軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百一話 幕間(狐女)

いつの日だったか、酒を飲みながら友に愚痴っていたときのことを不意に思い出したのじゃ。

――ヌワハハハハ、数え切れぬ程の雄たちの心と尊厳をへし折ってきた変態雌狐にもそんな悩みがあるのか! 行く遅れ……ヌワハハハハ!!

――笑うななのじゃ、バサラ。切実なのじゃ。わらわとて運命の男は一人おれば十分なのじゃ。一生イジメてもイジメても心折れず、そして屈服しないダンディ一人おればそれでいいのじゃ! しかし、どいつもこいつもちょっとイジメただけで首輪を受け入れ、四つん這いになってワンワンとかチンチンとかする弱者ばかりなのじゃ

――弱者がダメなら強者は? 貴様より強い奴もそれなりにいるであろう? あっ、ワシはダメじゃぞ? もう嫁は十分おるし、ワシの生涯最後の恋はあやつのままにするつもりじゃからな

――ふん。あんな毒舌女勇者のどこがよかったのじゃ? まぁ、それはさておき、強者は望むも、わらわより強いのはダメなのじゃ。わらわが簡単に拘束したりしてイジメることができるぐらい弱くて、その上で心の強い奴がよいのじゃ!

――そんなのおるわけないじゃろ! 歪んでおるの~……しかし、そうなると……ハクキはおぬしより強いし……魔族にはおらぬか……人間も……ミカドあたりは……微妙じゃのう。おぬしとどっこいどっこいぐらいか?

――いや、ミカドはタイプではないのじゃ。あやつはこ~、人を諭そうとするので苦手なのじゃ。つか、あやつは人間とカウントしてよいのか? 半分は仙人なのじゃ

――ワガママじゃの~、おまけに細かいことを気にするし……だから行き遅れるのではないか?

――ぬわああああ、それを言うななのじゃぁぁ!

ラガーンマン。

仮面で正体も分からぬが、なかなかの実力者であるのは明らかなのじゃ。

声の感じからして、人間の年齢で十代前半とかそこら辺なのじゃ。

わらわにとっては色々と対象外だが、将来性を見込んで飼いならすのは面白そうなのじゃ。

あのハンター小僧と一緒に飼って調教してやりたい。

貴様はわらわの望みを叶えてくれるのか?

分からぬ。

だから確かめるのじゃ。

ぜっっったいに手に入れるのじゃ♡

「にはははは、おい! おぬしら、離れておれ! ちょっと暴れるのじゃ。巻き添え食らわぬようにな」

「「「承知しました!!」」」

「さて~、いくのじゃああああああ!」

この姿で暴れると、どうしても攻撃が広範囲になって、敵を蹂躙するには向いているが味方まで巻き込んでしまうからの。

特に、こやつのように尻尾を一本二本振り回すだけでは叩きのめせぬレベルの相手ではの。

「行くぞ、―――」

だが、それでもわらわが風林火山を発動させれば瞬殺なのじゃ。

風……九つの尾を高速で鞭のように振り回し、さらにはその余波で発生するカマイタチで周囲の全てを吹き飛ばす奥義。

火……九つの尾を一つに束ねて巨大ハンマーのように相手へ叩き落とす一撃必殺の奥義。

林……九つの尾を駆使してあらゆる攻撃を受け流す守備の技。

山……九つの尾でわらわの全身を覆い隠し、いかなる攻撃も通さぬ鉄壁バリア。

そんなわらわの究極奥義。破ったのは……大魔王様、バサラ、カグヤ、ミカド、あとは……あっ、結構いるかもしれぬ……しかし、こんな奴には負けぬのじゃ!

「疾きこと――――」

「ラガーングースステップ!」

「ん?」

わらわの風でこやつをズタズタにしてやろうと……こやつを逃げ回らせてジワジワいたぶって泣かせてお漏らしでもさせてやろう……と思ったのに、こやつはわらわが技を発動する前に、逃げるどころかわらわの足元に飛び込んできおったのじゃ……

「ふふん、飛び込んでくるとは無謀なのじゃ」

「へへ、さぁ、どうかな?」

こやつ……わらわのこの巨体相手にむしろ飛び込むとは、恐怖はないのか?

それとも狙ったか?

わらわのこの巨体での戦いは、足元でウロチョロされる小さな敵に対して小回りが利かないのでやりづらい。

そして何より、風林火山での攻撃は広範囲攻撃に適しているが、これほど近くで攻撃できぬ。下手したら尾の攻撃がわらわ自身に当たってしまって、自爆してしまうのじゃ。

「踏みつぶしてくれるのじゃ!」

こうなると、手足で踏みつぶしたり、爪で引き裂いたり……って、あっ! こやつは飼うから殺すのは……

「だいま……じゃなくて、ラガーンスプリットステップ!」

「ぬっ?!」

あっ、こやつわらわの前足での踏みつぶしを……軽やかに回避した?

スピードもなかなかだが……動きに無駄がなくキレがあるのじゃ! 反応も早いのじゃ。

「ウロチョロと……しかし、それでどうやってわらわを倒すのじゃ?」

いずれにせよ、多少ダメージを与えてでも動きを止めた方が良さそうなのじゃ。

これだけの動きをできるのなら、多少強めに攻撃しても、まぁ、死にはしないのじゃ。

むしろ、死にはせずとも、一生寝たきりにしてやって、脱がして剃って握ってアマガミとか、それはそれで弄りがいがありそうなのじゃ♡

「ほれほれ、一撃でも当たったら大惨事なのじゃ♡ わらわの爪で――――」

「ラガーンソニックファントムパンチ」

「ほぶッ!?」

―――なぬ?

いま、わらわが攻撃をした瞬間、わらわの顎に衝撃が……瞬間的に顎を引いたので特に問題ないが……どういうことなのじゃ?

死角から攻撃が?

「さすがに、こんなデカい奴にこの程度のカウンターじゃ何も無しか……」

「ッ!?」

「だが、当てる場所次第だな……」

ラガーンマンのやつ……カウンター?

わらわの攻撃に合わせ、拳から放つ衝撃波のカウンターを?

「ふん、何かしたのじゃ? 大した衝撃も無い。百発くらっても、わらわはイカぬのじゃ」

「じゃあ、千発入れてやるよ!」

「ぬっ、またウロチョロと……ええい、ウザったい! 踏みつぶして引き裂いてやるのじゃ!」

こやつ……分かっておるのじゃ。

この姿では攻撃力が大幅に増す。歩幅も大きいのでスピードにも長ける。

しかし、この巨体ゆえ、相手にとっては的が大きいということで、攻撃されたら結構当たってしまうのじゃ。

「ラガーンソニックフリッカーッ!」

「にははは、それがどうしたのじゃ!」

こやつ、今、間違いなくわらわの眼球目がけて攻撃してきたのじゃ!

それはまずい。目とか口の中に攻撃されたらわらわとて痛いのじゃ。

こやつはそれを分かったうえで戦ってるのじゃ。

「邪魔なハエは刻んでやるのじゃ! 疾きこ――――」

「距離は離さねえよ!」

「ぬっ……」

今、わらわがさり気に少し距離を取って風林火山をしようとした瞬間……いや、その前なのじゃ。

わらわが距離を取ろうと足を踏み込んだ瞬間、こやつは既にその先に回り込んでいたのじゃ……まるで、わらわがそうすると分かっていたかのように。

「にはははは、よく動くのじゃ……それほどわらわの風林火山が怖いのか?」

こやつ、わらわに風林火山を発動させぬ気か?

「くはははは、まさか天下の六覇が、それがなきゃ勝てねーなんて言わねぇよな?」

まだ戦闘開始から数秒しか経っておらぬが、これだけは分かるのじゃ。

こやつはわらわが何を嫌がるかを分かったうえで戦っているのじゃ。

こやつとは初対戦のはず。

しかし、わらわのことを知り尽くしているかのように戦い、何よりもその実行に恐怖や迷いを感じぬのじゃ。

自分が調べ上げたわらわの情報から対策を立てて実行しているのだろうが、その対策に「そこまで信頼」できるとは、よほどの自信なのじゃ。

「にはははは、そもそも負けるなどと思ったことないのじゃ」

言うだけのことはあるのじゃ。

最初想定していたよりも、ずっと強くて厄介なのじゃ。

とはいえ、わらわにとってこやつは……ちょっと戦いにくい……ただそれだけのことなのじゃ。

確かにこやつは普通ではないのじゃ。

大魔王様のブレイクスルーと類似した力を使う未知の存在。

ちょこまか動き回る足や、あの拳はなかなかのものなのじゃ。

しかし、これぐらいのパワー、スピードならば……七勇者共よりは……

「まっ、もう少し交わろうなのじゃ」

七勇者共よりは下……などと、決めつけるのはやはり早計なのじゃ。

まだまだこやつは全力を出していないのじゃ。

そして何よりも、こやつには「何か」があるのじゃ。

七勇者共とは違う、何かプラスアルファのようなものを感じるのじゃ。

「にははははは、さぁ、おいでおいで~、なのじゃ♡」

とにかく、更に興味を持ったのじゃ。

もうちょい遊んでみるのじゃ。

こやつの全てを引き出したうえで、飼ってやるのじゃ。

だから、早々に心折れてくれるなよな? ラガーンマンよ!