヒトだったんだな」

「ぐすん、あぁ、もうダメ。私、オーガなんて全員憎んでやろうと思ったのに……」

「なんて心優しいオーガがいたんだ……」

「おかあさん、わたし、もうオーガさん怖くない! おそってきたオーガたちは悪い人たちだけど、いいオーガさんだっているもん!」

「ぼくもだー!」

「ああ、そうだよ。オーガだけじゃない、お兄さんやエスピちゃん、スレイヤくんのような人間だっている。魔王軍の連中やボクメイツの連中ばかりが全てじゃない」

あまりにも単純すぎる。頭でっかちで他種族を見下して毛嫌いすると言っていたエルフたちがみんな涙を流しているという異様な光景。

でも、俺は嬉しかった。

「……アカらしいな……」

ラルウァイフも瞳に涙を浮かべながらも、切なそうに俺に微笑んだ。

「それでも……それでもアカは……お前に会えて良かったのだろうな」

「ラルウァイフ……」

「小生も……アオニーも……家族も皆が戦争や憎しみに囚われて……だからこそ、お前のように人間とヒトとして接し、自分を恐れることなく正面からぶつかってくれる者と出会えて……」

「そう……かな……」

「ああ。アオニーもお前とのぶつかり合いでそれが分かったのだろう。だからこそ、お前だけは絶対に死なせてはならないと……」

「……そっか……」

そう言われて、俺は思わずあの日トレイナに言われたことを思い出して、傍らにいたトレイナを見て、そしてトレイナも微笑んだ。

――童、これは慰めではない。あのオーガは貴様と出会って本当に救われたはずだ。貴様は間違いなく、あやつの友になることが出来た。だからこそ、奴は貴様の前から姿を消したのだ。貴様は世界を知らん。人と魔族の底を知らん。力も弱い。だがな……それでも、貴様は人間でありながらオーガと友情を結んだ。余は、そんな者たちを初めて見た。本当に、貴様はよくやった

俺が無力だったから、アカさんは俺に気を使って俺の前から消えた。

だが、それでもアカさんは俺と出会えて良かったんだと……

だからこそ、同時にあの時に言われたあの言葉……

――きついことを言うかもしれないが、貴様が考えているほど、異形に対する世間の目は甘くない。それを誰よりも理解しているからこそ、あやつは貴様の元を去ったのだ。周りの目など関係ないだと? 笑わせるな。世界や人や魔族のことを欠片も知らぬ貴様がどれだけ強気な発言をしたところで、何の根拠にもならん。信頼もできぬ

今の俺ならどうなのかな? 強気な発言をしても、今の俺なら多少は……?

『少なくとも……貴様個人に何の嘘偽りはない……そんな信頼はあるだろうな』

俺の抱いた疑問に対して、トレイナは及第点のような評価の言葉をくれた。

あのときから少しはマシになったんだなと感じ、少しだけ救われた気がした。

だからこそ……

「ちゃんと、アオニーの分も背負わねえとな……ラルウァイフ……お互いにな」

「……ああ……そう……だな」

命がけで俺たちに託したアオニーの想いを絶対に無駄にするわけにはいかないと、俺もラルウァイフも再認識した。

「お兄ちゃん、絶対アカさん見つけないとダメだよ!」

「うん! もし何かあってもボクが力になるから!」

「あっ、スレイヤくんズルい! 私がなるの! アカさんイジメる奴らは私がぶっとばすんだから!」

「違う、ボクだ!」

そして、すっかり俺の話に夢中になっていたエスピとスレイヤが俺にしがみ付いてきて、鼻息荒くしながら言ってきた言葉に、俺はまた笑っちまい、同時にその通りだと頷いた。

「よし、ダークエルフ! あんたも……アカさんを見つけて幸せにしてやるんだ!」

「おお、そうだそうだ!」

「ええ、このままじゃアカさんがあまりにも不憫よ! 傍に行って支えてあげなさい!」

すると、感極まったエルフたちが次々とアカさんの幸せを考えて、ラルウァイフにその役目を果たせと口をそろえて言い出した。

しかし、ラルウァイフはその言葉には悲しそうに首を横に振った。

「できぬ……今の小生には……たとえ、皆が何と言おうと……アカの話を聞いて余計に……小生は……小生のような女は……」

そう言って、ラルウァイフは肩を落として俯いた。

俺からアカさんの話を聞いて、余計に自分がふさわしくないなんて思って悲しんでいるようだ。

「じゃ、じゃぁさ、その……殺してしまった人たち以上に誰かを救って償うとか……」

「いやいやイーテェ、償いなんてする必要ないんじゃない? 戦争やってんだからお互い様だし、そもそもこの人だって悪いとは思ってないでしょ? 自分の行った所業に苦悩はしたとしても……それなら償うもクソもないじゃん」

「あなた……それはそうかもだけど……」

「だいたい、戦争してたのに、殺した人間に償うとかイミワカンナイし」

そう。お互い様。どっちもどっち。別にこの時代の戦争はどっちが正しいとかそういうものじゃない。

だから、償いがどうとかではない。

とはいえ、簡単に割り切れるものでもない。

「とりあえず償いがどうとかじゃなく、あんたが今の自分なら会いに行ける……そう思えるように生きてみたらいいんじゃないの? 知らんけど」

結局のところ、答えは出ないがこれからも生きていかなくちゃいけない。アオニーに報いるためにも。

だからこそ、族長の言う通りなのかもしれない。

もっとも、俺がアカさんと出会ったときに、ラルウァイフとアカさんが既に再会していたという感じはしなかった。

十数年後の世界で、アカさんのことを探しているのか、まだ会えていないのか、それは分からないけど……

「その答え合わせは……俺が一足先に……だな」

そう、今の俺がどれだけ思い悩んでも、既に歴史は決まっている。

なら俺にできることは、その行く末を見に行くだけ。

そう、もと居た時代に帰ることだ。