軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百九十一話 リスト

数日間の船旅を経て、今日中に目的地に到着する。

そこは現代でも訪れたことがある、十数年前の漁港。ゲンカーン港町。

「もうすぐだね、お兄ちゃん」

「ああ」

「着いたらどーするの? 私ね、ヒイロやマアムと会いたくない」

「そうだな。それは俺も同じだ」

俺の旅の目的はシソノータミ。

だが、今はフーの親父さんと旧魔王軍の連中がその地に調査目的で訪れていると聞き、遭遇しないように、その上で生活費を稼いだりするために漁港で働いたりした。

そして今回は、親父と母さんがシソノータミにいるとか。

正直今は競馬で大金を得たために金には困ってないが、それでもシソノータミで面倒な遭遇をするのだけは避けないとならない。

となると……

『まぁ、しばらくはまたキャンプでもし……修行の一環として経験値をあげるために、せっかくなのでハンターの仕事でもしてみるか?』

トレイナの提案。それはハンターの仕事をしてみないかというもの。

ホンイーボでは身分証明書を提示しないと登録できないということで、結局ハンターの仕事をすることはなかった。

しかし、今の俺ならば、パリピの偽造書類でできなくはない。偽名が気に入らないが……

「モンスター退治したり、宝探ししたりしながら、キャンプでもするか?」

「するするするー! カリー♪ カリー♪ カリ~♪」

とりあえず、エスピはそれでいいようで、むしろ嬉しいのかカリーの歌みたいなのを歌いだしてハシャいでいた。

だが、そんなエスピの様子に……

「ふっ……やれやれ……命懸けのハンターの仕事を甘く見て……やはり子供だね」

「むぅ?!」

スレイヤだった。

「なんか言った?」

「べつに……」

鼻で笑ったスレイヤに対して、ムッとした表情で詰め寄るエスピ。

相変わらずスレイヤに対しては沸点の低いエスピだが、スレイヤもスレイヤでそんな挑発しなくてもいいのにな。

つか、誰とも関わりたくないと言いつつ、俺らとは少しだけ離れた微妙な距離で立っていて、さっきから紙の束のようなものをパラパラ捲りながら、俺らをチラチラ見て様子を伺っているのに俺もトレイナも気付いていたけどな。

俺らのことが気になるのか? と聞いたら否定するだろうけど……

「あ~、スレイヤ、それは何を見てるんだ?」

「ふっ、あなたには関係ないものだよ。ただの、ハンターギルドで配られている、クエストリストさ」

「へ、へぇ~、そうなんだ。ちょっと見せてくれよ」

「は? 何であなたなんかに? 仕方ない。汚さないでくれよ?」

そして相変わらず、素直に教えてくれないようで、何だかんだでアッサリ教えてくれるという態度。

それに俺は苦笑しながら、その紙を覗き見る。

するとそのリストには、「素材集め」、「調査」、「モンスター退治」、「賞金首討伐」などといった項目のクエストが書かれており、絵なども書かれたり、既に終わっているものには斜線が引かれていたりした。

「あっ、この斜線……大海王イカ、お前が討伐したやつか」

「まぁね」

「へ~、ハンターってこういうのが配られるんだな……で、次はどいつを仕留めるんだ?」

「まだ決めてないさ」

ホンイーボではハンターに登録すらできなかったために、こういうものの存在すら知らなかった。

それはまるでこれからの冒険を自分で選べるようなリストにも見え、俺はちょっと楽しそうに思いながらリストを捲っていった。

そして……

「ん? 超高額……?」

俺はリストを捲っていて、それまでとは別枠のような扱いをされているリストを見つけて手が止まった。

「ああ、それは最高難度のクエストだよ。賞金が高額になるぶん、それだけ危険度も高く、これまで幾人ものハンターが命を落としている。君らのようなハンターのことを何も知らない素人がいきなり手を出すものじゃないさ」

「へぇ~、最高難度……ちなみに、あの大海王はどれぐらいなんだ? お前が討伐した大海王は」

「……も、もう少しすれば最高難度に入っていてもおかしくないぐらいの存在だったと思うけど……」

「なるほどな」

正直、俺としてもいくら修行の一環とはいえ、初っ端から最高難度で非常に危険なクエストをやる気はない。エスピもいるしな。

とはいえ、何となくどんなものが書いてあるのか興味は引かれる。

すると……

「ん? あっ……ヤミディレ……」

「え?」

「ん? ああ、それか……魔王軍の六覇だよ」

知っている顔と名前がそこにあったので、思わず手が止まってしまった。

なんと、ヤミディレが賞金リストに載っているとは……つか、戦争終わってから賞金首になったんじゃなくて、あいつは元々賞金首だったのな。というより解除されてないとか?

まぁ、戦争中だし人類が六覇に対して賞金つけるのも無理ねーか。

つか、よくよく考えてみればヤミディレが現代での世界最高額の賞金首だったわ。

つまり、アレが最高難度と考えれば色々な物差しにはなるな。

「ヤミディレ……ふ~ん……」

そして、流石にエスピもヤミディレの名前に反応。

流石に七勇者としては聞き流せない名前ではあるか。

スレイヤはそんな俺たちに溜息を吐きながら……

「どっちにしろ、君等にはそこら辺のクエストや賞金首に縁はないさ。中途半端に腕が立ったところで手を出せる存在じゃないさ。それこそ、七勇者クラスでないとね」

ここに七勇者いるけどな。

つか、スレイヤはエスピのことに何も気づいてないのか? つか、知らないのか?

まぁ、この甘えんぼの嫉妬チビッ娘がまさか七勇者だとは流石に思わないのも無理はないが……

「くははは、流石にこんな超有名人を狩らねえさ。つか、こいつだけは狩るわけにはいかねーしな……そもそも、実力的に狩れねぇけど」

歴史が変わっちまうしな。つか、将来的には義理の母になる可能性も? なんつってな……つか、そもそも今の俺でも勝てねーしな……トレイナの助力アリとはいえ、カクレテールでの戦いはヤミディレも俺を殺す気はなかったしな……

「他には……ん? パリピ……ライファント……ゴウダ……ノジャ……ハクキ……六覇の面々か」

知っている顔だったり、初めて見る顔だったり、いずれにせよ名前だけは全員教科書にのるレベルの連中ばかり……って、何だ、このけしからん格好の獣耳の幼女は!? これ、確か以前持っていた艶本にあったマイクロビキニアーマーとかいう……そういや、あの艶本だけはサディスに秒で処分されたっけな?

『ふふ……』

そしてトレイナも、こんな形ではあるけれど、かつての仲間であり部下だった連中の顔を見て、少し嬉しいのか目を細めて懐かしがっている。

まぁ、ヤミディレ同様にこいつら全員に会うわけにはいかねーけどな。

そう……会うわけにはいかねーんだけどな……いや……会うわけにはいかなかったんだけどな……ヤミディレ以外の六覇とも……

なのに……

「お、おい! 見てみろよ、ゲンカーンが……なんか変だぞ!!」

「「「??」」」

そのとき、マストの上の見張り台に居た船乗りの一人が望遠鏡を覗きながら大声をあげた。

「ゲンカーンから……街の至る所から煙が上がっているぞ!!」

俺が望むも望まないも関係なく、今はそういう時代なのだ。

そう、何が起こってもおかしくない、戦国時代なんだ。