軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

使用人は『親戚』と思いなさい

チヤは『カレー』を食べ終えたお姉様に意見を聞いた。

「お姉様、カレーライスはどうでしたか?」

お姉様は紅潮した頬で感想を言った。

「なんとも、初めて食べるお味ね。とても高貴な味がしたわ。香辛料を贅沢に使っているのが分かるわね。それに、少しピリッとした辛味があって、食欲を増進させている気がしたわ。

はあ、それにしても今日はこんなに暑かったかしら?」

お姉様は給仕係にお水を頼んでいる。

チヤはそれを見て良く分かっているじゃないか、と少し上から目線だ。

「カレーには贅沢にスパイスが使われていますからね。その中には体を温める作用もあります。冬場などに食べると良いでしょうね。

ですが、今の時期に食べても美味しいです。

夏場に食べるカレーも乙なものです。

お母さんはどうでしたか?」

お母さんはお腹をさすっていた。

ん?何か違和感でもあっただろうか?

「チヤちゃん。カレーには、もしかして、お通じを良くする作用があるんじゃないかしら?

お母さんのお腹がびっくりしたのか、少しお腹がゴロゴロとしているわ」

いかにもお母さんらしい意見である。

チヤとしては味の感想を聞きたかったのだが。

「そうですね。強いスパイスも入っているので、その中にはお通じを良くする効能のモノもあります。

お母さんのお腹には少し刺激があったようですね」

「あ、あら、そうなのね?」と言った後に、お母さんはトイレに行ってしまった。

あれ?そんなに急激な作用は無かったはずだけど、お母さんは意外とお腹が弱いのかな?

そして、お母さんがトイレからスッキリとした顔をして戻ってくると、チヤが用意してもらったハイビスカスローズヒップティーを飲んだ。

ハイビスカスローズヒップティーは美容に良いので積極的に摂りたいものである。

若い頃から食べたモノで身体が作られるからね。

食後のお茶タイムに入ったお母さんがソファでくつろぎながら言った。

「最近、私、お通じが良くなかったのよ。でも、カレーを食べたら刺激があったのか、するりと出たわ。

チヤちゃん、定期的にカレーを食べましょうね?」

すっごいリラックスして、お母さんが言った。

えっ?お腹が弱かったんじゃないの?

お姉様も口を開く。

「そうねぇ。あの香りにはグッとくるわねぇ。異国的な香りで刺激的だわ。

食べる前には抵抗があったけれど、食べたらビビッとくるモノがあったのよ。

あら?私、今、とても贅沢なモノを食べているんじゃないしら?って」

ほう、長年貴族生活をしていたお姉様の舌は肥えていらっしゃるようだ。

私もこの屋敷に来てからは、貧民街で食べていたモノが腐りかけのモノだった事が良くわかる。

前世は便秘気味で、トイレの前で冷や汗をかいて倒れることもあったほどだけど、今世は結構お腹が強い。

やっぱり貧民街での粗食が良かったのかな?腐る一歩前のモノを食べていたからお腹が強くなったとか?

「あー、お父様やお母様の意見も聞いてみたいわね。

ええっと、ヨードラ?厨房に今夜、お父様とお母様にカレーをお出しするように伝えてもらえるかしら?」

お茶の給仕をしていたメイドの女性の名前を言ってお姉様がお願いする。

少し、ヨードラは驚いていたみたいだけれど、ニコリと笑って了承した後に「確認して参ります」と同僚と交代してから部屋から出て行った。

何故だか、伯父さんの名前が出なかったが良いのか?

「お姉様は、この屋敷に勤めている人の名前を全員覚えているのですか?」

私は素直に疑問に思った事を聞くとお姉様は笑った。

お母さんも何故か笑っている。

「いいえ、全員では無いけれど、この家の方針でね、出来るだけ身近な人の名前を覚えるようにするの。

私達の生活を支えてくれているのは、この屋敷の使用人よ。領地の使用人の方が距離は近いけれど……そうねぇ、使用人をチヤちゃんの親戚と考えてみてちょうだい。身近な身内、ね?きっと、チヤちゃんが困った時には使用人が助けてくれるわ」

お姉様の言葉に、部屋の中がふんわりと優しい気に包まれた気分になった。

部屋を見回すと使用人達が優しい顔をしている。

いつも無駄口を叩かないで、粛々と仕事をしてくれるけど、それは私達の家族の為だと良くわかる。

チヤはいつのまにか自分の影となって動いてくれるセーラやシャルフ、エルシーナがいて当たり前だと思っていなかったか?

むしろ初めは生活の邪魔だと思っていたが、良く考えもせずに便利に使っていなかったか?

そこに、感謝を覚えただろうか?

チヤはいつの間にか自分の中に芽生えていた『傲慢さ』に恥ずかしくなって、隣に座っているお母さんのお腹に顔を埋めた。

いつから『自分は偉くなった』と『守られて当たり前』だと勘違いしていたのか?

自分は『貧民街の子』だと言っていても『貴族の家族』だと、この豪華な生活を当たり前だと思っていたのか。

その矛盾に気がついた自分に猛烈に恥ずかしくなったのだ。

「あらあら、チヤちゃんは甘え坊さんね」

優しく、お母さんが頭を撫でてくれる。

お母さんの良い匂いに包まれて「考えを変えていこう」と、決意したチヤだった。