軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

111 エランツの思い 3

どういうわけか、緊急出動をすることになった。それもよく分からない怖そうな人たちとともに。

最近、緊急出動はしていなかったけど、上手く機能している。出動も早くなったし、それに余裕が出たために編成した探索部隊も機能しているようだ。町や村に被害が出る前に危険度の高い魔物を見付け、事前に対処する。それでも年に何回かは、町や村に被害が出ることはあるんだけどね。

しばらくして、現場であるボーデン湖に到着した。全体の指揮は獅子族の部隊長が行うようだった。これもシフトで決めているので、誰が指揮官をするかで揉めることも最近はないようで、安心した。現場に着くとすぐに探索部隊から状況を聴取し、そして部隊を展開する。大型の首長竜は変異種だったのだが、リザードマン部隊と殲滅狙撃隊の活躍で、すぐに討伐できた。流石の聖騎士団の隊長たちもロプス君たち一つ目巨人族には驚いていたけどね。

「あんなのと戦ったら、被害がどれだけ出るか分からんな」

「数で押し切るしかないが・・・8割は生きて帰れんだろう」

「厳しい戦いになるな・・・」

いいか悪いか分からないが、戦うことを常に考えている軍人らしい発想だ。

後処理をしている部隊を見ながらネスカが説明をする。

「魔王軍の最大の目的は、魔物被害から国民を守ることです。こんなことは日常茶飯事であり、他国を攻めるどころではありません。魔物を討伐し、国民を守ってくれるのであれば、神聖ラドリア帝国の属国になっても構いませんよ」

アウグスト氏は、笑い出した。

「ワハハハハ、これを我らにやれと?命がいくつあっても足りんわ。貴殿らの考えはよく分かった。こちらから攻めて行かなければ、何もしない。攻めてきたらその限りではないということだな?」

「そのとおりです。まあ、拳で語り合った仲ですから仲良くなれるでしょう。帰ったら宴会の準備もしてますからね。首長竜の首肉は凄く美味しいですからね」

「うむ。酒でも持ってくればよかったな」

その後帰還し、大宴会が始まってしまった。

ところで、資料室の件はどうなったのだろうか?

★★★

次の日になったが、アウグスト氏と隊長さんたちは酔いつぶれて寝ていて、昼になっても起きて来なかった。仕方なく資料室に向かう。一応、三人娘とハイエルフの姉妹に整理を頼んでいるので、その監視だ。真面目にやってくれているといいけど・・・

そんな思いはすぐに裏切られる。文官や研究者に資料の整理をさせ、自分たちはそれを見ながら、優雅にお茶を飲んでいた。

「クララ、久しぶり。お茶でも飲んで行きなよ」

「お宝とか、思い出の品がいっぱい見付かったんだよ」

資料室は色々な仕掛けが施してあったようで、お宝がかなり見付かったそうだ。それで、文官や研究者たちが押しかけて、今に至っているらしい。因みに魔王城はダンジョンを運営しているハイドワーフたちが建築したらしく、そのためダンジョンのような構造になっているそうだ。

どおりで、ヤスダが変な場所に宝箱を隠したりできたんだね・・・

文官たちが整理した物を確認する。ガラクタ置き場であろう場所に折れた剣と日本語で書かれたヤスダのメモが入った箱を見付けた。担当の文官に尋ねる。

「これですか?折れていますし、捨てようと思ったのですが、ヤスダ様が書いたであろうメモが入っていたので、念のため残しています。私たちでは読めないので、クララ大臣に確認してもらおうと思いまして」

手紙を確認する。

この剣はエランツ君の剣です。エランツ君は仲間たちと一緒に魔王城までやって来ました。私がブライトンに酷いことをされていないか見に来てくれたようです。でもなぜか、ブライトンと一騎討ちを始めてしまいました。

エランツ君は頑張っていたけど、ブライトンには勝てませんでした。そして、エランツ君の剣が壊れたので、ブライトンに代わりの剣をあげるように言いました。それから二人は仲良くなりました。

それにしてもエランツ君は強くなったよね。ここに来るだけでも大変なのにね。

壊れているし、捨てようと思ったけど、エランツ君が大切にしていた剣なので、ハイドワーフのドバラスタが来たら、修理を頼んで、直ったらエランツ君に持って行ってあげようと思ってます。捨てないでください。

ヤスダのことだ・・・いつか直してもらおうと思って、忘れたのだろう。それに日本語で書いたら、誰も読めないだろうが!!

でも、かなりの値打ち物だ。アウグスト氏が見たら喜ぶと思う。

文官に事情を説明し、剣を回収してアウグスト氏の元に向かう。途中ネスカに声を掛けられた。アウグスト氏はこれから魔王様と謁見するようだ。魔王様に確認を取ったところ、謁見の時にその剣をアウグスト氏に渡すと言っていた。

しばらくして、謁見が始まった。

「遠路はるばるご苦労様です。私は魔王のダイアナ・ブライトン。こちらの剣を貴方たちにお返しします。クララ大臣、翻訳をお願いします」

私はメモの内容をアウグスト氏に伝えた。

アウグスト氏と聖騎士団の隊長たちは驚愕の表情を浮かべている。しばらくして、涙を流していた。

アウグスト氏が言う。

「やはり、我々が保管しているエランツの手記は本物だったようだ。魔王様、これを見ていただきたい。これは聖書の内容や絶対神ヤスダが神ではなかったことなどが記載されています。教会としても、認めるわけにはいかなかった書物なのです。長年、その真偽が議論されてきました。その答えが見付かった気がします」

アウグスト氏が差し出した手記の一説を読む。

我の戦いは終わった。完膚なきまでの敗戦であった。そして、我の初恋が終わった瞬間でもあった。あの人は、我の想いを気付いてもいなかったがな。

魔王は強い。我が勝つことは無理だろう。しかし諦めん。いつか魔王を打ち倒す者を育てなければな。魔王から友情の証としてもらった魔剣は、魔王を打ち倒した者に譲るものとする。皆よ、訓練に励め。魔族や魔王に負けるな。

これまでの資料分析から推察するに、若かりし頃のエランツは、ヤスダに恋心を抱いていたのだろう。そして、鍛錬を積み、仲間を集めてヤスダを取り返しに来た。しかし結果は剣を折られ、完敗した。相当悔しかったのだろう。ブライトン王への雪辱を誓った内容だ。でもなんか、恨みを晴らすとかではなく、スポーツとかで、「ライバルに勝つぞ」みたいな爽やかな感じだね。

「今の聖騎士団長は、これを曲解し、『卑怯な手を使いエランツを破った魔王を打ち倒せ。それが使命だ。魔王の手先である亜人や獣人、魔族も殲滅するのだ』などとほざいておる。わざわざ剣まで贈った者がそんなことをするはずもないのにな・・・信者といえども聖書を読み、資料を分析する奴など、ごく少数だ。聖騎士団長の権威を使えば、大衆など何とでも扇動できる。それが今の神聖ラドリア帝国の現状だ」

聖騎士団第一隊長のゲハルトが言う。

「アウグスト団長、俺もそう思います。実際に戦ってみて、魔族の奴らが卑怯なことをする必要はないと思います。ということは、今の団長にみんな騙されていたのか・・・自慢じゃないですが、俺も聖書なんて読んだことないですからね。聖騎士団の隊長なのに・・・」

アウグスト氏に思いっきり殴られていた。

ここでアウグスト氏が驚きの発言をする。

「魔王様、厚かましいお願いをいたします。どうか我との一騎打ちを受けてくれないでしょうか?開祖エランツの雪辱を果たしたいと思います」

「いいですよ。私も若い頃はよく決闘をしたものです。久しぶりに血が騒ぎます。ネスカ、地下の闘技場の準備をしてきなさい」