軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

104 魔物散布

私がネスカと同行することを決断したのは、ネスカが心配だからでも、ドラゴンに乗ってみたかったからでもない。私は転生者で、ヤスダやブライトン王のことを一番理解している。もし何かあったとき、ネスカをフォローできるのは私しかいないという使命感からだ。当然、お父様に止められたが、最後は渋々納得してくれた。

それから私はお母様が作ってくれたお弁当とカメラを手にビッテさんの背中に乗った。ハイエルフの姉妹と三人娘を乗せたベンドラ様が飛び立ったのを確認して、私たちも空の旅に出発した。

魔法か何かの効力だと思うが、上空では普通に会話ができた。ベンドラ様は上機嫌だった。

「懐かしい!!ここにブライトンがいないのが残念ではあるがな」

「また探せばいいじゃん」

「そうよ、ヤスダたちがいればすぐ見付かるって!!」

これから、邪教徒を皆殺しに行く雰囲気ではない。

ビッテさんも会話に参加する。

「私も懐かしいです。私はよくブライトンとヤスダを乗せて飛んでましたからね。お二人がまるでブライトンとヤスダのように感じます。ブリギッタとブリギッテ以外を乗せるのも久しぶりですし・・・」

「でも浮気しちゃったよね?」

「反省してるのかな?」

嫌らしくハイエルフの姉妹がツッコミを入れる。

「ごめんなさい、ごめんなさい!!反省してます」

長年の習慣はなかなか治らないようだ。

★★★

最初に私たちがやって来たのは魔王国ブライトンの王都周辺だった。

「これから魔物を捕まえるよ」

「そうだね。すぐに見付かると思うよ」

ネスカが、すかさず会話に入る。

「できれば、ブラックシープかブラックブルがいいと思います。最初から強い魔物だと、相手を苦しめられませんからね。徐々に強くしていったほうが効果があると思います」

多分、なるべく弱い魔物で被害を減らそうと考えたのだろう。いい作戦だと思う。

これにはベンドラ様も納得した。

「そうだな。流石に邪竜を撒くわけにはいかんからな。そうしよう」

20分程周囲を飛んだところ、すぐにブラックシープの群れを見付けた。

ハイエルフの姉妹が見たこともない魔道具を手に持ち、次々とブラックシープを捕獲していく。魔法でできたロープのような物が飛んでいき、自動で追尾して拘束する魔道具のようだった。

すぐに30体ほど、拘束した。幸か不幸か変異種はいなかった。

「パミラもザスキアも手伝って!!」

「10体ずつ持ってくれたら丁度いいと思うわ!!」

10体ずつ、ブラックシープを持ち、3体のドラゴンが宙に舞う。

「ところで、どこに撒くんだっけ?」

「そうだね・・・聞いてなかったな」

「ロイター王国に飛んでください。とりあえず王都を目指してもらいます。ビッテさんが案内しますので、ついて来てください」

ネスカの算段としては、人がいない所に撒くつもりだろう。1時間もしない内にメサレムの上空に差し掛かった。そんなとき興奮した三人娘が騒ぎ出す。

「死になさい!!邪教徒め!!」

「皆殺しです!!」

「そうですわ。これは聖戦ですわ!!」

ネスカが慌てて止めに入る。

「メサレムには獣人もいますし、邪教徒以外も住んでいます。人がいないところにとりあえず落としてください!!」

「じゃあ、そうするわ」

「よし!!投下!!」

この高さから落とすのか?流石にブラックシープは全滅するでしょ!!

私がツッコム前にドラゴン御一家はブラックシープを投下し始めた。予想どおり、ブラックシープの群れは、次々と無残な肉片に変わっていく。

「ありゃ!!死んじゃったね」

「本当だ」

「なんと軟弱な!!魔物としてのプライドはないのか!!」

プライドの問題ではないし、普通の生物はこの高さから落ちたら、ほぼすべて絶命する。

どうしていいか分からない私はとりあえず、提案をしてみた。

「一仕事終えたので、とりあえず記念撮影とお弁当にしませんか?最初から飛ばし過ぎるとよくないと言いますしね」

ザスキア様が言う。

「そうね!!全部死んじゃったから、反省しながら食べましょう」

一体何を反省するのだろうか・・・

★★★

休憩はたっぷり、そして優雅に過ごした、私とネスカ以外は。

私は新型の遠距離でも通話可能な通信の魔道具でメサレムに潜入している特殊部隊に報告を入れる。

「こちらクララ、現在ブラックシープ30体を上空より投下、高度が高すぎたため、ブラックシープは全滅」

「こちらはメサレム潜入班、メサレムの町は大混乱の模様。市民たちは神の祟りだと騒いでおり、エランツ派の信者たちとのもめごとが各地で発生中です」

「了解。今後、特異事項があればすぐに送れ。以上」

これを聞いたネスカが二ヤリと笑う。

多分、また嫌らしく、残忍なことを思い付いたのだろう・・・

その日は一度、ベルシティに戻り、スライム研究所から大量のスライムを譲り受けて、再びメサレムに飛び立つ。なぜかスライム研究所の所長ハイドンも同行する。

メサレム上空で、ハイドンが叫ぶ。

「スライムよ!!俺はお前たちのことを決して忘れない!!お前たちの犠牲は無駄にしないからな」

涙ぐみながらハイドンは言うが、そもそも誰よりもスライムを殺害しているのは貴方だからね。

今度は人のいない所ではなく、領主館や教会を中心にスライムを投下した。ブラッドスライムという大量に魔物や人間の血液を吸い取るスライムがいるのだが、それを投下したのだ。これが人に当たったところで、少し痛いくらいだし、屋根に当たっても特に壊れない。このスライムの99パーセントは水分だからね。

だが、投下された場所は血塗れになる。空から見てもメサレムが大混乱に陥っているのが分かる。

「こちらメサレム潜入班。エランツ派の信者が多数退去して行きます。「天罰だ」「神の怒りだ」とか叫びパニック状態です」

「クララ了解。身の危険を感じたら、迷わず退避せよ」

「メサレム潜入班、了解」

ネスカが笑いながら言う。

「何日か続けようか?多分、メサレムは地獄絵図になるだろうけどね」

「アンタは本当に性格悪いわね・・・」

★★★

それから私たちの嫌がらせは続く。週に1~2回のペースで郊外に魔物を投下し、市街地にスライムを投下する。ハイドンから弱毒性のポイズンスライムを奪い取り、それも投下する。このポイズンスライムは2~3日腹痛が続くくらいなのだが、ハイドンは頑丈で、食べても平気だったので、職員が真似して食べて腹痛を起こしてしまうまで、気付かなかったようだけどね。

これは凄く効果があった。「疫病が蔓延している」というデマを潜入班が流したことも相まって、本当にメサレムはパニック状態のようだ。

三人娘もハイエルフの姉妹もある程度満足したようで、最近では別の趣味に嵌っている。なので、スライム投下作戦も、私とネスカ、ハイドンだけで、ビッテさんに乗って行うようになった。作戦は順調だったが、一度だけ、紛れ込んだメタリックスライムに気付かずに投下してしまい、教会の屋根を盛大に破壊する事件はあったが、これくらいなら許される範囲だろう。

1ヶ月後、ビーグル王がお礼にやって来た。

「凄い効果だぜ!!メサレムに集まっていた奴らは10分の1になったぞ。それにエランツ派から脱会する者が多数いるらしい。みんな神の怒りがどうのこうの言っているそうだ。また、懲りもせずに集まり出したら、依頼するぜ」

ネスカが言う。

「もっとやってもいいんですが、これ以上やると本当にメサレムは廃墟になるかもしれませんからね」

私はネスカが味方で、本当に良かったと思ってしまう。