軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百十三話 仲間内で揉める

山を越え、森を抜け、ひたすら大自然の中を突き進む。

途中で凶暴な獣やモンスターやらに襲われることもあったが、そこら辺は丁重に相手をして、特に問題はなかった。

だが……

「あっ……」

「……ねぇ、お兄ちゃん……アレ……」

「……キャンプの……だね……」

森を抜ける途中の川沿いで、明らかに誰かが野営を張っていたと思われる痕跡を発見。

薪の後やら、食事の残骸やら、明らかに人のもの……いや……

「お兄さん、コレ……見てよ」

「……ああ……」

地面にゴミの不始末もあるのだが、その中に小さな袋を発見。

そしてその袋は俺も知っているものだった。

「カロリーフレンド……」

それはトレイナがかつて開発した魔王軍の兵士に与えられた携帯食。

俺が未来のスレイヤの店で……つまり本来の俺の時代で俺は購入した。

でも、俺以外でもこの時代で持っている者たちが居る。

当然それは……

「魔王軍だな……」

それしかいなかった。

『だろうな。しかもこの様子だと昨晩……と言ったところだろう。恐らくは数十人程度の魔王軍が昨晩このあたりに居た……そういうことだろう……しかし、キャンプの後に後片付けをしていかんとは、何たるマナー不足だ』

トレイナがこう言っているんだし、間違いない。

レーダーで周囲を探索してみるが、一応そこまで近場に気配は感じない。

しかし、相手がモンスターやらではなく、魔王軍というのなら色々と警戒が必要だろうな。

「魔王軍? お兄さん、どうしてこれが落ちてるだけでそう思うんだい?」

「ん? だってそれ、魔王軍御用達だからな」

「え?」

と、俺はスレイヤの疑問にサラッと答えちまったけど、まずかったか?

「お兄ちゃん、そうなの!?」

「なんで、それをお兄さんが? お兄さんは人間で、魔王軍じゃないでしょ?」

エスピまで驚いているし……いや……でも……

「そりゃ……便利だからな。状況によっては魔王軍と戦ったりもしたが、俺自身は人間でも魔王軍に対して恨みや憎しみがあるわけじゃねーし、仮にそういうのがあったとしても……文化や技術に種族は関係ねえよ。優れたものは柔軟に受け入れることが成長のコツだ」

と、何か俺は自然と誇らしげに言ってしまったけど……なんか……

『ぷっ、くくくく』

トレイナがメッチャ笑ってる。

そういや、同じようなことを俺がトレイナに言われたんだったな。

まさかトレイナの受け売りを、スレイヤだけじゃなく七勇者のエスピにまで教えちまうとはな。

「そうなんだ……お兄ちゃんが言うんだからそうなんだね!」

「柔軟に……か……先入観を持たずに受け入れるべきものは受け入れるということか……流石はお兄さん!」

そしてこいつら、いい子だな! メッチャクチャ目をキラキラと輝かせて尊敬の眼差し……いやいや、大魔王の言葉なんだけどな。

「それはさておき……モンスターたちよりも、魔王軍と遭遇する方が厄介だな……」

『まぁ、もしかしたら退却したノジャの配下の一部かもしれん。本体に合流せずに、周辺調査や地図作成のために別行動している連中などな。もっとも、この辺りは特に重視してなかったので、余もこの辺りの侵略を指示した記憶もない』

「お兄ちゃん、でも敵、近くにいないよ?」

「確かに、不穏な気配は……」

昨晩はここに居たかもしれないが、問題は……

「ッ!?」

『……ふむ……』

突如、俺のレーダーの網に誰かが引っかかった。

「お兄ちゃん? ……あ……」

「ん? 気配が……」

俺に少し遅れて、エスピとスレイヤも察知したようだ。

何かが俺たちに近づいて来る。

複数。

しかも、忍び寄るようにゆっくり、気配を殺しながら……

「……十……いや、二十五人……人だ……ゆっくりと散開して、俺たちを取り囲もうとしているな」

森が深くてその姿は見えなくても大体のことが分かる。

相手の身長や筋肉量……かなり細身だが、引き締まっている……なかなか動ける体つき。

男と女が混じっている?

魔力もそこそこ感じる。

そして……

「武器を持ってるな……この形状……弓だな。剣も携帯している」

『うむ、正解だ』

「エスピ、スレイヤ……いつでも動けるようにしろ」

ひょっとしたら、先日のアマゾネスたちか?

正直、負ける気はしない。でも、戦う気にもなれねぇ。

さて、どうする……

『……待て、童』

『ん?』

『貴様も感じたはず。女だけではなく……男も混ざっていると』

『ああ』

『アマゾネス部隊には女しかいない』

『ッ!?』

トレイナの指摘で俺もウッカリしていたことに気づいた。

そうだ、ノジャの部下たちは全員女だった。

男が混じっているということは……違うってことか……なら、誰だ?

―――この森で何をしている……薄汚れ……ているようには見えない……人間たちよ……

「「「ッ!!??」」」

―――無垢な子連れで迷子……というようには見えないけど……

森の中で響き渡る、ちょっと厳しめに叱るような声。

若い男?

――っと、コホン。あ~……この森は我らの聖域。穢すことも荒らすことも許さぬ。早々に立ち去るがよい。さもなくば、森の裁き――――

「おう! 余計なことをする気はねえし、早々に立ち去るからそれでいいだろ?」

――お、おお……そうなの?

「ああ、そうだ」

――……わ、わかった……

とりあえず、揉め事は避けよう。

そう思って、俺が聞こえてきた声に返すと、声の主は少し面食らったような反応を示してきた。

「いいの? お兄ちゃん」

「だって、立ち去れって……」

魔王軍だったらメンドクサイし、そうでなかったとしても戦う気もねえ。

だから、二人を連れてそのまま……

――いやいや、族長! 何でアッサリ見逃そうとしているのです!

――だ、だって、立ち去るって……

――昨日捕えた魔王軍のダークエルフのように危険かもしれませぬぞ!

――で、でも、人間だし……

――人間こそ信用できないのですぞ! 例の組織が我らの同胞を拉致して売買したのをお忘れか!

――こ、子供だし……

――いや、子供は別にしても、一緒にいるあの男は少なくとも目つきが悪いです! きっと悪い奴です! それこそ二人の子供を攫っているのかもしれませぬ!

――目つきが……こ、怖そう……っていうか、あの三人……桁外れに強いんですけど!? 昨日といい、何で二日連続でこんな……

――何をビビっているのですか! それでも族長ですか! あんた強いんですよ!? 森の正義の鉄槌をくらわせてやりましょう! というより、あんたの方が強いでしょ!

――いやいや、正義ヅラして自分が正しいと思い込んでいる連中が一番イタイからね。っていうか、どう見てもあの三人の方が強いって。ほら、数日前に山の火竜たちが泣きべそかいて駆け込んできたけど、ひょっとしたらあの連中――

あるぇ? なんか仲間内で揉めてないか?

当初は森に響く謎の声だったのに、今では完全に仲間たちだけで大声で揉めてる。

つーか、目つき悪くて悪かっ――――

「悪い奴? ……お兄ちゃんのこと!?」

「お兄さんが……悪い奴?」

って、エスピ? スレイヤ?

「「お兄ちゃん(さん)を悪く言うやつは許さない!!」」

そして、こっちはこっちで普段揉めてた二人の意見が一致した。