作品タイトル不明
最高級シャンプーの売値決定! 2
ポットにハーブティーを入れて商談室に戻ってきたクルガー商会長と、長いトイレ待ちの列に並んでトイレを済ませたチヤはクルガー商会長と2人で、いや、セーラも入れて3人で温かいハーブティーを飲んでいた。
護衛はね、ソファの両隣に立っているよ。
一息ついてから、クルガー商会長が話し出した。
「決まったぞ。『最高級シャンプー』の卸値と販売価格が」
チヤ達もカップを机の上に置いて、話を聞く体勢になる。
「『最高級シャンプー』の卸値は2万2500ルビ。売値は倍の価格の4万5000ルビだ。この値段なら王妃様も満足してくださるだろう」
ここで、チヤはクルガー商会長の勘違いに気がついたが、何も言わなかった。
「化粧箱は『シャンプー』を売り出す為に試作品は出来上がっているから、それを少し豪華にして用意する。
う〜ん。また、5日後に商会に来てくれるか?完成品を用意して待っている。
あと、金はいらないぞ?インベルト商会の品として献上してくれれば充分に釣りがくる」
チヤは心の中で「しめしめ」と思いながらも「卸値も売値も了承しました。それでは魔法契約をしましょうか?」と、しれっと言った。
「ああ、そうだな。少し待っていてくれ。すぐに契約書を書くから」
いつものように、クルガー商会長が魔法契約書を用意して、契約内容を書き込んだ魔法紙を2枚用意して、自分がサインした後に、チヤにサインを求めてきた。
魔法契約書の内容を読んだチヤは緩みそうになる顔をどうにか真面目に見えるように取り繕った。
(やっぱりだ!卸値2万2500ルビが300シアでの買い取り価格になってる!)
この『最高級シャンプー』は、1000mlで11万円なのだ。
つまり、この魔法契約書は約300mlで22万5000円の買い取り価格になっている。
ボロ儲けである。
試供品に300シアの入ったシャンプーを渡したので、クルガー商会長が勘違いをしたのだろう。
こんな、美味しい契約書には、さっさとサインをしてしまおうと、いつものように名前を書こうとして、はたっ、とチヤは動きを止めた。
そういえば、木族と会った時に隠蔽魔法を解除されたのだったと思い出してステータスをオープンした。
名前 チヤ・ハースネル
年齢 6
体力 54
魔力 15433
スキル 鑑定 通販レベル7 アイテムボックス(時間停止、容量∞) 薬剤調合 鑑定阻害
やっぱり!名前に『ハースネル』がついている!
間違えて、いつもと同じように『チヤ』とだけ書いてしまいそうになってしまった。
魔法契約書には慎重に『チヤ・ハースネル』と書いて、クルガー商会長に確認してもらう。
クルガー商会長が魔法契約書を見て「おやっ?」とした顔になった。
「スイード伯爵家に引き取られたのに、『ハースネル』が家名なんだね?どうしたんだい?」
チヤは、ほぼ事実を伝えた。
『ほぼ』である。
「父方の親族にみとめられまして、父の家名を貰いました」
本当は隠蔽魔法を解いたのだけどね。
「そうか。良かったな。今日は納品物を用意しているか?」
「はい!たくさん用意してますよ。春の社交が終わったら、お母さんの生まれ育った領地に行きますからね!」
「はあ!?」
クルガー商会長は「信じられない!?」という顔をした。
「おっ!王都には、帰ってくるんだろう?!ずっと領地にいるのか?!」
おお!凄い食いついた。
私は素直に答える。
「 2月(ふたつき) 程度を予定しているので、倉庫に入るだけ納品しますよ」
クルガー商会長は「まずい!倉庫街の倉庫を押さえないと」とぶつぶつと思案していた。
チヤはできるだけ商会の都合に合わせる方針だ。
チヤのせいで迷惑をかけるので当然だと思っている。
「チヤ君!社交が終わるまでの後 1月(ひとつき) で、できるだけ商品を納品してくれ!」
クルガー商会長が叫んだ。
今や、チヤが持ってくる商品はインベルト商会にとっての命綱だ。
儲けのほとんどを叩き出している。
「もちろん、そのつもりで用意します」
チヤの言葉にホッとしたクルガー商会長だった。
最後まで、以前に1度クルガー商会長に教えた1000ml 11万の値段にクルガー商会長は思いだせずに他の商品の納品を済ませてチヤは屋敷に帰った。
仕方がないのである。
インベルト商会はチヤが固形石鹸を持ち込むようになってから、物凄い勢いで【王室御用達】をいただいて、一気に名が売れたのだ。
とにかく、クルガー商会長は『忙しい』。
箔をつける為にクルガー商会長、自ら接客してほしい貴族も来るし、昔からのお客様も「忘れていませんよー」と、ご機嫌取りをしなければならないし、上得意様の注文された品物の検品も商会長、自らが行い、書類の最終決定の判断も行っている。
何度も言う。
そう、クルガー商会長は、とても忙しいのだ。
だが、それのせいで、ミス1つが大きな損害を出したのに気がつかずに、平和にクルガー商会長とチヤは別れた。
ただ、インベルト商会の儲けになるはずだったお金が、チヤの懐に入っただけの話である。
ふっふっふっ。
1度の『最高級シャンプー』の卸しで約3倍の儲けだ。
笑いが止まらぬとは、このことよ!
「お嬢様、いえ、チヤ様のお顔が歪んでおりますよ。貴族のご令嬢らしくなさいませ」
おっと、にやにやしていたのが顔に出ていたのかな?
「私は貴族令嬢じゃないから大丈夫。お父さんは(多分)庶民だよ」
「いえ、大旦那様のお血筋なので、貴族のお嬢様です。本当は貧民街に行くのも辞めていただきたいのですが、大旦那様がチヤ様の好きにさせろと仰せなので、仕方がありません」
おおっと、我慢していたのか、小言が飛んできた。
セーラ的には貧民街に行かせたく無いんだ。
しかーし!私は貧民街育ちのれっきとした『貧民』だ。
貧民としての誇りすらある。
ちょっと、そこら辺は相入れないのかもしれないね。