軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十五話 想い

ウォーミングアップで息が上がり、そして頭が疲れてきた。

ステップは素早くリズミカルにできても、魔法がうまく使えない。

魔法に集中したら、ステップが乱れる。

二つのことを同時にやるってのが、こんなに難しいことだとは思わなかったぜ。

「ぜぇ、ぜぇ……」

『どうした? この程度で息が上がっているようでは……やはり、甘やかされて育てられているな』

「うぐっ! ぐっ……もう一度だ!」

『ふっ、風のクロスオーバーステップ』

「ぬおおおっ!」

『肩に力が入り過ぎだ』

しかし、これに慣れていかなくちゃならねえ。俺がこれ以上強く、そして親父とは関係ない自分のスタイルを見つけるためには。

『それでは、乳房には辿り着けんな』

「っ!? うおおおおお、まだまだぁァ!」

疲れた時こそモチベーション! そう、オッパベーションだ!

知らなかった。それだけでまだまだ俺はやれる気になり、心も折れねえ!

『そうだ。しかしやる気を出すのは良いことだが、雑になっている。疲れているときにこそ、正しいステップ、正しい魔法を的確にできるようにしろ』

やってやる! いや、ヤッてやる! サディスのオッパイ揉んでやる! 挟まってやる! す、吸っ……ぐへへへへへ……!

俺はやればできる子……いや、ヤルためならできる子になるんだからな!

「……随分と気合を入れて変わった遊びをしておりますね……坊ちゃま」

「うおっ!?」

と、あまりにも集中しすぎていて、サディスの気配に気づかなかった。

サディスはジーっと俺のラダートレーニングを見て、少し呆れ……いや……

「……しかし……ふむ……これは……案外……」

最初は呆れていたが、すぐに表情がどこか感心し興味深そうに……

「坊ちゃま。この遊び……いえ、鍛錬法は坊ちゃまが考えられたのですか?」

「え……いや……これは……」

流石はサディス。一見マヌケなこの訓練も、色々と効果があることをすぐに分かったようだ。

とはいえ、俺が考えたわけではないが……本当のことを言えるわけじゃないし……ここは……

「そうだな。全知全能の御方が俺にお告げをしてくれた……かな?」

「……?」

まっ、嘘は言ってない。サディスは俺の言葉を分からないようで、首を傾げている。

そして、俺の傍らでトレイナはちょっとドヤ顔している。

「まぁ、よいです。それより……ご要望のありました、献立スケジュールをお持ちしました。とりあえず、今月分です」

「あ、おお……」

サディスが一枚の紙を渡してきた。それは、俺が聞いていた俺のメシに関する献立スケジュール。

今日からはトレイナがそれもチェックするって言ってたんだった。

「では、何かご要望がありましたら、仰ってください。好き嫌いについては無視しますが」

「お、おお、ありがとな」

「はい。引き続き、頑張ってください」

そう言って、あまりラダーについては深く追求せずに屋敷へ戻っていくサディス。

そんなサディスから手渡された今日からの献立スケジュールを開くと、トレイナも覗いてきて……

『ほ~う……』

と、感心深そうに頷いてきた。

『見事だな。豊富なメニューだ』

そう言って、サディスの献立を褒めた。それが俺も少し誇らしかった。

「ああ。サディスは色んな料理を作れて、それが全部ウメーんだよ……家事完璧で、しかも美人で……やべえ、本当に結婚するしかねえ」

『いや、そっちではない』

「ん?」

『甘やかされて育った金持ちの息子だから、贅沢な高級食材でも毎日食べているのかと思ったが、そうではないなと思ったのだ』

すると、トレイナはジッと献立スケジュールを見ながら言葉の意味を教えて来る。

『タンパク質、ビタミンやミネラル、さらに糖質、脂質と、よく考えられた見事なバランスメニューだ……しかも、飽きたり、同じものばかりが続かないよう、様々なメニューになっている』

「そ、そう……なのか?」

『ああ。特に貴様のような成長期で体が作られる大事な時期に合わせている。とてもよく、貴様の体づくりや健康のことを第一に考えられている』

それは、俺がいつも何も気にせず、ただ「ウメーウメー」と言いながら当たり前のように食っているだけのメシのこと。

しかし、今、トレイナがそう教えてくれたことで、俺は……

『献立スケジュールを見るだけで……これを考え、そして作っている者は……よほど貴様のことを大切に思っているのだと伝わってくるというものだ』

胸が熱くなった。

それこそ、何年もずっと……サディスは……

「サディスはさ……俺が生まれる前……まだ、3歳ぐらいのころに……魔王軍との戦争で、両親が死んで……自分も殺されるってところで、駆け付けた俺の母さんが助けたんだって」

『……七勇者……マアムか?』

「ああ。で、母さんもサディスのことは孤児院に預けようとしてたんだけど……何だかそのまま引き取ってさ、自分の妹……娘みたいな感じで一緒に居たんだって」

『そうか……』

「で、戦争が終わって、サディスはアカデミーを優秀な成績で卒業して戦士の資格も持ってんだけど……母さんへの恩があるのか、この屋敷に残って俺専属のメイドになってくれて……だから、サディスは俺のことも……本当の弟みたいにさ……」

俺には兄弟は居ないけど……姉ちゃんが居るってのは……多分あんな……

「親父は戦士長としてスゲー忙しくて……母さんも色々な国を回ってることが多くて……二人とも家に居ないことが多くて……だから……サディスだけなのかもな……俺と一番……小さいころからずっと一緒に居てくれたのは……」

母親代わり、姉代わり。血の繋がりはないけど、俺は本当にそう思ってたし、そして今ではもっと……俺は欲してるし……それに……

『ふん。人間の恋愛とやらはよく分からんが……なかなか初々しいな。性欲の対象としてではなく、純粋な想いも抱いているのだな』

と、冷やかすように俺に告げるトレイナに俺は気恥ずかしさを感じた。

だが、トレイナは……

『なら、褒美としての乳房だけではなく……御前試合で……貴様のカッコイイところを見せつけたり……これまで自分を大切にし、育んだ女に対しての感謝を示す気持ちで戦うことだな』

そう言って、俺のモチベーションとやらを更に上げてくれた。

俺はそれを聞いて更にやる気が漲ると同時に……

「なあ、トレイナ」

『なんだ?』

「あんた、ほんとに恐怖の大魔王か?」

『貴様ァ、余を愚弄する気か!』

なんだか、おかしな気持ちが芽生えているような気がした。