軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

商談しましょう 3

クルガー商会長は、私を罵倒して、褒めた後に、沈黙した。

いや、沈黙していない。

独り言をぶつぶつぶつぶつと言っている。

「こんなに白い石鹸を、600……いや、700……いや、化粧箱代もあるし、売値は1200?いや、ダメだ。あの商会に目をつけられる。いや、これを、売りに出した時点で敵だ。しかし、初めは、王家に献上しなければならないし……いや、売値は1200だ。化粧箱が高級品なら120……なら、卸値は、600、だ。よしっ!」

よしっ!で、大声を出されて驚いた!

静まれ!私の心臓!

「君!!いや、え〜っと、あっ!チヤ君!この石鹸を600ルビで降ろさないかね!?」

あまりの値段に取り繕う事も出来ずに、ホントの馬鹿面を晒していたら、なんか、誤解された。

って、いうか、私の名前忘れてたよね?

「あっ!いや、決して、決して!安く買い取ろうとなんて思っていない!妻に誓ってもいい!これが出せる精一杯なんだ!僕の商会はっ、『誠実』で通しているっ!同業者は馬鹿にするが、一定の固定客がいて経営は順調だ!600ルビで納得してくれっ!」

クルガー商会長のあまりの混乱っぷりに、冷静になってきた。

しかも、この植物石鹸は原価が50円だ。

600ルビで買い取りしてくれるなら5950円の儲けだ。

笑いが止まらないくらいの良取引だ!!

「そ!それで!お願いしまっす!

あ、で、でも、肌質に、合うのと、合わないのがあるので、実際に使ってみてから、値段を決めても、いいです、よ?」

クルガー商会長は、ホッとした顔をした後に、何かを思い出した顔をした。

「そういえば……君、まだ、石鹸の種類があるとか、言っていなかったか?」

何故かクルガー商会長の声がまた、怖くなった。

何故だ?

「はい、まだ、あります」

何故か私の声が小さい。

これはーー、怯えているのか?

私が?

精神年齢老人の、私が?

「かーーーーーーっつ!!!」

クルガー商会長が私の大声にビックリとしている。

私は立ち上がって仁王立ちする!!

「喝!!ですよ!怒ってはいけません!冷静になって話し合いましょう!!」

バンッ!!!

お!驚いた!!

扉が勝手に開いた!!

そして、知らないオヤジが顔を真っ赤にして怒鳴ってきた!

「静かにしてください!!!こっちは大事な商談だから!商業ギルドを使っているのですよ!!!うるっさいわっ!!!」

バンッ!!!

思わず、立ち上がってクルガー商会長に「喝!」を入れていた私と、体勢を崩していたクルガー商会長が、乱暴に閉じられた扉を見た後に、顔を見合わせてしまった。

「……ハゲオヤジの方が怖かったです」

「そうだな。怖かったな」

お互いに納得してしまった。

クルガー商会長は、深い息を吐いた。

「私の商会に行こう。歩いて来たので、少し遠いがゆっくりできる。そこで契約書も用意しよう。

まだ、話し合う必要があるからな」

「そうですね。取り引き先のお店は知っておきたいです」

2人で帰り仕舞いをして、商談室を出て、商業ギルドを出るまで静かだった。

しかし、商業ギルドを出てから、何故か、笑いが込み上げてきて、しまいには2人で馬鹿笑いをしてしまった!!

「ひーっ!あの、ハゲオヤジ!顔が真っ赤でした!ひっー!」

「ばっ、ばかっ!思い、ださせるなよっ!ははははっ!」

2人で、ひとしきり笑った後に、お店で薄いハーブティーをクルガー商会長が買ってくれて、おしゃべりしながら、飲み物片手に足取り軽く歩いていった。

「ばっか!お前、乗り合い馬車があるだろ!平民街からここは遠いんだぞ!帰りは乗り合い馬車で帰れよ!教会の近くなら『教会前』止まりがあるからな?」

「だって!お母さんは教えてくれなかったですもん!学校だって行き始めたばかりで、最近、初めて金貨と銀貨を触ったんですよ!」

「お前5歳か!?頭良いな!次の商談はお母さんを連れてこいよ?」

「駄目ですよ!お母さんこの間まで死にそうだったんですもん。水汲みに行っただけで、倒れました!あれは驚きました!」

「お父さんは何やってるんだ!」

「お父さんは死にました。お金が無くて、私、ゴブリン肉を食べてたんですよ?」

クルガー商会長が絶句した。

あ、ゴブリン肉は言わない方が良かった。

「聞かなかった事にしてください!私は何も言いませんでした!」

「あ、ああ、そうだな。何も言ってないな……」

しんみりとした空気は……やめてくださいよ……。

クルガー商会長が良い人すぎて、ツライ!!

だって!50円の石鹸を!6000円で売ろうとしている私ですから!!

仕方ないので、試供品や地球の美味しい食べ物を差し入れしますからね。

商業ギルドから30分くらい歩いた場所にインベルト商会がありました。

私の家が犬小屋に見えるくらいの綺麗な大きな、お店です。

「裏から入るぞ。商談室は2階だ。足、痛くないか?」

「痛いので、靴下を履きます。裸足になっても許してください」

「それくらいはいいよ。うちの子で見慣れてるから。気をつけろよ。階段がちょっと急だからな?」

商会長、優しいです。

ごめんなさい。

石鹸は50円なんです。

地球の技術に負けてください。