軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百三十一話 幕間(青い鬼)

アカ。ほんとは、いつもいつもオメーには歯がゆかったーべさ。

オメー本当はむちゃくちゃツエー。本気を出せばオラたちと同じ奇天烈大百下の称号だって貰えたーべさ。

だけど、オメーは称号よりも、武功よりも、手柄よりも、戦争そのものに苦しんだーべさ。

――もう、やめるでよおおおお! どうして、どうしてこんな……

オメーは戦争なんだからと割り切れなかったーべさ。

オラはそれが歯がゆかったーべさ。

――なぁ、どうしてだ? どうしで、みんなこんなヒデーことできるだよ!?

どうしてだって? そんなのやらなきゃこっちがやられるだからだーべさ。

ただ殺すだけじゃねえ。殺しただけだったら、そいつの家族や仲間が今度は復讐しにやってくる。

その矛先はオラやオメーや仲間や家族にまで及ぶかもしれねーべさ。

それが戦争だーべさ。

――降伏したなら、もういいでよ! アオニぃーにも、父ちゃんも、母ちゃんも、ラルお嬢様も……みんなどうしちまっただよ!

圧倒的な力と強烈なまでの残虐さで相手が二度と逆らえないぐらい、人間たちを恐怖のどん底に落とすことが、今後の戦争の勝利にも大きく繋がるーべさ。

オメーは甘い。甘すぎる。それは優しさなんかじゃねーべさ。

――人間だって、話し合えばわかり合えるかもしれねえ! やってみなくちゃ、わかんねーだよ!

人間たちと話し合う? 仲良く? できるわけねーべさ。

戦争してんだ。そんな甘ったれた夢を見たり、妄想したらいけねーべさ。

「アオニー。吾輩に対し、何をしているか分かっているのか?」

「はあ、はあ……お嬢ぉぉぉぉッ!!」

アカ。オメーは心がただ弱すぎただけだーべさ。

「え?」

「縄を、これでよしだーべさ!」

「……あ、アオニー?」

「急いで、こいつら全員連れて逃げるーべさ! ここはオラが食い止める!」

「……な……に?」

オラたちの肩に同族のオーガたち、魔界に住む多くの魔族、そして次の時代を生きる子供たちの未来がかかってるーべさ。

自分がつらいからって逃げ出すわけにはいかねーべさ。

やらなきゃ、こっちがやられるーべさ。

誰かがやらないと……だから……オラたちがやるしかなかったーべさ。

「七勇者エスピッ!」

「ッ!?」

「この兄ちゃんと……エルフの住民全員集めて、今すぐお嬢にくっついて、ワープでどこかへ逃げるーべさ!」

「え……?」

だから、どれほど非道であろうと人間たちに容赦はできねーべさ。

ボクメイツファミリーなんて屑共とつながりを持つなんて嫌だったけど、それでもあいつらの組織を利用して、人間たちが内部から腐って少しでも弱体化していくならばと割り切ったーべさ。

これも全ては魔界のためだーべさ。情けは無用だーべさ。

「おい……何のつもりだ? アオニーよ。ラルウァイフにまで……魔王軍を裏切るつもりか?」

「せめてもの……オラに『嘘じゃねえ』って証明した男への……甘ったれたオラの弟分の友達への……せめてもの誠意……だーべさ」

「なに?」

それなのに逃げ出したオメーを、オラはもう呆れちまったーべさ。

どんなに怯えても、オメーはイザというときはやってくれる男だと信じていたーべさ。

でも、オメーはオラたちを裏切って逃げ出したーべさ。

「すまねぇ、ハクキ大将軍。だけど……だけど……ここは絶対に通さねえーべさぁ!!」

「………………」

逃げ出したオメーが魔界で人目を避けて生きようと、仮に地上で生きようとも、この世界にオメーの居場所はねえ。

「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

せめて昔のよしみで逃走兵として追っ手を差し向けられないよう、オメーは戦死したとしてオラは報告した。

お嬢にも本当のことは言わず、オメーへの思い出は思い出のままにしてやろうと思ったーべさ。

「あ、アオニー!?」

「行くーべさ、お嬢! そして、そいつが起きたら話を色々聞くーべさ!」

「な、何を言って……」

「はやぐいくーべさあああああああああああああ!!」

そして、アカなんか後はもう勝手にしろと思ったーべさ。

もう絶交……どうなっても知らねえ……本当にそう思っていたーべさ。

「まさかお前ほどの男が吾輩に謀反を起こすとは……事情もよく分からんが……さて……」

「うおおおおおお! が、ああああが、ひ、が……」

「な、何をやってんだよ、アオニー隊長! ど、どうして大将軍に!? やめてくれーっ!」

なぁ、アカ……オラはな……オメーと一緒にいた間……オラがずっと願っていたのはな……

「七勇者エスピ! 今すぐ全員を小生のところへ! 早くせよ!」

「で、でも……」

「今だけは……今だけは小生を信じよ! 兄を救いたいのだろう!」

「っ、ふ、ふわふわ回収ッ!」

オラが願っていたのは、戦争をさっさとオラたちの代で終わらせてよ……オラは素直になれねーお嬢の背中を押して、アカとお嬢が種族を越えてオーガとダークエルフで夫婦になってよ……オラも英雄になって別嬪な嫁をもらって、んで、オラの子供とオメーらの子供が一緒に遊んで、親友同士になってよ……

「みんな、俺たちも行こう! 集落は……捨てる!」

「あなた、で、でも!」

「早くしろッ!」

なんつってな……今の今まで最初抱いたそんな夢を……オラ、忘れてたーべさ。

それだけはオメーの言う通りだったーべさ、アカ。オラも変わっちまってたーべさ。

戦争で変わっちまったーべさ。

「ア、アオニー……」

「お嬢。しっかり話を聞いて……これからをどう生きるか考えて……自分が思うがまま、もう一度……生きるーべさ! だからいけええええええ!」

「ッ! ……ハツノーリカーラノゴセンイェンチョーカ・中距離移動魔法タクスィー!!」

アカ、オメーは逃げたけど、変わっていなかったーべさ。

そして、見つけたんだーべさ?

――俺はな……知ってんだよ。お前らみてーにデッカイ体で、恐ろしい強さで、それなのに誰よりも優しかった……俺たち人間なんかよりもずっと純粋な心を持っていたオーガを!

出会ったんだーべさ? 本物と。

だから、せめて――――

「すぐに間違いを後悔して大人しくなると思ったが……両手足を捥ぎ……気を失わず痛みを感じられる程度にジワジワいたぶったが、それでも吾輩に必死にしがみついて、本当に命を懸けたか……アオニーよ。間違っていようとも、その闘志だけは見事。流石は吾輩が認めた百人の一人」

「は、か……は……が……が……」

「別に吾輩はお前の足止めによってあいつらを逃がしたわけではない。事情は分からぬが……お前ほどの男……これまで数多く吾輩や魔王軍に貢献したお前が、こんな姿になってでも最後まで貫こうとした覚悟に免じてやっただけ……せめて……事情だけは聞こうか?」

オメーに比べて、オラはどうだーべさ?

変わっちまったオラは間違ってたべーさ?

「オラが……まちが……ってた……べさ?」

「ん? ああ、そうだ。吾輩に謀反を起こすなど、正しいはずがなかろう?」

オラが……大将軍が……大魔王様が……魔王軍が間違っていたーべさ?

んにゃ、人間たちだってヒデー。

ボクメイツが間違ってるーべさ?

勇者が……連合軍が……皆が間違ってるーべさ?

んにゃ……

「いんや……間違ってんのは……」

「ん?」

――オーガも……魔族も、人間も……どいつもこいつも、いつまでも戦争なんかやってるから!

「いつまでも……戦争を終わらせられねえ奴らだーべさ!!!」

嗚呼……死ぬことなんて怖くなかったのに……アカ……オメーが本物を見つけ、オメーが人間とも友達になれたなんて聞いちまったらよ……でも、オラはもうそんなことを願ったらいけねーべさ……オメーが悩み苦しんでいるときに何もできなかった、何もしなかった。

逃げたオメーに失望してないで、すぐに追いかけて話をすることもできなかったオラにそんな資格は……だけど……

「意味の分からぬ遺言だが、魂だけは伝わった。その言葉の真相を掘り起こすほど興味は沸かないが……せめて、吾輩の血肉となって生きよ……さらばだ……アオニーよ」

アカ……オメーと、お嬢と一緒に……もう一度だけ会いたか――――