軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百五十四話 祝福

「サディスさんだけじゃなく、僕たちも行こう!」

「おらぁ、アース! やったな! ったく、男泣きか?」

気づいたら、サディスに続いてモトリアージュたちも闘技場になだれ込んできて、みんなで俺をモミクチャにした。

ってヤベエ、涙……

「アースくん……泣いて……」

「アースくんも泣くぐらい嬉しいってことなんだな?」

皆が駆け寄ってきて、俺は慌てて涙を拭う。

「べ、別に、泣いてねぇよ! ちょっと目にゴミが……」

「「「「いやいやいやいや、号泣だし」」」」

「うるせー、ちっ、見てんじゃねーよ!」

目が赤くなってるから誤魔化せるもんじゃねぇが。

「うおーい! あんちゃん、やべーっす! っべー、まじやっべーっす! あんちゃんの男泣きもいただきました!」

「だから泣いてねーよ、畜生!」

まあ、泣いている所を見られてしまったものの、そこまで恥ずかしさは感じなかった。

人生最良の日と呼んでいいのかあれだけど、素直に今は嬉しかった。

「マチョウさん、大丈夫かな?」

「ああ。むしろ今は清々しい……」

「そう、でも無理はもうしないで欲しいかな」

「……心配……かけた」

「ほんとかな!」

命をすり減らすリスクのある力を振るったマチョウさんも、手当は必要ではあるが、支障はなさそうだ。

ツクシの姉さんたちに介抱されて、今は体を休めている。

「オジサン……」

「アマエ?」

「……ギュッ」

「おっと……なんだ? 慰めてくれているのか? アマエ」

「……おにーちゃんも……オジサンも……二人ともかっこよかった」

「そうか。なら、ちゃんとアースにもそう言ってあげるんだぞ?」

「ん!」

戦いは終わった。

顔見知りだけじゃなく、俺とマチョウさん両方を称える声が響き、俺はちょっと恥ずかしいけど手を振って応えた。

すると……

「おい、まだ神聖なる大会の表彰が終わってないのだぞ?」

「まぁ! ずるいですー! 私もアースとマチョウを称えたいのに、皆さんだけ先なんて、私もしますー!」

「こほん。クロン様」

闘技場で俺とマチョウさんが多くの連中に囲まれている中、ヤミディレとクロンが降りてきた。

ヤミディレは苦笑し、クロンはちょっとむくれている。

「……サディス……とりあえず」

「……分かりました」

記憶を取り戻したサディスは、当然ヤミディレのことを旧六覇ということを思い出している。

しかし、今はこの場では何もしないよう、俺とアイコンタクトして頷いた。

「さて、静まれ! これより、魔極真流闘技大会の優勝者に、女神様より祝福の御言葉と表彰を!」

お祭りのようにガヤガヤしていた闘技場も、ヤミディレの言葉で少し落ち着きだし、そしてクロンが俺の前に立つ。

「皆さん、お疲れ様です。この大会は皆さん、と~~っても、頑張りました! 勝てなかった人も、勝った人も、すごかったです!」

まるで子供のように興奮しながら話すクロンに、微笑ましかったり、苦笑したりする。

「そして、そんな頑張った皆さんの中で一番になったアース。本当にかっこよかったです」

「ああ。……ありがと……」

「そんなアースには、優勝のトロフィーを贈ります!」

トロフィー? そういえば、俺はこれまで「銀メダル」、「銅メダル」、「入賞トロフィー」とかそういうのは貰ったことあったが、優勝トロフィーだけは貰ったことなかったな。

デケーのかな? あっ、でも旅をするなら荷物になるし……

「はい、アース! おめでとうございます!」

「ぶほぉッ!!??」

『ぬおッ!?』

「ッ!?」

クロンがニコニコしながら俺に差し出してきた大きめの優勝トロフィー。

それを見て、俺、トレイナ、そしてサディスが噴出した。

なぜならそのトロフィーには……

「は……ははは……」

『く、ぐっ……ヤミディレめ……ぬうおおお、なんだこの辱めは!?』

金ぴかに輝くそのトロフィーは人の形をしていた。

俺の隣に居る師匠……トレイナが背中から翼を生やし、腰に左手を置いて、右足を四角い台の上に乗せ、右の人差し指を天に向かって突き出して、さらにその頭には王冠をしている像だ。

絶対ヤミディレがデザインしただろ、これ。

まぁ、サディスからすれば当然笑えない像ではあるだろうが、すまん。俺は普通に笑ってしまった。

そして、これ、旅に持っていけないな……いろいろと危ない。

とはいえ、人生初の優勝で貰うトロフィーだから、手放したくもない。

にしても……人生初の優勝トロフィーが……トレイナの像って……なんか、奇妙な縁があるもんだ。

「アース」

「ん?」

「頑張って……欲しかったものは、手に入りましたか?」

その時、微笑みながら問いかけるクロンのその言葉に、俺は以前クロンに浜辺で聞かれたことを思い出した。

――アースは何で頑張っているんですか?

――強くなるためだ

あのとき、迷わずそう言った。だけど、クロンは俺の本心をお見通しだった。

――アースは……うそつきですね

――はっ?

――だって、それだけではないのでしょう?

そうだった……

――アースが本当に欲しいものは、強さだけじゃなく、もっと別のものなのだと思います。それは、サディスにも関係のあることなのでしょうね

あの時からこいつは分かっていたんだ。

「ああ。今……まさに」

「そうですか! よかったです!」

俺も色々と感慨深くなりながら、素直に頷いた。

「どうぞ、アース! ほんと~に、お疲れ様です」

「ああ。ありがたく」

「アースがかっこよくて……すごくて……私、とってもドキドキしました!」

「あ、お、おお……どうも」

重そうにしながらクロンから手渡されたそのトロフィー。

確かに、そこそこ重かった。

普通に純金製だ。結構、高価なんだと思う。

でも、どうしてだろうな。

重さ以上の、重さを感じる。

「……へへ……」

これが、自分が成し遂げたことで得られた形あるもの。

今日俺が優勝したということを、紛れもない事実として証明するものだ。

「う、お……うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

気付いたら、俺はトロフィーを掲げて大声で叫んだ。

すると、それに呼応して皆も歓声と同時に、再び盛大な拍手を俺に贈ってくれた。

その中には、マチョウさんも、そして大会に出場した他の連中たちも居た。……ヨーセイは居ないが。

そして、トロフィーの形がトレイナであることにサディスも複雑ではあるかもしれないが、それでも俺に拍手を贈ってくれた。

「また、賞金は後日手配する。さらに副賞も勝者であるアース・ラガンには今夜にでも贈り届けられるので、ちゃんと身を清……とにかく、待っているがよい。そして、近々国民にも発表する予定だ」

「「「「「????」」」」」

「とにかく、これにて魔極真流闘技大会を閉幕とする! 解散!」

「「「「「お……ウオオオオオオ!!!!」」」」」

ヤミディレの副賞の話。ほとんどの者が「ソレ」を理解できずに首を傾げているが、一部の事情を知るシスターたちは苦笑したり、顔を赤らめたりしている。

サディスは事情を知らずに「?」となっている。

クロンに至ってはニコニコと特に変化ないが、正直内心を読み取ることが出来ない。

でも、やっぱ……コレ……アレなんだろうか?

トレイナが言っていた通り……ヤミディレの狙いは……でも、その割にはクロンがあまりにも普通過ぎるような……いや、こいつはこういう奴なのかもしれないけど……

「よし、今日はお祝いだね、アースくん!」

「おらぁ! 今日は騒ごうぜ!」

「うん! うん!」

「そうなんだな!」

と、解散と同時にモトリアージュたちが俺の肩を組んで笑った。

確かに今日ぐらい……

「くはははは、おう。祝ってくれ!」

これぐらいは……と俺も思い、笑った。

「そうだね。よし、今日はお姉さんがいっぱいご馳走作るかな! マチョウさんも来てほしいかな!」

「ああ。お呼ばれしよう」

「うんうん! それに……マチョウさんが優勝じゃなくて本当に良かったというか何というか……アース君には本当に感謝かな」

「?」

そして、優勝の副賞を知っているからこそ、ツクシの姉さんも心からホッとしているというか……つか、俺ならいいのかよとツッコミたい気もするが……

「おねーちゃん! アマエも! アマエも今日お手伝いする! するの! お料理するの!」

「うん、もちろんかな!」

俺とマチョウさんのためか、張り切るアマエ。

そして、アマエは俺の所までトコトコ駆け寄ってきて……

「おにーちゃん」

「おう」

「かっこ……よかったよ」

「ああ。応援ありがとな」

「ッ!? んふー! うん! きゃっほーい!」

頭を撫でてお礼を言ってやると、アマエは二コッと笑って俺の周りを嬉しそうに走り回る。

あ~もう、かわいいなお前!

「おんや~、アマエ~、張り切ってるね~。っていうか、あんちゃん! そういえば、私との特訓で編み出した『あの技』は!?」

「ん? お、おお……アレか?」

「そうっすよ! つか、私も忘れてたけど、特訓に付き合った私の苦労は何だったんすかー!?」

「い、いや、マチョウさんに追い詰められてアレを使う余裕がなかったというか……」

そして、すまん、カルイ。『あの技』を使う状況じゃなかった。

「さて、クロン様。一度戻りましょう」

「え~、私も皆さんとお話ししたいです~」

「いえ、今日は色々と準備もありますので」

「むう~」

この場の用事が終わり、クロンの手を引いてそそくさと立ち去るヤミディレ。

結局のところ、真相は分からぬまま行ってしまった。

まぁ、それも今夜にでも分かる事なのだが。

だが、その前にまず……

どうしてもやっておかないといけないことが、一つだけある。