軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

4 プレゼン 1

1週間で、必要な物資を買い込んだ。今のところ、大きな値上がりはしていない。戦争はしてほしくないけど、儲けのことを考えると・・・・少し複雑な気持ちだ。一応リスク管理として、戦争が起こらなかった場合の戦略も提案している。それでも微々たるものだが、黒字にはなる。

帳簿を整理しているとお父様が声を掛けて来た。

「これから冒険者ギルドに行こう。ギルマスに話を通そうと思ってね。一緒に来て、サポートしてくれるかい?」

「もちろんよ」

私は少しウキウキしていた。だって、初めての冒険者ギルドだからね。

冒険者ギルドに入ると大勢の冒険者が居た。大きな大剣を背負った屈強な獣人や弓を持ったエルフ、いかにも魔導士って感じの女性などを見ると興奮を抑えきれない。

私も魔法とか使って戦ってみたかったな・・・・

だが、前世と同様、私は運動神経というものが存在しないようで、魔法も使えない私に冒険者の選択肢はなかった。

ギルドの受付で、お父様が用件を伝えるとすぐにギルドマスターの部屋に案内された。ギルマスというくらいだから、屈強な男の人を想像していたが、実際は赤髪のショートカット、男装の麗人と言った感じの20代半ばに見える女性がギルマスだった。

「久しぶりだねシャイロ、そちらは噂のクララ嬢かな?初めまして、ギルマスのレベッカだ。気安くレベッカと呼んでくれ」

「初めまして、クララ・ベルと申します」

後で聞いた話だが、このレベッカさんは伯爵家の令嬢で、Sランク冒険者らしい。冒険者は一般的にA~Fの等級に分けられている。Aランクより上のSランクの冒険者はごくごく少数だそうだ。つまり、凄い強い人のようだ。二つ名は「赤い稲妻」らしい。

「早速だが、用件を聞こう。これでも多忙な身だからね」

「では説明をさせていただきます・・・」

お父様が説明を始める。資料を見せながら、戦争が起きる理由や前回の教訓を生かし、冒険者の死亡率を下げるため、今から物資の購入を始めるべきだと主張する。

「にわかに信じがたい。ベル商会に限って、不用品を売りつけようとは思っていないだろうが・・・」

「クララ、資料の説明をして差し上げなさい。5年前の資料と併せてね」

「分かりました」

私は用意してきたグラフ、特に冒険者の死亡率を中心に話を始める。冒険者の立場に立ったプレゼンだ。「こちらとしては、商品を買って欲しい」、しかし、ギルマスの立場に立つと「冒険者を死なせたくない」になる。この目的のズレが商談が上手くいかない原因だとOL時代の研修で習った気がする。まあ、一度として、実践することはなかったけどね・・・

「つまり戦争が始まり、出動命令が出てからでは遅いのです。私はお得意様の冒険者を死なせたくはないのです」

「クララ嬢の気持ちは有難い・・・だが・・・戦争が起こると、どうして言いきれる?」

「こちらの資料をご覧ください。5年前の資料によると今回の資料と同じグラフの波形になっています。戦地となるロイター王国の大商会が、気付かれないように買占めを行っている証拠です。我がルータス王国では目立った値上がりを見せてませんが、ロイター王国の商会関係者が多く相場に出入りしているようで、食料品や鉄製品を買い込んでいるのです」

しばらく悩んだレベッカさんは言う。

「こちらとしても、少し変わった情報を入手していてね。ロイター王国での魔物の発生分布が大きく変わったようなんだ。クララ嬢は資料の分析が得意なようだから、少し分析をしてみてくれ。その間にシャイロと、もし戦争が起こったらという仮定に基づいて、購入物品の見積もりの話をするよ」

それから2時間程、私は案内された資料室で渡された資料を分析することになった。

★★★

間違いない・・・この資料からも戦争が起こることは確実だ。

私は「資料作成」のスキルを使って、ざっくりとしたプレゼン資料を作成した。それを手にギルマスの部屋に戻った。そして、お父様とレベッカさんに資料を提示した。レベッカさんは驚愕の表情を浮かべる。

「も、もうできたのか・・・」

「はい。では説明させていただきますね。まず、明らかにレッサーモンキーとグラスウルフの発生報告が異常に増えています。前年比で言うと約3倍、これは付近の森で大量に木の伐採をしていることが想像できます。木材も大きな戦略物資ですよね?」

「そのとおりだ。この短期間でこの分析力。クララ嬢、将来はギルドに務める気はないかね?」

「レベッカ様、お戯れを・・・クララはベル商会を背負って立つ子ですからね。いくらレベッカ様でもクララは渡しませんよ」

「それはそうだろうな。私でもそうするだろう。冗談と思ってくれ。それはそうと相場情報だけでなく、魔物の発生分布からも戦争の可能性は高いとなると・・・気乗りはしないが、実家を頼るかな」

そう言うとレベッカさんは、少し考えた後にこう言った。

「私の実家のドナルド家に話を通そうと思う。そこでだ。クララ嬢に正式に依頼を出そう。依頼は資料作成だ。実家の者に説明する資料を作ってほしい」

ただ、お父様について来ただけなのに、冒険者でもない私が、依頼を受けてしまった。

★★★

依頼の期限は3日、持ち出し禁止の資料なのでギルド内で作業をすることを条件に依頼を受けることになった。お父様もすぐに許可を出してくれた。朝にお父様に送ってもらい、帰りはお母様に迎えに来てもらう。実際、資料をまとめるのに1日と掛からなかった。だって、ベル商会の資料とギルドの資料をまとめるだけだからね。

ただ、誤算だったのは3日契約なので、空いた時間にこれでもかというくらい、ギルドの雑用をさせられた。資料整理から帳簿の整理まで・・・部外者の私にお金の流れなんて、見せていいものだろうか?

そして、一番喜ばれたのは定型書式の作成だった。

依頼書も要望書の類も定型書式はなく、文章を最後まで読まなければ理解できない。私のように「速読」スキルがあればいいのだが、そうでない職員は地獄だろう。なので、定型書式を作成し、簡単なチェック方法も指導した。

ここでもギルドの事務長からスカウトされた。私はこの世界では、何気に優秀な事務員なのかもしれない。