軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2回目の商談をしましょう 3

塩を舐めんばかりに見ていたクルガー商会長だったが、はっ!とした顔をして、私の顔を凝視してきた。

「……もしかして、いや……もしかしなくても、岩塩も有る、とか、言わない、よな?」

期待しているのか?聞いただけなのかを判断出来なかったが、私は答えた。

「用意は出来ます」

「ほっ!本当か!?嘘じゃないよな!?」

「んー。……なんなら、見せましょうか?」

通販を使ったら、すぐに用意ができる。

「見せてくれ!いや!売ってくれ!」

何故か食いつきが良いな。

「理由を聞いてもいいですか?」

「君!?岩塩の価値を知らないで持ってるの!?岩塩だよ!?」

「少し値段の高いだけの塩じゃないですか。それに海塩よりも不純物が含まれてますよ?」

「本気で言ってる!?ねえ!?本気で言ってる!?」

ちょっとだけ、いや、かなり耳が痛い。

って言うか、うるさい。

「静かにしてくださいよ。岩塩を用意しませんよ?」

バッと口を手で塞ぐ行動に出たクルガー商会長は、その行為に意味が無いと気がついたのか、ただ単に息が苦しかったのか「すーっ、はーっ」と深呼吸をした。

その間に通販を開いて『岩塩業務用』で検索すると多数出て来たが、ピックアップして2種類にした。

「岩塩はパウダータイプと粒タイプがあります。どちらにしますか?」

「種類があるだと!?」

私は目を座らせてクルガー商会長を見た。

「う、る、さ、い、ですよ。試供品を用意しませんよ?」

「が!(小さい声)岩塩の試供品を貰えるのか?」

「そうですよ。パウダータイプですか?粒タイプですか?」

「(小さい声)パウダータイプとはどういう意味だ?」

あー、通じなかったか。えーっと。

「粉末って意味です」

すると、クルガー商会長は目を開いて悩み始めた。

「ぶつぶつ。粉末の方が使いやすいか?いや、粒じゃないと岩塩じゃないと疑われるか?どうしよう?どうすればいい?ユリカたすけて」

あーあー、聞こえてますよ。

混乱していますねぇ。

しかも、誰かに助けを求めてるし。

仕方がないなぁ。

大の大人が。

「いいです。両方とも用意します」

5kgの岩塩業務用を2つ購入した。

「あっ」

机の上に岩塩の段ボールが2つ出て……陶器のカップを吹き飛ばした。

「あーっ!」

私は急いで通販で『陶器 ティーカップ』で検索して今買える中で1番高いカップセットを選んだ後に購入した。

……岩塩の箱の上にティーカップの箱が出てきた。

気まずさから、私は無言で岩塩の包装をといてアイテムボックスにゴミを入れて、そそくさと、クルガー商会長が固まっている間に部屋を出た。

その後は、逃げるように乗り合い馬車の停留所までやって来た。

その間ずっと、心臓が嫌な音を立てていた。

(あーっ!やっちまったよっ!やっちまった!短気は損気だ!あーーーつ!!!謝らずに帰ってきちゃって!余計に罪悪感がーーー!!!)

と、内心チヤは大混乱だったのだが、本当はそんな事も無くーー

◇◇◇

インベルト・クルガー

はっ!僕は何をしていたんだ!?

あっ!チヤ君!?

ソファを見ると誰もいなくなっていた。

静かに立ち上がり、机の上に有る物を見ると、何故かティーカップのセットが置いてあった。

(商品の試用か?綺麗な茶器だ。こっちが、岩塩かーー!?ピンク色、だと!?何処の産地だ!?茶色じゃ無い!?綺麗すぎて本当に岩塩なのか?ペロリ。!!うまい!!岩塩だ!しかも極上の!!)

盛大な勘違いをしていた。

ティーカップセットは吹っ飛ばしてしまったティーカップのお詫びだし、岩塩は普通の品質だ。

むしろ業務用なので質は悪い方かもしれない。

インベルトの胸は喜びではち切れそうなほどワクワクしていた。

チヤと話している時から売り込み方は、ほとんど決まっていたのだ。

まずは、知り合いの貴族の何人かに声をかけて高級塩を無料提供するから料理人に料理をさせてみてくれとお願いして塩の使用感を聞き、ツテのある高級レストランにも持ち込みして料理をしてもらい、プロの舌で品質を確かめてもらう。

そして「どのくらいの値段なら買う」かを聞いて値段を決めたら、チヤに卸値を告げて毎月規定数卸してもらえるか交渉する。

インベルトは、その流れも伝えるつもりだったが、岩塩の登場で場が壊れた。

いや、インベルトが興奮して「場を壊してしまった」のだ。

幼いチヤですら、席を立つほど呆れさせてしまったーー。

と、思っているインベルトだが、チヤは別の意味で心臓に負担がかかっていた。

ティーカップを壊した罪悪感に。

そして、子供っぽく謝らずに逃げたことに。

(次は……8日後か。来たら今日の事を謝らないとな。それと、塩の件でいい成果を出さないとな!)

少し前向きになったインベルトは人を呼んで、倉庫に塩を運ばせて、カップが床に落ちている事に気がついた従業員が部屋を綺麗にして場を整えてくれた。(実はカップは割れていなかった)

ーーそして、インベルトがそこまで興奮してしまった岩塩の価値だが。

海塩より岩塩の方が値段がぐんっ!と高い。

海塩の2、3倍の値段がする。

国内で採掘出来る岩塩はある1つの領が独占販売しており、希少価値と肉料理に合う事から貴族に人気の塩だ。

ーーそれでも色は『茶色』の岩塩だ。

ピンク色の岩塩は値段がいくらになるのかインベルトにも予想ができない。

それをあの子供は、安い物を気軽にあげるように、ポンッ!と出してみせて、置いて帰った。

試供品として 無料(・・) で。

貴重な『岩塩』を。

普通では信じられないが、多分『スキル』の力だろう。

インベルトは詮索しないが、『少し前までゴブリン肉を食べていた』事実と『母親が病気』という事実に、「病気の治療ができないくらい金がない」という推論が立つが、「つい最近5歳になって学校に通っている」という発言から【何らかのスキル】で品物を手に入れていると簡単に予想ができる。

ーーインベルトにココまでバレている幼女チヤの危機管理意識は低い。