軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

121 ロイター王国崩壊 2

アイリーンと「謎の聖女」が行っている聖戦の結果発表はメサレムの中央に位置する広場で行われる。広場はすでに、多くの観衆で賑わっている。アイリーンの事情を知らない三人娘やルシルさんは、いつものパフォーマンスを行い、「謎の聖女団」に属する聖女たちもラーメンを提供したり、缶詰を販売したりしている。「ナダスの聖女」なんて、ナダス講習をしているからね。

そんな盛り上がりの中、まず観衆の前に姿を現したのは、エスカトーレ様だ。

「「風の聖女」たるエスカトーレ・ウィードがこの勝負の立会を致します!!」

観衆のボルテージは最高潮に達した。皆が広場に設置された仮設ステージに注目が集める。すぐにアイリーンと「謎の聖女」が登場する。

再度、エスカトーレ様が聖戦の内容などを説明する。勝敗は「どれだけ民を幸せにしたか」で競われ、今日が丁度の期限の1年に当たり、負けたほうが聖女を引退するとの条件も発表された。

そんなとき、アイリーンがおもむろに口を開いた。

「私は、ずっと皆さんを騙して来ました。神聖ラドリア帝国の命を受け、多くの信者を死地に送ろうとしていました」

観衆がざわつく。しかし、アイリーンは気にすることなく、自分の生い立ちや、神聖ラドリア帝国から受けた命令を話していく。アイリーンは最初から、この場で罪を告白し、断罪されようと覚悟していたのだ。

「そういう事情ですので、私は聖女に相応しくありません。よってこの勝負は「謎の聖女」様の・・・」

言い掛けたところで、謎の聖女が遮った。そして、顔のベールを剝ぎ取った。

「お待ちください!!それを言うなら私のほうが聖女として相応しくありません。私はエリザベス・クレイラー、クレイラー公爵家の二女で、神聖ラドリア帝国で認定を受けた聖女です」

あれ?「謎の聖女」が?

ネスカを見るとニヤついている。コイツ・・・知ってやがったな!!

「神聖ラドリア帝国は、卑怯な魔族や獣人たち、またその手先である魔女アイリーンを討伐することを使命としています。私もその旗頭として、聖女に認定されました。しかし、素性を隠し、「謎の聖女」として活動していくうち、聖女アイリーン様の言っていることのほうが正しく思えました。恥ずかしながら私も神聖ラドリア帝国に利用されていたのです。もしかしたら、私がアイリーン様と同じようなことをさせられていた可能性もあります。ですので、私も聖女の資格はないと思います」

ここで観衆から、声が上がる。

「理由はどうあれ、辛いときにこの町を支えてくれたのはアイリーンじゃねえか!!」

「そうだ!!脅されて仕方なくやらされてたんだろ?」

「それに「謎の聖女」様もよくやってくれているよ」

「鉄道が敷かれたのも「謎の聖女」様のお陰だろ!?」

ここでエスカトーレ様が発言する。

「分かりました、皆さん!!つまり、引き分けということですね?だったら、来年まで勝負は持ち越しです。それでいいですね?」

「「「オオオオー!!」」」

大歓声が上がる。

「皆さんも同じ気持ちのようですね。アイリーン様、エリザベス様、来年またここに集まるのはどうでしょうか?メサレムは聖書に書かれてある「最後の晩餐」があったとされる場所です。一方、魔族の側では「最後の晩餐」ではなく「楽しいお祭り」といった認識だそうです。だったら、今日から新たな伝統を作ってはどうでしょうか?いっぱい聖女もいますしね。

聖女の皆さん!!皆で聖戦を致しましょう。誰が一番、この町の人を笑顔にしたかで競い合いませんか?」

すぐに聖女たちから賛同の声が上がる。

「その話、乗った!?「こってりラーメンの聖女」リンリンは最高のラーメンで笑顔にするよ!!ランラン!!ルンルン!!一時休戦だ。ラーメンフェスを開催しよう!!」

「私は「ナダスの聖女」!!一緒にナダスをしようぜ!!初心者大歓迎だ!!」

「「大食い聖女」に挑戦する人はいませんか!?」

「缶詰関係の聖女の皆さん!!一緒に販売会を開きましょう!!」

これには三人娘も参加し始める。

この勢いは止められず、「聖女フェス」と名付けられ、三日三晩続いた。

三日後、残ったのは幸せな市民たちと、疲れ果てた聖女たちだった。

フェス終了後に「謎の聖女」ことエリザベス様とアイリーン、それに私たちで、話し合いの場を持った。ネスカが言う。

「このまま、聖女としての活動を続けてみてはどうでしょうか?そして、神聖ラドリア帝国の悪だくみを世界に知らしめるのです。神聖ラドリア帝国にも多くの心ある人がいると思いますからね。そうすれば、自然と黒幕が炙り出されるでしょう」

エリザベス様が言う。

「とりあえず、私は実家の者を説得します。それとアイリーン様も騙されていたと訴えますよ。お父様に言えば、対応してくださると思います。何たって、私も騙されていたんですからね」

アイリーンが言う。

「私は聖女と名乗るのはどうも・・・実際にたくさんの方にご迷惑を掛けていますので・・・」

これにはアウグスト団長が答える。

「現聖騎士団長のピサロがいる限り、アイリーンのような者が生まれ続ける。だからこそ、アイリーンのような存在が必要になってくる。ピサロに弱みを握られて、苦しんでいる者の救いになってほしい。別にそれが聖女としてでなくても構わん。アイリーン個人として、今までどおり、活動を続けていけばいいだろう」

アイリーンは目に涙を浮かべて言う。

「分かりました。私はアイリーン個人として、今までの活動を続けていきます」

「まあ、人が勝手にアイリーンのことを聖女と呼ぶのは勝手だからな」

そんなこんなで、別れの時が来た。アイリーンは引き続きメサレムに残り、「謎の聖女」と「謎の聖女団」はロイター王国でまだ、復興が進んでいない地域を回るという。そして、三人娘は「謎の聖女団」とともに北に向かい、獣王国ビーグルを通って、一度実家に帰るようだった。

彼女らを見送り、私たちもベルシティへと帰還したのであった。

★★★

この出来事は歴史的な事件となった。三人娘なんかは、聖女たちみんなとお祭りを楽しんだくらいにしか思っていないだろうけど、国際情勢には大きな影響を与えることになったのだ。まず、神聖ラドリア帝国だが、エリザベス様のご実家、クレイラー公爵家が動き、原因究明に乗り出した。ネスカは白々しいと言っていた。積極的に加担しないまでも、全く知らないはずはない。しかし、ここまで策略が公になった以上は、そうせざるを得ない。エリザベス様の活躍もあり、正義の公爵家というポジションが得られるしね。

また、ロイター王国に話を移すと、多くの領や都市が独立した。また、北側の多くは獣王国ビーグルへの編入を希望し、南側は小国家群に加入することになった。また、西側の数箇所の領はルータス王国への編入を希望している。

そのような状況なので、ロイター王国は王都周辺の僅かな領土しかなくなり、しかも王族が神聖ラドリア帝国に亡命してしまった。

これで、事実上ロイター王国は滅亡してしまったことになる。蝙蝠外交と瀬戸際外交を繰り返した国の哀れな末路だった。当面は王都周辺の領地をどうするかで、多少は揉めるだろうな。関わりたくはないけど、そうはいかないよね・・・

これを機に世界情勢は新たな局面を迎える。