軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

03 ワンス・アポン・ア・タイム(3)

何はともあれ、いずれはウィロウに返す身体だ。

私がまたウィロウの中に引っ込めば、私が表に出ている間に築いた財産や人間関係はそっくりそのままあの子のものになる以上、(魔物相手はまだしも)人間相手にあまり薄情な接し方をするのはよろしくない。

ノラさんやパトリシアさんやナタリーさんと言った、 私(ヴィル) に対してとても好意的で、真摯で、面倒見の良い人たちなんて特に大切にしなくちゃいけないと思う。

あの三人ならウィロウのことも大切に見守ってくれるだろうし、あの子に何かあればきっと手を貸してくれるはず。

少なくとも、私が三人と接する中でそう感じられるだけのものがあった、ということなので、あの三人にだけは情のなさが発揮されないよう十分気を付けなければ。

(うーん、我ながら打算的過ぎる……)

でも、打算のひとつでもないと、ふとした時に人でなしムーブをかましちゃいそうだから、そうならないためのブレーキと考えれば悪いことばかりではないのかもしれないな。

それに、なんだかんだ言いつつ、あの三人に対して私が親愛や敬愛を抱いているのは確かなので、そちらも上手い具合に作用していざという時の歯止めを利かせてくれるはず……と信じたい。

人間、人として好ましいと思った相手が大切な人になりやすいのは確かだけど、大切な人であることと人として好ましいと思う相手であることは必ずしもイコールで繋がらないのが、なんとも難しいところだなぁと思う。

いずれ自分の身を滅ぼしかねないとわかっているのに、悪い人、危険な人にどうしようもなく惹かれるって人も、世の中にはマイノリティだけどいるわけだし。

どこまで行っても私はウィロウ本位だなぁと思うが、その考え方を変える気は毛頭ないので、大人しく行動の方を変えるしかない。

といっても、せいぜい他者を――主に同じギルドに所属する人たちを気に掛ける努力をする、程度のものだけど。

しかし、それが良い感じに成果に繋がったのか、最近はノラさん推しの同士(※ただしあっちはノラさんにガチ恋)をゲットできたので、やっぱりもうちょっと視野は広く持つべきだなと思い直すようになった。

推しへの愛は性別の枠をも超える、なんて。

ちょっとアホなことを考えたりもしたけど、……まあ、同士とノラさんのことを話していると段々語彙力が低下して頭の悪い会話になったり、言葉を喪うこともあるので、その影響が出たんだろう。たぶん。

「ヴィル、ちょっと相談があるんだけど、時間は大丈夫?」

「? はい、大丈夫ですよ」

ほかに何かあったっけな、と町の雑貨屋で購入した日記帳を開いて考えていると、コンコンコン、とドアをノックする音がした。

続いて聞こえてきたのはナタリーさんの声で、何やら私に話がある、という。

日記帳に今までの出来事や人間関係等、色々と書きつけて残すことは今すぐやらなくてはいけない……というほどのことでもないので、作業は一時中断。

ただし、中身を他人に見られてはまずいので、例の四次元ポーチに押し込んでから自室を出て、ナタリーさんと合流することにした。

「どうしたんですか、ナタリーさん?」

「うちに依頼されたクエストの件で、ヴィルにも協力をお願いしたいことがあってね? 詳しくは下の打ち合わせ部屋で、資料を確認しながら話しましょ」

「はーい」

というわけで、いざ打ち合わせ部屋に足を運んだわけですが。

「お待たせしました~」

(……『お待たせしました』?)

私に先行する形で部屋に入ったナタリーさんの言葉に、おや? と首を傾げる。

一階に降りてくる前のナタリーさんはクエストについての相談、とは言っていたが、誰かが同席するとは言っていなかったような。

ああいや、でも、同時に『私に協力を頼みたい』とも言っていたので、もう少しちゃんと考えていたら普通に思い当っていたか……と思い直す。

王太子から逃げおおせて早一カ月半経っているとはいえ、王太子の権威が失墜していない以上、まだまだ警戒を緩めてはいけない状況だ。

いかんせんちょっと油断しすぎたな、と内心反省。

「すみません、お待たせしました」

とにもかくにも、私が待たせた人がいるのなら待たせたことを謝る、というのは礼儀なわけで。

ナタリーさんのあとを追いかけて部屋に入る時、軽く会釈しながら謝罪を告げると……。

「気にしないでちょうだい。いきなりヴィルを呼び出したのは私たちなのだし」

「パトリシアさん、すみません。ありがとうございます」

私が待たせてしまったうちの一人である、パトリシアさんがふわりと淑女らしいほほ笑みをたたえながら、大丈夫よーと私に着席を促す。

だから私も、ナタリーさんの背中を追いかけ、空いていたソファー――パトリシアさん たち(・・) が座っているソファの向かい側に腰を下ろして、私の正面に座る 彼(・) へもにこりと笑いかけた。

「お疲れさまです。―― 風(フォン) さん」