軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百十八話 朝食

族長と夜通しの語らい。

トレイナがメチャクチャ興奮して俺に色んなことを代弁させ、それに族長もノッてきた所為で、気づいたら外が明るくなっていた時は青ざめた。

そこから俺も完全に意識が途切れたのだが、その直後にいきなり起こされた。

「とぉ! エスピだーいぶ! お兄ちゃん、おっきろー!」

「ぐへっ!?」

「えへへ~、おに~ちゃん……ぎゅ~~~」

急に腹に衝撃。こ、これは……

「エスピ、なんてことするんだ! まったく……お兄さん、朝だよ……そろそろ起きて」

そして、揺らされる。

なんか、一瞬しか寝てねぇ……

「ほら、さっさと朝ごはん食べなさいよね。人間なんかのために、この族長の妻である私が直々に作ってあげたんだから感謝して食べることね。残したりしたら許さないから」

エスピとスレイヤに続き、奥さんにフライパンとオタマを盛大に鳴らされ、俺は眠い目を擦りながら起きると、食欲をそそる良い匂いがしてきた。

部屋から出てみると、ダイニングのテーブルに、俺たちのために用意されたベーコンエッグやサラダにスープが並べられていた。

「お兄ちゃん、おはよう!」

「おはよう、お兄さん」

「おう、よく眠れたか?」

「「うん、スレイヤくん(エスピ)の寝相が悪かったけど……むっ」」

俺と違って昨夜は風呂にも入れてもらえたし、久々に屋根のある家でぐっすり眠れたからか、二人とも非常にスッキリした顔をしている……のに、いきなり不機嫌そうな顔して睨み合うなよ。

「寝相悪かったのスレイヤくんだった! だって、朝起きたらスレイヤくんの足が私の顔の前にあったもん!」

「何を言っているんだか……君がたくさん寝返りして逆さまになっただけ。ボクはちゃんと姿勢よく寝ていた」

「んーん! スレイヤくんだもん!」

「違う、君だ!」

というか、お前ら昨日は同じベッドで寝たんだな……仲がいいんだか悪いんだか……つーかお前らは結婚するんだけどな……

「ほら、朝ごはんの前に煩くしないで、ちゃんといただきますしなさいよね! せっかく作ったのに冷めちゃうでしょ!」

「あう」

「いた……何でボクまで……」

すると、ムスッとした奥さんが二人を怒りながらその頭を軽く叩いていく。

なんか二人も頭を押さえるも、それ以上は声を上げず、何だか一晩で奥さんには頭が上がらなくなってる?

「ほら、パンも焼けたわよ」

「わーぁ! お兄ちゃん、見て見て、パン! イーテェさんが朝から焼いたんだよ? すごい美味しそう!」

「ちょ、べ、別にそんな朝から気合入れたみたいに言わないでよ。何だか昨日からムカついていたからストレス解消にこねたいと思っただけなんだからね!」

出来立て熱々のパン。

キャンプ生活が続いて、あまりこういう家庭的な朝食からは離れていたので、何だか新鮮だった。

エスピも嬉しそうだし、スレイヤはクールにしているが機嫌悪いわけではなさそうだ。

「あ~、ねむい……ん? あ~、気合入ってる~」

「ちょ、あなた!」

「ふ~~~~ん」

「な、なによ、そんなにニヤニヤして! まるで私が普段は手を抜いているみたいに思われるようなこと言わないでよね! あなたも早く座っていただきますしなさい!」

「はいよ」

起きてきた族長の言葉から、やっぱ奥さんは気合入れていたみたいだな。

なんというか色々と素直じゃ……ん?

「はい、『あなたの』ぶん」

「ん」

そのとき、俺たちは思わず目を疑った。

族長の前に出された朝食。パン。そしてサラダとスープ。

俺たちのようにベーコンとかソーセージとかそういうものがない。

俺たちよりも量が……

「え、族長……」

「それだけでお腹いっぱいになるの?」

俺たちよりも量が少ない。そのことを変に思うと、族長も奥さんも「ああ」と苦笑し……

「ああ、俺……草食系エルフなんだ。肉とか食わないの」

「へぇ……」

まさか、野菜を食って肉を食わないとは……だから線が細いのか……

『…………』

ん? 何だろう……昨晩はあんなにハシャギまくって俺に色々と代弁させてたトレイナが、少し難しい顔をしている?

なんだ? 今の流れで何か引っかかることでも……

「ぞくちょーさん、好き嫌いしたら大きくなれないよ?」

「いや、別に嫌いなもの食べたって急激に伸びるわけでもないし、人の限界値は決まっている訳であるし、そもそも肉体の大小は戦いに生きる連中とか以外には大して意味のないものであって、それなら好きなものだけ食べていた方が人生豊になるというのが俺の結論なんだ」

「ん~? ……何言ってるか分からない……」

「聞いちゃダメよ、エスピ。こいつってば、ほ~~~~~んと捻くれ理屈こねくり回す嫌な奴なんだから」

「……それなのに結婚したんだ……」

「ちょ、スレイヤ! あのねぇ、私は結婚してあげたの! 仕方なく結婚してあげたんだから、そこは勘違いしないでよね!」

「すきだから結婚したんじゃないの?」

「す、す、あ、あ、だから……えっと……べ、別にそんな、す、すきだからとか、そんな単純なものじゃ……だ、だいたい結婚ていうのはそれだけじゃできないのよ! 色々あるのよ! 子供には分からないかもだけどね!」

しかし、このとき俺はトレイナの様子はすぐに頭から消え、朝っぱらから話で盛り上がっていた。

「ん~……よく分かんない……お兄ちゃんは分かる?」

「ぶっ、お、俺?」

そして、俺にここでフるとは……思わずビックリして茶を噴き出しちまったよ。

そんな俺の気持ちも知らずに、エスピは純真無垢な疑問をぶつけてくる。

それに対して俺は……

「ま、まぁ、ほら……あれだ。結婚てのは恋人になるんじゃなくて、家族になるってことだから……あ~……お互いの気持ちだけで成立するもんじゃなくて……たとえば、互いの家族に認めてもらうとか……祝福されてとか……」

いや、俺だって分からねえよ。トレイナも呆れ顔で……ん? そういえば、今、自分で考えながら喋ってるけど、どこかで聞いたような……あ……そういえば……

「ふ~ん……そうなんだ」

「よく分からないけど、お兄さんはやっぱり大人だね」

「へぇ、あんた、まだ十五とかだって聞いたけど、よく分かってんじゃない」

「不良かと思ったけど、意外と純……なんか、育ちが良かったり?」

感心してるけどエスピ……スレイヤ……あ~、そうか……まさかこいつら、今の俺の言葉をずっと……何年も……

「族長うぅぅぅぅ、大変だ、族長!」

「「「「?」」」」

と、そのとき。こんな朝早くから家の外で騒がしい声が響いた。

一体何事かと首を傾げながら、族長は席を立ちあがって窓を開けて外に顔を出す。

すると、昨日俺らを襲おうとした武器を持った若いエルフたちが血相を変えて……

「この間、駆け込んできた火竜たちが……また来た!」

「え、またぁ?」

「しかも、すごい怪我をしてる! 早く診てやってくれ。何か訴えているみたいだけど俺たちじゃ分からなくて……とにかく来てくれ! ひょっとしたら、何かが起こっているのかもしれない!」

火竜? それって……

「「「あっ……」」」

この間俺たちが返り討ちにした……?

「いや、多分あんたたちじゃないよ」

「族長?」

「数日前、火竜たちが泣きながら駆け込んできたとき……それが多分あんたたちので……また駆け込んできたってことは、たぶんあんたたちじゃなく別のだと思う……あ~……メンドクサイ……」

そう言って、パンを口に咥えこんでそのまま外に出ていく族長。

俺たちじゃない?

ったく……朝から何が起きようとしてるんだ?