軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

98 獣王国ビーグル

獣王国ビーグル、ビーグル子爵領がロイター王国から独立して建国した国だ。

当初、ロイター王国はこの独立を静観していた。魔王国ブライトンとルータス王国が独立を支援すると表明したこともあり、ルータス王国との関係改善を模索していた当時のロイター王国は、静観するより他になかったのだろう。

しかしここに来て、ロイター王国はきな臭い動きを見せている。

ロイター王国の王都から馬車で2日の距離にあるメサレムという町にどうも兵力を集めているようなのだ。ネスカが言う。

「こんなことなら、変に温情を掛けるんじゃなかったよ。どこまであの国は馬鹿なんだ・・・」

ネスカがそう思うのも、無理もない。

ロイター王国は、小国家群ともルータス王国とも取引停止状態だ。長年に渡って支援金をせしめていたのだから、当然の措置だろう。各国に謝罪し、賠償金を払うなりして、許しを請うのが筋だろうが、そうはしなかった。

ネスカが言うには、追い込み過ぎると何をしでかすか分からないので、外貨を獲得できる手段を暗に提示したのだった。それは私が論文として発表しているヤスダ研究にも関係するのだが、メサレムを聖地にしたのだ。ヤスダやブライトン王の手記によると、このメサレムの地で預言者マイモッダとヤスダが別れたことになっている。その地では大きなお祭りを開き、ヤスダはブライトンとともに魔族領に戻ったのだ。「最後の晩餐」として聖書にも記載されているのだが、その場所が長年判然としなかった。

私の論文を元にして、メサレムの地を詳しく調査したところ、数々の証拠が発見され、メサレムの教会で龍核と思われる大きな魔石も発見された。これはブライトン王がお礼の品としてマイモッダに渡したとされているものだ。

これで多くの巡礼者がメサレムの地にやって来るようになった。そうなると巡礼者がお金を落としてくれるので、外貨が獲得できる。それで稼いだ資金で少ないながらでも返済していけばいいと考えたのだが、このロイター王国という国は違っていた。急発展する獣王国ビーグルの富を奪ってやろうと軍備を増強し始めたのだ。

しかも巧妙なやり方でだ。

ロイター王国が頼ったのは神聖ラドリア帝国だった。

神聖ラドリア帝国といえども表立ってロイター王国を支援することはできない。なぜなら獣王国ビーグルを支援するとルータス王国と魔王国ブライトンが表明しているからだ。そこで神聖ラドリア帝国は、巡礼者を利用することにした。巡礼者に正規軍を紛れ込ませ、巡礼者を先導し、獣王国ビーグルに攻め込ませようと画策している。

これならば、何かあっても一部の過激な信者が勝手に暴走したと言い逃れができる。神聖ラドリア帝国としては、獣王国ビーグルを占領できるとは思っていないだろうが、こちら側の陣営に打撃を与えられるくらいには思っているだろう。相当数の正規軍を巡礼者に紛れ込ませている。そして、巡礼者の先導役というのが・・・

「アイツか・・・胸は復活してないようだけど・・・」

そう、自称聖女のアイリーンなのだ。

諜報員が巡礼者に紛れ込み、ロキ特製のポラロイドカメラで撮影し、その画像を確認したが間違いなかった。

諜報員が言うには、アイリーンは巡礼者を前にして、このように演説していたそうだ。

『ヤスダ様を奪い去った不届き者の末裔がその地にいるのです!!総力を結集して、不届き者たちに天罰を!!』

言っていることは無茶苦茶だが、妙に説得力だけはあったそうだ。

アイリーンの論理としては、ヤスダはブライトン王に「一緒に帰らなければマイモッダたちの命はない」と脅され、泣く泣く一緒に帰ったというストーリーだった。もちろん大噓なのだが、これを信じてしまっている人たちに嘘だと証明するのは、非常に難しい。

私はネスカに尋ねる。

「いくら戦力を集めたとしても、獣王国ビーグルを攻め落とすのは難しいんじゃないの?私たち陣営に打撃を与えるにしても、もっとやり方があるような気はするけど・・・」

「それは僕もそう思う。だが、もしかしたら、巡礼者たちを犠牲にしようとしているんじゃないかな?」

ネスカが言うには、戦争となり、私たちが勝ったとしても、巡礼者が虐殺されたということにして、今度は正規軍を堂々と送りこんでくるかもしれないとのことだった。

「それが本当だと、呆れて物も言えないわね」

「まだ確実ではないから、一度、獣王国ビーグルの様子を見に行ってみよう。かなり発展しているようだからね。それに鉄道が開通したからすぐだし」

★★★

私たちは獣王国ビーグルに向かっていた。同行するのは、ネスカ、エスカトーレ様、レニーナ様、ミリア、ゴンザレスにレベッカさんとガルフさんだ。ガルフさんは獣王国ビーグルに行くので、いつものマスクは外している。

なぜこのメンバーになったかというと、まずエスカトーレ様だが、派閥のメンバーと会合する予定だという。学生時代、西辺境伯令嬢だったロザンナ様が東辺境伯令息であるボーギャン様と結婚されているので、久しぶりに旧交を温めるためだそうだ。学生時代は別派閥だったが、勇者パーティーの事件があって、一緒の派閥になったのは皮肉なものだ。

レニーナ様は、ベルシティで教師をしている。イカルス教官も同じだ。というのもイカルス教官はダークエルフにも興味があるみたいで、こちらにやって来たのだ。近いうちにダークエルフの里に連れて行きたいと思っている。今回レニーナ様も派閥の関係でエスカトーレ様と行動を共にするようだ。

そして、レベッカさんとミリア、ゴンザレスは獣王国ビーグルに冒険者ギルドが設置できるかを調査しに行くという名目らしい。

ベルシティを出て、2日で獣王国ビーグルに着いた。鉄道だと、あっという間だ。

魔道列車から降りると、ビーグル王とライオ王子、ライガ王子が出迎えてくれた。そして、ルルとロロも。

「クララ大臣!!お久しぶりですニャ」

「今幸せなのも、すべて皆さんのお陰ニャ」

ルルとロロは私の護衛兼秘書から外れ、獣王国ビーグルに移住している。理由は、将来の王妃候補だからだ。ネスカが取り持って、上手くいったらしい。

「ルルとロロも久しぶり!!ベルシティの近くの湖でサマスがいっぱい獲れるから、サマス缶を持ってきたよ!!」

二人は大喜びだった。

旧交を温め合った後に領主館に案内された。ビーグル王が言う。

「ロイター王国の話は聞いている。こちらも諜報員を派遣しているが、すぐに行動を起こしそうにはないようだ。まあ、詳しい話は明日だ。町でも見ながら話をしよう」

その後、宴が始まり、夜も更けて行った。ビーグル王の言うとおり、そこまで、切迫した事態ではなくて、少し安心した。