軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

53 スパイクララ

次の日、ネスカとともにアイリーンの侍女である女性二人に接触する。

その二人も修道服を着ているのだが、ベールで顔を覆っているので、目しか見えていない。ネスカが言うには、身のこなしから武術の達人だという。

「ウチの実家は食堂も営んでまして、一度食べに来てもらえませんか?美味しいですよ。初回は無料に・・・」

話し掛けたが無視された。ネスカも続いて話し掛けたが、これも無視されてしまった。そんなことが3日ほど続いた。

そんなとき、ネスカが言う。

「このままでは埒が明かないな。ゴンザレスを利用することにしよう」

ということで、やって来たのは冒険者ギルドだ。

レベッカさんからゴンザレスに指示をしてもらうことにしたのだ。簡単にレベッカさんにも事情を説明する。

「なるほどな、クララ嬢たちが不審に思うのも理解できる。私や父上も、なぜこの時期に留学生を受け入れたのか、分からないのだ。少し前に大量に不正を働いていた者が検挙されたが、まだ残党がいて、何かよからぬことを企んでいるのかもしれんな・・・

まあいい、その話は受けよう。それと一つ質問をする。ネスカ殿、なぜ貴殿がそこまで肩入れするのだ?」

「ロイター王国の為です・・・・これでは納得がいきませんか?あまり大きな声では言えませんが、宗教絡みです。察してくださると助かるのですが・・・」

「それは貴殿の出自と関係があるということか?」

レベッカさんは訳知り顔で尋ねた。何かネスカのことで情報を掴んでいるのかもしれない。

「もちろんですよ。養父には感謝してますし、領地に多くの友人や大切な人がいますからね」

「分かった。貴殿を信じよう。しかし、少しでもおかしなことをすれば、容赦はせんぞ」

ネスカに何か秘密があるのだろうけど、触れないことにした。ネスカが話したくなるまで待つのが友達というものだ。

★★★

そして次の日、ゴンザレスを伴って三人でアイリーンたちに接触する。ゴンザレスがアイリーンに話し掛ける。

「こちらのネスカとクララがそちらの侍女たちと交流を持ちたいそうだ。ネスカもクララもアイリーンに相手にされないと思い、少しでも覚えをよくしたいらしい。ネスカはロイター王国のため、クララはベル商会の今後のためだ。アイリーンからも侍女たちに仲良くするように言ってくれないか?」

いきなり直球!?ゴンザレスらしいと言えばそうだが・・・

私とネスカの目的を言っちゃっているよ。まあ、少し違うんだけど。

「そうですか・・・小賢しい方が考えることは、浅はかですわね。別に私は構いませんが、こちらの二人は「無言の行」という何があっても声を出してはいけない修行をしています。それでもいいのなら止めはしませんがね。ところで、具体的に何をするんですか?」

喋ったらダメなのか・・・でもここで、「じゃあいいです」とは言えない。

「早速お昼でもどうですか?今日は我がベル商会の屋台が来るんですよ。安くて美味しいラーメンが食べられますし、屋台を営業しているのは孤児院の子たちで、社会貢献にも・・・」

言い掛けたところで、アイリーンに遮られる。

「そんな下賤な物は口に合いません。ゴンザレス様、私たちは食堂で食べましょう」

「俺はラーメンを食うぞ。旨いんだ。今日は姉上からお小遣いをもらったから、みんなに奢ってやるぞ。トッピングも好きに乗せていいぞ!!」

アイリーンは呆気に取られている。まあ、ゴンザレスはこういう奴だからね。貴族とは思えない。

「もういいです。私は失礼させていただきます。貴方たちは好きにしなさい」

そう言うとアイリーンは侍女二人を置いて、怒って立ち去ってしまった。

後で聞いた話だが、ゴンザレスがレベッカさんから貰ったのは、お小遣いではなく活動費だったそうだ。工作活動にはお金が必要になるので持たせたというが、ゴンザレスは理解していなかったようだ。

結局、私、ネスカ、ゴンザレス、侍女二人でラーメンを食べることになったのだが、侍女二人は喋らないけど、美味しそうに食べていた。そして、食べ終わると私たちに一礼をして去って行った。

それからちょくちょく、侍女二人とは食事をするようになる。ベル食堂にも来てくれることも多くなる。エスカトーレ様並みに食べるし、費用はエスカトーレ様やゴンザレスが出してくれるので、お母様も喜んでいる。最近では口には出さないが、この食事会を楽しみにしているようだった。

今日は、いつものメンバーも集まって侍女二人と食事会をしている。ミリアが言う。

「でも侍女さんたちは、お魚が好きなんですね。白身魚フライ定食と焼き魚定食を食べてますしね。前は二人で煮魚定食だったし・・・」

侍女二人は二人揃って親指を突き立てた。「はい」という意味だ。喋らなくても何とかコミュニケーションが取れている。

そこにお母様がやって来た。

「魚が好きなら、サバル缶とマグツナ缶をお土産に持って帰りな。どちらも美味しいよ」

しばらくして、ホールスタッフが缶詰を持ってきたのだが、侍女二人はキョトンとしていた。多分、初めて見るので、食べ方が分からないのだろう。仕方なく私が缶切りで缶を開けて、二人の前に置いた。すると二人はあっという間に食べ尽くしてしまった。

「気に入ってくれたようだね」

ゴンザレスが言う。

「ムーサさん、あるだけ持ってきてくれ。最近、お姉様がお小遣いをいっぱいくれるから、缶詰代は俺が出す。好きなだけ持って帰ってくれ」

ゴンザレス、それは活動費なんだけどな・・・

レベッカさんには、ゴンザレスから領収証を必ず提出させるように言っておこう。

侍女二人はというと、帰り際に何度も頭を下げていた。

侍女が帰った後、いつものメンバーで話し合う。

レニーナ様が言う。

「彼女たちが魚が好きという以外、情報を得られていませんね。この活動は意味があるのでしょうか?」

ゴンザレスが反応する。

「二人が美味しそうに食べているのだから、それでいいじゃないか。それ以外に何がある?」

あり過ぎるだろうが!!

ネスカが言う。

「工作活動は一朝一夕にはできないと聞きます。根気強くやって行けばいいんじゃないでしょうか?それに侍女の二人は、我々に好意的だとは思いますしね」

それは私もそう思う。アイリーンの態度は理解できないが、侍女二人は喋らないだけで、悪い人ではないような気がする。

ミリアも意見を言う。

「でも、向こうもスパイかもしれないわよ。「情報を取って来い」って言われてるかも?」

ネスカが答える。

「こちらに取られて困るような情報はないと思います。ベル食堂のレシピは盗まれているかもしれませんがね・・・」

「ネスカさんの言う通りです。多少のリスクは覚悟の上ですしね。このまま活動を続けていきましょう」

エスカトーレ様がそう言って、会はお開きになった。

それから一週間後、私たちは衝撃の事実を知ることになる。