軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

黒魔法契約書にサインをしましょう

チヤが恐怖を克服した時に、「よしっ!」と気合いを入れたのがクルガー商会長だった。

クルガー商会長は立ち上がり、いつも魔法契約書を取りにいく棚に向かい、今まで見た事のない黒い紙と白いインクを持ってきた。

そして、チヤの向かいに座ると説明を始める。

「この魔法契約書は大きな金が動く時などに使われる重要な魔法契約書だ。

この黒魔法契約書を反故にすると、顔に魔法紋が浮かび上がり、国の専用機関で対応してもらわないと解除出来ない。

対となる黒魔法契約書の相手にも違う魔法紋が浮き上がり、加害者と被害者が明確になり、法的に罰則が加えられる。

はあ、いつ書いても黒魔法契約書は手が震えるよ。

黒魔法契約書には必ず専用インクでしか書けないようになっているから、注意するのは契約内容だ。

僕はチヤ君を騙さないけれど、他の商人は知らないからね。騙されないように注意してね」

長い注意をチヤに教えてくれるように言った後に、契約書を書くのに集中しだしたクルガー商会長を見て、チヤは本当に良い人に出会えたと心から感謝をした。

まあ、騙す人は、教習所の筆記試験のように、いやらしく騙すのだろうから自分だけで判断するのではなく、セーラのように思慮深い人に確認してもらって2重チェックすれば大丈夫だろう。

チヤは冷めたローズヒップティーを飲んだ。

◇◇◇

長い時間が経って、ポットの中が空になり「ショコリキサー」を私とセーラとシャルフで食べていた時に、クルガー商会長が大声を出した。

「よし!よし!契約内容が書けたぞ!全部で4枚だ!『収納鞄』の販売契約とチヤ君が僕に貸付け金をしてくれる額。

さて、黒魔法契約書は犯罪にも使われる魔法契約書だから、よく読んでサインをしてくれ」

クルガー商会長が黒魔法契約書を私の前の机の上に置いてくれたが、ちょっと待て!

今は『ショコリキサー』を食べているので水滴がついてしまう。

あ、クルガー商会長がティーポットの中身が無くてショックを受けている。

ポットを手に持って部屋から出て行った。

ローズヒップティーのおかわりを入れてくるのだろう。

なんだか、私が言うのもなんだが、クルガー商会長って運が悪いよね?(ティーポットの中身を飲み干したのは私達です)

さてさて、契約を急かしてきそうな相手はいなくなりました。

『ショコリキサー』を楽しみますかね。

安い買い物では無いですから味わって食べないと。

パクリ。

くぅ!しっかりしたチョコの味とちょっとビターで濃厚な味がたまりませんね!

その後、5分ほどで食べ終えたチヤは机の水滴を拭き取ってから黒魔法契約書を読み込んだ。

クルガー商会長の誠実さゆえか、わかりにくく書かれた文章は一つも無くて、子供にもわかりやすい契約内容になっていたので、一応だがセーラにも確認してもらって「問題ありません」とお墨付きをもらってから名前のサインをした。

『収納鞄』の販売には特に期限が設けられていなかったので、クルガー商会長のお金が用意でき次第の購入になると思われる。

それと、分割払いの件も「月にいくら支払う」と書かれていないのが少し不安だったが、クルガー商会長は信用している相手だし、わざわざ制約が有る黒魔法契約書に分割払いの件を書いてくれるくらいだから踏み倒しは無いだろうと、名前のサインをした。

なんか、白いインクで書くのは違和感がもりもりだった。

ちょうどいいタイミングでクルガー商会長がポットを持って帰って来てくれたので、『ショコリキサー』を食べてちょっとこってりとしていた口の中をローズヒップティーの酸っぱい清涼な味で洗い流した。

クルガー商会長が「金の用意ができたら連絡する」と言っていたので、了承してから黒魔法契約書を2枚貰ってアイテムボックスにしまって帰った。

その後は、チヤにとっては普通に日常が過ぎたが、チヤが就寝してから動き出す者達がいた。

侍女のセーラと筆頭護衛官のシャルフだ。

大旦那様の元に人目を気にして就寝前の部屋に入れてもらい、内密の話をした。

大旦那様と大奥様は同じ部屋で就寝される為、一緒に話をお聞きになったが、大旦那様が何も言わずに同席させるので、気にせずにセーラが話し、抜けているところをシャルフが補足した。

「うーむ、そうか、インベルト商会長が勘付いたか。わかった!報告をありがとう。『エルフ』の件はこちらでも調べてみるが、君達も『エルフ』については他言無用だ。

たとえ、家族であってもな」

そう報告した2人に言うと大旦那様は、棚からお金を取り出して2人に渡した。

それは、1人、金貨5枚であり、500万ルビ(5000万円)であった。

「口止め料だ。受け取ったら今日の事は忘れなさい。それがその方等の為になる。

絶対に誰にも話してはならんぞ」

大旦那様のドスの効いた声に圧倒されながらも了承した2人だった。

『噂』は口止め料を貰った事で『真実』だと知りながら。

実は『チェンヤー侯爵』と『パーベル商会』の大捕物で、気がついた者達は『スイード伯爵家の為に王家が動いた』と予想をして、それは『エルフ』の為だと関連付けて『インベルト商会の盗まれた積荷がチェンヤー侯爵家に有ったらしい』と言う情報が広がってしまい、インベルト商会に「この商品はエルフが作ったの!?」という真偽を確かめる!と意気込んだ貴族の命知らずがインベルト商会に突撃したのが真相だ。

そして、意外にも命知らずは多くて『商会長を呼びなさい!』というタカビーな奥様方に囲まれてお店で困惑していたのだ。

それで、クルガー商会長も短絡的に、チヤが『収納鞄を売る』と言った時に反射的に反応してしまい、失態を犯したのだ。

もうすぐで『エルフ』の逆鱗に触れるところだったクルガー商会長は、その後もビクビクと怯えながら過ごしたようだ。

『エルフ』の報復は怖い。