軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

069 ギルドルーム大改造……!③

「それと、忘れてはいけないのが鍵ですな」

魔法障壁や監視網の話も一段落したところで、クランクさんが次の話題を口にした。

「せやったな。これもあとで見てもらおう思ってたんやけど、三階の棚の鍵を最新のやつに変えてほしいんや」

「最新のやつって……アバウトすぎよ、パン。魔法鍵のことよね?」

「あー、なんかそんなやつや」

「……毎度のことなんですけど、何を言ってるのかわかりません!!!」

「ああ、大丈夫や。ウチも鍵のことはよう分からんから」

「それは大丈夫なんですか!?」

「はっはっは、では、簡単にですが説明しましょう」

というわけで、クランクさんから説明を受けることに。

クランクさんの話によると、いわゆる普通の鍵──鍵穴に鍵を差し込んで、ガチャリと回して開けるタイプのものは、魔法や魔術の進化とともに、セキュリティ的に弱くなってるんだとか。

でもそりゃそうだよね……。

私は魔法に詳しくないけど、だって建造魔法であんな一瞬で建物が建つんだし、

その場で鍵穴に合う鍵を作ることだってできてもおかしくないよね。

そんな中、新しく登場した鍵のことを、物理鍵に対して、魔法鍵って呼ぶらしい。

特定の魔法回路に反応して開く仕組み……みたいな。

クランクさんが語る細かい理論はよく分からなかったけど、そんな感じ。

そういえば、黒塔のエレベーターみたいな魔導設備でも、イッシキさんが同じようなことをやってたのを思い出す。

……とはいえ、そういった開錠用の魔法や魔術は一般に広く出回っているわけではないし、

魔法鍵は設置にも維持にもお金がかかるので、

今でも世の中の鍵の大半は物理鍵なんだとか。

でも三階の倉庫には色々大事なものを置くつもりだし、そこに物理鍵っていうのはちょっと怖いな……って聞いてて思った。

「なるほど……大事なものを守る場所なら、魔法鍵の方がよさそうですね」

「そういうことですな」

その後もパンさん、ペールルージュさん、クランクさんで話し合って、細かいところを詰めていく。

「──では、三階の鍵付き棚は、すべて同じ系統の魔法鍵に交換する、ということでよろしいですかな」

クランクさんがそうまとめると、パンさんが腕を組んで頷いた。

「せやな。棚ごとに鍵が違うと面倒やし」

「では後は、作成する鍵の個数はどうしますかな?」

「せやなぁ、よく使うメンバー……ウチとサキはん、リンはん、ザラはんの四つあればええか。高いやろしな」

「そうですな。魔法鍵一つで金貨一枚となりますな」

「うわ高っ……いんやけど……全然安く思ってまうわ」

「……私が言うのもなんですが、麻痺してきましたな」

さっきまで金貨750枚!──とかやってたからね……。

「では、鍵は四つで進めておきますぞ」

「よっしゃ、それで頼むわ! あとやらないかんのは──」

「やっと私の出番かしら」

そう言って、ヴィオラさんが一歩前に出た。

「建物構造や周囲環境に応じた”弱点”の洗い出しね。パンさん、ギルドルームの見取り図はあるかしら?」

「もちろんや。ほら、用意しといたで」

パンさんはそう言って、テーブルの上に一枚の紙を広げた。

それは、このギルドルームの簡単な見取り図だった。

一階、二階、三階、そして裏庭。

出入口や窓の位置、大扉の場所まで描き込まれている。

ヴィオラさんは見取り図を自分の方へ引き寄せると、細い指で窓の位置をなぞりながら、じっと眺め始めた。

「……図面だけでも気になるところはいくつかあるわね。でも、実際に見てからの方がいいわ。中を見て回ってもいいかしら」

「ああ、もちろんや。案内するで」

こうして、みんなでギルドルーム防犯チェックツアー……というかヴィオラさんたちへのギルドルーム紹介が始まった。

まずは一階。

大扉、普段使っている玄関、裏庭へ続く扉、それに窓の位置や高さまで、ヴィオラさんはひとつひとつ丁寧に確認していく。

そして最後に暖炉の前まで来たところで、ヴィオラさんの視線がぴたりと止まった。

「あら、とってもかわいらしい彫刻ね。スライムの……ガラス細工かしら? でもどうして暖炉の中に置いてるの?」

「あっ、それは……!」

私が声を上げるより早く、ヴィオラさんが暖炉の中にある”透明な彫刻”へそっと手を伸ばした。

その指先が、つん、と表面に触れた瞬間。

──ぷよん。

「きゃあああっ!? 動いた、動いたわよいま!?」

「いやそりゃ動くで。生きとるんやから」

「い、生きてる!? 何を言ってるの!?」

「ガラスラさんといって、透明なスライムですわ」

「と、透明なスライム……? そんなのがいるの……?」

「わたくしも知らなかったのですが、でも、とっても賢い子ですわよ。こうすると──」

そう言いながら、リンドールさんは手に持っていた錬金の失敗作をガラスラくんに与えた。

すると、ガラスラくんはそれを少しずつ体内へ取り込んでいき──

「うわあつっ!? なんなのこれ!?」

「暖炉や」

「スライムじゃなかったの!?」

「スライムやけど、まあいつもの通り異常個体なんや。あんま気にせんといてや」

「……そ、そうだったわね。私としたことが、貴女たちのことでこれ以上驚くことはないと思ってたのだけれど……」

ヴィオラさんは額に手を当てて、深々とため息をついた。

そう、ガラスラくんは現在、パンさんの思惑通り、暖炉としても活躍している。

最初は失敗作を取り込んで燃やしそうになっていたけど、どうやら思った以上に賢い子だったらしく、「燃やしてはいけませんわ」と教え込んだ結果、今では失敗作に触れてる箇所は高温にならないようにするという器用なことができるようになったんだよね!

こうして、ガラスラくんは失敗作の処理と、高温になる特性を利用した暖炉を同時にこなせるようになった。

なので、みんなで一階にいるときは、ガラスラくんも暖炉の中で一緒に過ごしながら、お仕事も頑張ってもらえるわけだ。

……そしてここだけの話、ガラスラくんは続々と”魔力の結晶体”を生み出し続けていた。

リンドールさん曰く、「失敗作に含まれる魔力を結晶化している」のではないか、とのこと。

実際、ガラスラくんは一日一個くらいのペースで排出するものだから、ちょくちょく暖炉を見に行っては回収するようにしている。

……いや、そんなデイリーボーナス感覚で国宝級の魔石を生み出されても困るんだけど、

「もう一個も二個も一緒や!」ってことになった……。

でもまあ、そのおかげで、あんまり燃費を気にせずに魔術具や魔導設備を使えるってわけだし、

「他にも便利な魔術具を試してみたいね」ってみんなで話してたんだよね。

「……とりあえず、一階は把握したわ。次は二階をお願いできるかしら」

というわけで、二階へ。

二階の個室を順に見ていく中で、ヴィオラさんはまた窓などを一つひとつ確認しながら、見取り図に何か書き込んでいた。

そして、最後に向かったのはリンドールさんの錬金部屋。

──扉を開けた瞬間、ヴィオラさんとクランクさんが同時に声を上げた。

「……これは」

「おお……!」

中には、リンドールさんが買い揃えた錬金設備の数々。

調合台や錬金炉、その他にも、私には用途の分からないものがずらりと並んでいる。

「す、すごいわね……五大ギルド以外でここまでの錬金設備を用意できるところなんて、そう多くないわよ」

「いやはや、相当なものですな……!」

「ふっふっふ、当然ですわ。グランベルジュにふさわしい錬金設備でしょう?」

リンドールさんが誇らしげに胸を張る。

「……ただ、失敗作の山がすごいわね」

「さあ、次の部屋に参りましょう」

「…………そうね」

「リンはんの失敗回数をログに表示できへんか?」

「そ、それだけは絶対にやめてほしいですわ!!!」

──次は三階。

ここは、今のところ倉庫として使っている場所だ。

鍵付きの棚がずらりと並んでいて、その中にはザラやゴブリンズが持ち帰ってきてくれた大量のドロップアイテムが保管されている。

「まあ、ここはちょっと見てもらうだけやけどな」

そう言って、パンさんが棚の一つを開ける。

中には、 粘魔核(スライムコア) がぎっしり。

最初はちゃんと並べてたんだけど、もう入手量と(リンドールさんの)消費量が凄すぎて、最近は放り込んでるから、ぐちゃぐちゃなんだよね……。

「……」

「……」

ヴィオラさんとクランクさんが無言になる。

「で、こっちは 魔狼の眼球(ガルムアイ) や」

続けてパンさんが別の棚を開けると、そこにもぎっしりとアイテムが詰まっていた。

「で、こっちは 小鬼の革袋(ゴブリンバッグ) で、奥がバジリスクのタマゴとワイバーンのタマゴや」

「血結晶はこちらですわ。マナエーテルの材料に使いますので、あんまり数はありませんが」

ヴィオラさんは、しばらく無言で棚の中を見つめていた。

それから、ゆっくりと私の方へ視線を向ける。

「……ちなみに、どのくらいあるの?」

「えーっと、管理簿に書かれててですね……」

一個一個、読み上げていく。

粘魔核(スライムコア) ……178個

魔狼の眼球(ガルムアイ) ……791個

小鬼の革袋(ゴブリンバッグ) ……318個

バジリスクのタマゴ……385個

ワイバーンのタマゴ……274個

血結晶……96個

「レアドロップって、何なのかしらね」

クランクさんも、しばらくあんぐりと口を開けたまま固まっていた。

「これほどの素材が、一ギルドの倉庫に……。ここはもはや宝物庫ですな」

「せやから、鍵も障壁も監視網も要るっちゅうわけや」

「納得しましたぞ。これほど防備に金をかけるのも、当然というものですな……!!」

──そして最後に、裏庭。

庭に出るなり、ヴィオラさんはすっと目を細め、周りを見回す。

塀の高さ、隣の建物の屋根、窓、そして離れた場所の高い建物まで……それらを順番に確かめていく。

「……これで一通り見たことになるかしら」

「せやな。どうやった?」

「一番気になるのは、ここね」

「裏庭、ですか?」

思わず聞き返す。

裏庭って塀に囲まれてるし、外からはあまり見えない場所だと思っていたんだけど……。

「ほら、あそこの屋根の上とか、あの遠くにある細い塔からとか……結構、覗き放題、狙い放題よ?」

「えっ、そんなに……?」

確かに通りからは塀に遮られて見えないけど、高いところからは覗き放題かもしれない……。

いくら魔法障壁で魔法的な覗き見を防いでも、普通に目で見られていたら意味ないね……。

「ほんなら、もっと塀を高くするとかか?……せやけど、嫌やな正直」

「そうですわね……圧迫感が……」

「せっかく開放的な裏庭だもの、それは避けたいわね」

みんなが口々にそう言った。

確かにたかーい塀で囲えばいいかもだけど、

それだと日当たりも悪くなるし、みんなの言う通り窮屈に感じちゃうかも……。

「そうね。気持ちは分かるわ。そういうときにオススメなのは、”木”ね」

「なるほど、木か……!」

「目隠しにもなるし、射線も切れる。何より自然だしね。できれば背の高い木を数本……でも、今から植えて育つのを待つには時間がかかるわね」

「せやなぁ、どうするか……」

「大きな木を買ってくるとしたら、搬入も大変ですな。根の処理も必要ですし……」

ヴィオラさんとクランクさんが、真面目に相談を始める。

確かにねー、ゲームみたいにポンっと木を植えられたらいいんだけど……。

……あれ? 何か思い当たるものが……。