軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

129 雑用係と雑用係

私はピサロに対して、失敗した原因を示した。

「・・・つまり、目的が国民の生活を守ることで、手段として戦闘や工作、結果として領土の拡大だったのが、いつの間にか領土の拡大が目的になってしまったのが原因だと思われます」

「そうだろうね・・・それは薄々気付いていた。ただ、どうすればいいかは分からなかったがね」

「なので、私は提案します。まずは宗教から攻めましょう!!」

私はヤスダの手記や資料を分析した結果、エランツだけでなく、他の宗派の創始者も完璧な人間ではなく、欠点が多くあったことが分かった。例を挙げると、まず預言者マイモッダだがダミアン王子もびっくりなマニュアル人間だった。ヤスダは預言者マイモッダに対して、このような言葉を残している。

マイモッダおじさんへ

何でもかんでもマニュアルに頼らない!!

最近はお祈りの回数で悩んでいたけど、そんなの適当でいいよ。1日1回でいいと思うし、できなければ週1回でも・・・

出来上がったマニュアルを見たら「お祈りは1日1回以上が望ましい」となっていたけど、マイモッダおじさんは『できなかった場合はどうしましょう?』って質問をして来た。

「そんなの知らないよ!!私が作ったわけでもないし、1日1回のお祈りを忘れるってもう信者として終わってるよ!!」

そしたら、今度はマニュアルに「お祈りをしなかった者は破門する」とか書かれていた。「そういうことじゃない」って、何度も説明したけど、分かってくれたかな?

結局、未来が分からないし、不安になるけど、マニュアルに従っていればすべてが大丈夫みたいな発想はよくないよ。

過去の経験からこうしたほうが確率が高いとかは言えるだろうけど、未来のことなんて分からない。

私としてアドバイスできることは、マニュアルに書かれている意味を理解しながら行うことだね。だって1日10回お祈りした人がみんな幸せになるわけでもないでしょ?

お祈りとかは、「今日一日、ありがとう。明日も楽しい事が起こりますように」って願っているだけなんだからね。

最近会ってないけど、元気?近いうちに会いに行きます。

これを見て、聖書にやたら細かい部分があったかと思えば、かなり大雑把な内容が混在しているのも納得した。だって聖書は、マイモッダが個人的に作った古代のマニュアルだったのだからね。

他にも現実派の創始者カマラに宛てた手紙にはこう書かれていた。

カマラちゃんは、いつもお金のことばっかり言っている。お金も大事だよ。でも、貯めることばかりじゃなく、使うことも考えようよ。少しぐらい無駄遣いしてもいいしね。だから計画的にやればいいのよ。目標額を決めて、そこに向かってお金を貯める。そして、目標よりも多く貯まったら、思い切り使えばいいのよね。

まあ、全く計画性のない私が言うことではないかもしれないけどね。

手記を読む限り、ヤスダはマイモッダたちのことを大切に思っていたし、面倒見も良かったのだと思われる。流石は元中学教師だと感じたのだが、残念なことにヤスダはこれらの手紙を出すことを忘れ、会いに行くことも忘れている。本当に残念な奴だ。

「ここからは私の想像ですが、各宗派ともに創始者の手記のような物を持っており、それを読むと自分が崇拝していた創始者が、実は欠点だらけの人間に思えたのかもしれません。それで不安になり、他の宗派に対して攻撃的になったのではと予想します。不安の裏返しというやつです」

エランツの例もあるし、そう思う根拠はある。

現実派を信じる者からしたら、創始者のカマラが守銭奴だったとは信じたくないだろう。それにアウグスト団長が言うには、一般の信者は聖書も過去の資料も全く読まないらしいから、大衆が、この事実を知らなくても不思議ではない。

「だからどの創始者も、預言者マイモッダでさえ、完璧な人間ではなかった。それぞれの思いを抱え、悩みながら暮らしていた。自分の創始者のことについては分かっても、他の宗派の創始者については分からない。教会の上層部は対立が激しいのに、一般信者の対立はそうでもない。多分、ここにヒントがあるのだと思います。その不安を取り除くことができれば・・・」

私の言葉を遮るかのようにピサロは笑い出した。

「ワハハハハ・・・本当に面白い。実は私はすべての創始者の手記を読み、そして「長期保存」で記録している。君はヤスダの手記から読み取ったようだが、私は現物を確認してその結論にたどり着いた。だが、その後は全く違った。私は彼らの不安を煽って協力させたのだが、君はその不安を取り除こうとしている。これが私が不幸になり、君が幸せな人生を歩んで来た一番の要因だと思う。人生の最後に君に出会わせたくれたことは、神に感謝するよ」

「死ぬのはまだ早いですよ。この事実をどうやって公表しようかと考えたときに、まずは論文という形で発表しようかと思いまして、是非協力をお願いします」

「分かった。その論文を手伝うとしよう。それをしてからでも遅くないような気もするしね」

★★★

そこから、取調べは一旦中断し、私とピサロは資料室で論文の作成に入った。もちろんだが、私とピサロ二人きりではない。文官も大勢協力してくれたし、ネスカや監視員もいる。ピサロは私以外とは話したくないと言っていたが、ヤスダの手記や魔王国ブライトンの歴史を知りたいという欲求には勝てなかったようで、大人しく従っている。

ネスカが言う。

「酷い荒れようだね。足の踏み場もないよ」

「ネスカ!!動かさないで、絶妙な位置に置いているだけなんだからね!!」

「全く・・・クララが二人いるような感じだよ・・・」

研究は進む。

論文の構成としては、ヤスダの手記とエランツやマイモッダの手記の対比を軸に作成することにした。ピサロは、各宗派の創始者の手記をすべて「長期保存」で持っていたので、それを利用し、資料室の資料と対比していく。

「興味深いな・・・ここに専門の研究者がいたら飛び上がって喜ぶだろうね。だが、教会関係者は激怒するかもしれないけどね」

「今まで信じて来たことが、根底から覆されますからね。けど、これが事実ですから」

そんな話をしていたところ、ピサロが質問をしてきた。

「実は多種族共存派のドスク女史の手記でどうしても分からないというか、解釈に困った部分があってね。これは多種族共存派の筆頭で現教皇でもある父のエビルスが長年研究しても、その答えは出なかった。結局、獣人の奴隷を集めるという暴挙に出てしまったがね・・・」

ピサロが示したドスク女史の手記を読む。

その日私は、守銭奴のカマラとヤスダ様とともに女子会をしていた。その日ヤスダ様はかなり酔われていた。女子が集まると恋バナになるが、その日は少し違っていた。真実の愛という話になり、ヤスダ様はこう仰った。

『世の中には「エス」と呼ばれる者と「エム」と呼ばれる者がいて、「エス」が「エム」を鞭で叩いたり、蝋燭を垂らしたりして愛を確かめ合うというのを聞いたことがあるわ。その人たちは、それが真実の愛だと言っているらしいわ。かなり高度な思考だから、私には理解できないけど、ドスクちゃんには分かるかもね・・・』

その言葉が私の頭から片時も離れなかった。私は獣人、特にモフモフした獣人が大好きだ。いつもモフモフしていたい。でもヤスダ様が言う言葉は理解できなかった。心を鬼にしても愛くるしい栗鼠人や兎人を鞭で叩くことなんてできない。

もしこの手記を読んだのなら、誰か真実の愛を探求してほしい。私が到達し得なかった高みを求めて。

ヤ・ス・ダ!!お前は何を教えているんだ!!

意味不明なことを教えるな!!

結局、前世の知識を話せなかったので、ヤスダの手記からそれっぽいものを見付けて、ピサロに示した。

ドスクちゃんへ

「エス」と「エム」の話は、超特殊な人たちだから、理解できなくていいと思うよ。多分、何か屈折した思いを持つ人たちのことだと思う。そんなことを気にせずにドスクちゃんらしく、みんなと仲良くしてください。

ピサロは言う。

「理解できなくて当然ということか。これを信じて、獣人奴隷を集めた父が滑稽に思えるよ」

多少のハプニングはあったものの、論文はまとまった。