軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

071 普通の木……?

緑の魔法陣の上に光が集まっていき、樹を形作っていく。

まずは太い幹、そこから枝が伸び、さらに枝が分かれ、最後に無数の葉が広がる。

そうして、少しずつ輪郭がはっきりしていった、次の瞬間。

ぼんっ!

と、魔法陣の光が弾けるように消えた。

そこに現れたのは、一本の大木。

若木じゃなくて、最初からしっかりとした成木で、

幹は私が両手を回しても届かないくらい太くて、緑の葉もがたっぷりと茂っている。

「ほ、本当に木が丸ごと出てくるのね……」

「……すごいですな」

ヴィオラさんとクランクさんが呆然としながら木を見つめていた。

「へっへっへ、すごいやろ、ウチの召喚士は!」

パンさんが誇らしげな顔を浮かべるので、私もなんだかちょっと誇らしい。

……誇らしいんだけど、この力は全部ノヨカさんからもらったものだから、私が大きな顔をしちゃダメなんだよね。

まあ、そのことは誰にも言ってないんだけど。

「しかし……これは召喚、なのですかな? それとも建造魔法に近いものなのでしょうか?」

クランクさんが、ぽつりとそんなことを呟いた。

「え、どういうことですか?」

思わず聞き返すと、クランクさんは「ああ、失礼しました」と小さく頭を下げた。

「サキ殿の召喚術の核心に触れるようなことでしたな。無遠慮に詮索するべきではありませんでした。それよりも、何とも立派な木ですなぁ」

そう言って見上げるクランクさんに続いて、私たちも改めて木をまじまじと見る。

──これまでの召喚みたいに、ムキムキだったり、ガラスみたいだったり、門だったりはしない、普通の木。

でも何だか荘厳で威厳があって聖なる雰囲気を感じる気がするけど、それは一種の親バカだよね。

でも、そう思ったのはみんな同じだったみたいで……

「……なんとなくなんだけど、神聖さを感じるわね」

「まあ、これだけ立派な木を見ると、人間どこかしら神聖なもんを感じるんやろ」

「そうね。昔から、大木には神が宿るなんて言われることもあるもの」

「……そうなのですが、何だかオーラを感じますわね。というかほんのり光ってません?」

「ふむ……言われてみれば、光っているような……気のせいのような気もしますぞ」

みんなで、うーんと唸る。

私もそもそも普通のリュバンス樹を見たことがないので何とも言えない……。

ただ、みんなの言う通り、木全体から何となく清らかな空気のようなものが漂っている気がするかも。

まるで、この木の周りだけ空気が少し澄んでいるみたいな。

「よう見たら、ちゃんと果実もできとるな」

パンさんの視線の先には、小さな黄色い果実があった。

よく見ると、枝の先のあちこちに、ころんと丸い果実が実っている。

数は……十数個くらいかな?

「あれは普通のリュバンスの実とは違うんですか?」

「うーん、どうやろ。正直分からんわ。植物の専門家でもないしなあ」

「わたくしもですわ。普通のリュバンスの実よりも黄色が強いように見えますけど……個体差かもしれませんわね」

「というか、何だか黄金に輝いているようにも見えるけれど……」

「ですな……」

うーん、なんか言われてみれば輝いているような、いないような……

「確かに言われてみると、なんや高そうな実に見えてきたな。ほんなら、異常個体の”高級種”とかか?」

パンさんがそう言って、冗談めかして笑う。

「高級種って……。それより、当初の目的は目隠しでしょう? そのあたりはどうかしら」

ペールルージュさんがそう言って、ヴィオラさんへ視線を向ける。

さすがペールルージュさん、完全に忘れてた私と違って、ちゃんと本来の目的を覚えている……。

「そうね。……位置としては、かなり良いわ」

ヴィオラさんは少し離れた場所まで歩き、角度を変えながらリュバンス樹を見上げた。

さっき気にしていた場所を順番に確かめているみたい。

「……うん。いいわね。あの屋根から覗こうとしても枝葉が邪魔になるし、あっちの塔からも見えづらくなってる」

「おお! じゃあ目的達成ですね!」

「そうね。ただの目隠しとして考えるなら、十分すぎるくらいよ」

よかった……!

私が魔力を全部使って召喚した甲斐があった!

……つまり、今の私は魔力0。

またしばらく、マナエーテル生活だ……。

その後、ヴィオラさんは「もう少し実際の見え方を確認したい」と言って、ペールルージュさんと一緒にギルドルームの中へ戻っていった。

裏庭に残った私たちは、改めてリュバンス樹を見上げる。

立派な幹に、たっぷり茂った緑の葉。

その隙間に、ころころと小さな黄色い果実が実っている。

「そういえば、この樹になっとる果物は食べられるんよな?」

「お、おそらく……?」

「ほんならせっかくやし食べよや! 高級種やったら目の玉飛び出るくらい美味いかもわからんで」

そう言って、パンさんがどこからともなく高枝切りばさみを取り出した。

「な、なんでそんなもの持ってるんですの……!?」

「いや、前のギルドルームから持ってきただけや。捨てるんもったいなかったしな。ほら、こういう意外なときに役立つやろ? 見てみ、ルル! やっぱ捨てるなんてもったいなかったんや!」

……パンさん、ペールルージュさんに捨てろって言われてたんだろうな。

パンさんはものを捨てられないタイプ、ペールルージュさんは断捨離が上手いタイプと見た。

「スマンけど、ジョンソンはんとブルースはんにも手伝ってもらってもええか? ウチらやとちょい届かんわ」

「あ、もちろんです! ジョンソン、ブルース、お願いできる?」

私が声をかけると、二人は当然とばかりに無言で頷いた。

そしてリュバンス樹の前に立つと、パンさんから高枝切りばさみを受け取る。

ジョンソンが枝を支え、ブルースが器用に刃先を伸ばして──

ぱちん。

小さな音とともに、黄色い果実が一つ切り落とされた。

それをジョンソンが大きな手のひらで受け止め、無言のまま、そっと私に差し出してくる。

「二人ともありがとう!」

受け取った果実は、なんだか宝石みたいに綺麗で、パンさんの言う通り高級種だといわれても納得できるほど。

それに、香りもすごくいい……!

「よし、ほんなら早速切り分けて、みんなで試食としゃれこもか! ウチが切ってくるで!」

「あっ、ちょっと待ってください!」

もし、私の召喚したリュバンス樹が何か変わった個体で、果物に毒でも入ってたら大変だ。

でも、私も植物の専門家でもないし、毒が入ってるかなんてわからない。

──そこで、『アイテム』の出番だ。

アイテム欄に入れることで、アイテムの説明文を読めるんだよね。

私は『アイテム』を開き、果実を収納する。

すると、手の中の果実がふっと消えた。

そして、アイテム欄に新しい項目が追加される。

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【 聖脈果(せいみゃくか) 】 聖なる魔力の流れを宿した果実。一日に一度、食べると魔力最大値が上昇する。

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……私は、しばらくその説明文を見つめた。

「どうしたんや、サキはん? なんや固まっとるけど」

「えっ、いや、一応毒とかないか確認しようと思ったんですけど……」

「おおっ、やっぱり召喚主やとなんか分かるもんなんか! で、どうやった? やっぱ高級なやつやったか?」

「え、えーっと、食べて確認します!」

私はアイテム欄から【 聖脈果(せいみゃくか) 】を取り出すと……

──しゃくっ!

「ええええええっ!? サキはん、毒の確認って毒味!? 自らの体で確認っちゅうこと!?」

「あ、いや、ちょっと別のことを確認したくて……ていうか美味しっ!」

強い甘さがあるのに、全然しつこくない。

噛むたびに果汁がじゅわっと広がって、後味はすごく爽やか。

食感は梨に近いけど、もっと柔らかくて、口の中でほどける感じがする。

……とにかくおいしいけど、そんな食レポは置いといて!

それよりも私はステータスが気になる……!

驚愕するパンさんの横で、私はむしゃむしゃと【 聖脈果(せいみゃくか) 】を食べ進める。

そして最後の一口まで食べ終えると、すぐに『ステータス』を開いた。

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人間 召喚士 Lv. 18

【体 力】 23

【魔 力】 1(42)

【持久力】 23

【攻撃力】 1

【防御力】 1

【 運 】 999

【速 度】 1

【知 力】 1

【精神力】 1

【スキル】

亜人召喚Ⅰ 亜人召喚Ⅱ 亜人召喚Ⅲ

低魔召喚Ⅰ 低魔召喚Ⅱ 低魔召喚Ⅲ

中魔召喚Ⅰ 植物召喚Ⅰ 植物召喚Ⅱ

植物召喚Ⅲ 植物召喚Ⅳ

時短召喚術 召喚権限委任(サブマスター)

魔力回復量増加Ⅰ 帳尻合わせ(バランサー) Ⅰ

獲得経験値増Ⅰ

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「……上がってるっっっ!!??」

大丈夫か心配するパンさんの横で、私は思わず大きな声で呟いた。