軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

久しぶりの貧民街

家から歩いて15分くらいの場所に貧民街市場第3地区があります。

さて、ステラおばさんのゴブリン肉を売っている場所を探しますよ。

しかし……。

目立ってます!目立ってますよ!

私のお連れ様の1人は貴族家で着る上等な侍女服を着ています。

護衛の2人も「これぞ騎士!」という格好をしていますから、貧民街の人々が「何事!?」と、思う気持ちが理解できます。

そして、そんな大人3人の前を歩く幼女。

不審しかありません。

我々は、不審者です。

「ん?おい!チヤ!チヤじゃないか!チヤ!」

チヤチヤと私を呼ぶのは、ステラおばさんのところの末っ子ダンです。

店番をするステラおばさんと一緒にいます。

きっと、また、クッキーでも貰いに来たのでしょう。

チラッと、お付きの3人の顔を見ると、護衛2人は少し眉間にシワを寄せて不快な顔をしていますが、意外にも侍女セーラは普通の顔です。

私は護衛に注意をします。

「護衛2人共、不快ならば一緒に来なくてもいいです。屋敷に帰りなさい」

少し冷たく言ってから、ダンの元に行きます。

店と店の間を通ってダンの隣の地面に座ります。

御付きの3人は、私の近くに寄ることもできずに、買い物客の邪魔にならない場所に立っていますが、私を監視しているのがバレバレです。

しかし、ダンは気がついてないのか、お構いなく話しかけてきます。

「また、最近遊び場にこないじゃんか。おばちゃんの仕事が忙しいのか?」

実際には、私が商売しているのをお母さんが手伝っていました。

そして、私のお母さんは「おばちゃん」なんて呼ばれる年齢ではありません。

私は素直にダンに教えます。

「お母さんの実家にいる伯父さんが、お母さんと私を迎えに来て、今はおじいちゃん達、家族と暮らしています」

私のなんちゃって敬語はクセなので、ダンは気にしていないようです。

それよりも、ステラおばさんが私の連れの3人を凄い警戒しています。

「ステラおばさん、あの3人は、ほっといてください。実家のお目付け役です。私が少し前に攫われたので、凄く周りを警戒しているのです」

ステラおばさんが私の言葉を聞いてギョッとした!

「えっ!チヤちゃんが誘拐されたって!?」

ダンも驚きます。

王都での犯罪は重罪です。

人攫いなどしようものなら縛首です。

これは、貧民街だけでなく、王都民全ての共通認識です。

「まあ、犯人は捕まったので、今日はステラおばさんにお願いがあってきました」

と、私が喋っている途中にダンが口を挟みます。

「母ちゃん!チヤも来たし堅焼きくれよ!お腹空いた!」

欠食児童のダンは食欲優先のようです。

「はい、はい、わかったよ。チヤちゃんもいるかい?」

優しいステラおばさんの気持ちを無視するわけにはいきません。

「はい、いただきます」

「なんだ?チヤ、平民みたいな口調で」

ダンは平民に苦手意識があるようです。

少し嫌そうに喋りました。

そして、私とダンはステラおばさんから堅焼きを貰います。

ダンは嬉しそうに口して、ペロリと食べてしまいました。

私も懐かしい味とご対面です。

はい、余り味のしないクッキー以下の味ですね。

ですが、どこか懐かしい気持ちになります。

私は通販を開いて、パンの店で『パリジャン』を2本と、軽い口当たりのクロワッサンを3個買います。

包装されて目の前に出てきたのを一度地面に置いて、袋からクロワッサンを2つ取り出します。

「ステラおばさん、ダン、美味しいよ。食べて」

2人の手にクロワッサンを渡します。

私の分のクロワッサンを袋から取り出して、クロワッサンのサクッとした食感を楽しみます。

パン屋さんのパンは、何故こんなにも美味しいのでしょうか?

私が食べるのを見たダンは、初めて見るパンに噛み付くと、衝撃を受けたような顔をして、思わず叫びます。

「うっめぇ!何だこれ?これが、おかしか?」

ダンにとっては衝撃の味だったようです。

お菓子に勘違いするほど喜んでくれて、嬉しい限りです。

ステラおばさんは、持っている袋の中にクロワッサンを入れようとしますが、私は注意をします。

「ステラおばさん、今食べた方がいいですよ。持って帰るとぺちゃんこに潰れて湿気てしまいます。持ち帰りのおみやげは、こちらのパンをどうぞ」

きっと、ステラおばさんはパンを持ち帰ると思って、パリジャンを買っておいて正解でした。

ステラおばさんは大きなパンを見て驚いています。

貧民街でパンはご馳走ですからね。

「あんた、チヤちゃん、こんな凄いものを、貰えないよ」

「いいんです。私とお母さんが貧民街で死なずに生きてこれたのは、ステラおばさんのおかげです。

今は、お母さんの実家に保護されているので、生活は安泰ですので、是非貰ってやってください」

ステラおばさんが手に持っているクロワッサンが落ちないように、ステラおばさんの手にパリジャン2本を押し付けてから、私は残りのクロワッサンを食べます。

サクッと音がして、バターの香りを楽しみながら味わって食べます。

ダンをチラリと見ると、欠食児童という言葉がぴったりな、成長期特有のヒョロリとした体型と、髪の毛が少なく、手も汚れて、爪もガタガタに伸びています。

1年前の私がそこにはいました。

ステラおばさんは恩人です。

ダンは遊び方を知らない私を家から連れ出してくれて、子供達の仲間に入れてくれました。

今からステラおばさんにお願いする仕事以外にも何か助けになることができないでしょうか?