作品タイトル不明
025 ギルドバトル当日!
ついにやってきた、ギルドバトル当日。
私たちグランベルジュのメンバーは、今日のギルドバトルの会場── 断風演習地(ブレイク・フィールド) にやってきた。
「おお、随分と広いなぁ」
「相手は108人だもの。これくらい広くないと入らないってこと」
108──その数字を聞くと、やっぱり怖い。
だって100人だよ!?
もう小っちゃな戦争じゃん!
……いやいや、怖気づいていたらダメ。
今日は”勝ち”に来てるんだから。
断風演習地(ブレイク・フィールド) は石柱に囲まれた原っぱで、石柱の間がうすーい結界で覆われているんだとか。
これは野生の魔物とか、旅人や商人が気付かずに入っちゃうことを防ぐためなんだって。
結界の入り口に行くと、そこにはいつもの受付嬢さんの姿があった。
「あっ、受付嬢さん! 今日はこっちでもお仕事なんですね?」
「サキさんじゃないですか! そうなんです、ギルドバトルのお仕事は結構稼げて──じゃなくて。そっか、グランベルジュってサキさんの所属ギルドだったんですね?」
「そうなんです。なんかギルドバトルを仕掛けられちゃって……」
私が苦い顔をすると、受付嬢さんが何やら手元の紙をめくる。
「相手のギルドってこの前のぶっ飛ばされた三人組のとこなんですか!? 仕返しとか、ダサいですね~!」
そう言って「うわぁ……」とドン引きする受付嬢さんに、思わず笑ってしまう。
おかげで、少しだけ緊張が解けた。
「……ていうか、相手の数めちゃくちゃ多いじゃないですか!? サキさん、大丈夫なんですか……?」
「大丈夫──かは分かりません。でも、策は考えてきました! やれるだけやってみようと思います……!」
そう、策はある。
無い頭を捻りに捻って、捻り出した苦し紛れの策が。
試してもない、ぶっつけ本番、できないかもしれない。
でも、これしか思いつかなかったんだよね。
「無理はしないでくださいね?」
「ありがとうございます。……勝つんで、見ててください!」
私は覚悟を決めると、受付嬢さんと別れ、先に行っていたパンさんの横に並ぶ。
「見てみ、向こうの軍勢。大人げないなぁ、乗騎に建造物まで──本気で勝ちに来とる。たった三人のギルドになぁ」
見ると、そこには本当にたくさんの人や馬の姿、そして小さな城塞のような建造物が建っていた。
きっとあれが、建造魔法とやらで造られた建物なんだろう。
確かに、あそこに籠もられると倒すのは大変そう……。
なんて思っていると、私たちの横に一人の男性が並び立った。
鎧でしっかりと武装したルーアンさんだ。
その手には、自身の背丈ほどもある巨大な盾を持っていた。
「ドルトステラも到着しました。私を含めて七人──言われた通り、全員大盾を装備してます」
振り返ると、そこにはドルトステラのギルドメンバー六人が立っていた。
みんなしっかりと武装済みで、やっぱり巨大盾を装備している。
「おっ、ありがとさん! ほんまでっかい盾やなぁ!」
私たちが依頼したことなんだけど、盾の大きさにパンさんと二人で唖然としてしまう。
「驚きましたよ。いきなり前日に『出来るだけデカい盾を装備してきて』って言われるんですから」
「それはすまん……。でも急に言われても用意できるんは、流石、鍛冶のギルドなだけあるわ」
「大変だったんですから……。それと、例のものも用意しています。今、お渡ししますか?」
例の──ああ、アレね。
私はパンさんと目配せを交わす。
「それなら後でサキはんに手渡してくれ。せやな、開始直後にしよか。相手を油断させる意味でも、サキはんは手ぶらの方がええやろ」
パンさんの言葉に、私も頷く。
ルーアンさんも同じように頷き返した。
──今回は、一回限りの奥の手。
──今後はこんなことが無いように、ギルドとしてしっかり準備しておこう。
パンさんたちと何度も言い合ったことが頭をよぎる。
「とりあえず、まずはお相手と挨拶や。ルーアンはんもドルトステラ代表として来てくれ。サキはん、アルテミスはんも一緒に頼むわ」
「……はいっ!」
「もちろん、マスターと同行します」
ちょっと怖いけど、相手の出方を見れるし、相手を油断させるチャンスだよね。
私はちょっと震える足で、みんなと一緒に 断風演習地(ブレイク・フィールド) の中央へ向かった。
◇
断風演習地(ブレイク・フィールド) の中央に、両陣営の代表者七人が並ぶ。
向こう側には、長身の男の人と、細身の女の人、そしてふくよかなおじさん。
こっちは、パンさんとルーアンさん、アルテミス、そして私だ。
「うぃーす、おつかれさまです。今日は来てくれてありがとうございまーす」
口火を切ったのは、長身の男の人。
何だかこっちの緊張とかガン無視で、随分と軽い口調……。
「お疲れさん。アンタがパラッパ・レードのギルドマスター、レードはんやな?」
「ですです。で、こっちが 紫羽の庭(パープル・フェザー) のヴィオラさんで、こっちが 黄歯車団(イエロー・ギア) のクランクさん」
レードさんがそう言うと、細身の女の人とふくよかなおじさんが一歩前に出た。
「初めまして。その……今日は遠慮なくやらせてもらうわ」
この長い紫の髪の女性が、ヴィオラさん。
事前の情報だと、この国で一、二を争う弓の名手なんだとか。
今回の超要注意人物だ。
「どうも。わたくしたち 黄歯車団(イエロー・ギア) も、手加減せず行きますね」
このおじさんが、クランクさん。
彼らのギルドは建造魔法の使い手が多く、こうしてギルドバトルに同盟として参加することが多いんだとか。
でもギルドマスターごと参加するってことは、絶対勝てると思われてるってことだよね……。
「いやあ、手加減は全然してくれてかまわへんけどな。じゃ、こっちも自己紹介させてもらうわ。ウチがグランベルジュのギルドマスター、パンや。この子はメンバーのサキはん。その召喚獣のアルテミスはん」
パンさんがそう言った瞬間、向こうの陣営から驚きの声が上がった。
「金髪の女──こいつが……」
「……召喚獣? エルフ、ってこと?」
「せや。まあちょっと普通のエルフとは違う見た目やけど、あんま気にせんとってくれ。後は、今回同盟を結ばせてもろたドルトステラのルーアンはんや」
「初めまして、ルーアンと申します。今日はギルドマスターのオルダンに代わって参加しています」
ルーアンさんのその一言を聞いた瞬間、向こうの安堵が伝わってきた。
「あー、烈火のオルダンはいないんですね。一目会ってみたかったんだけどなぁ」
「……それなら今から呼んできましょうか」
「いや冗談ですって!……でもオルダンがいないなら、まあ、ねぇ」
そう言うと、レードさんはヴィオラさんやクランクさんを見る。
まるで、もう勝ちましたとでも言わんばかり。
……でもこれは油断してるってことだから、こっちとしてはありがたい。
ここは下手に出て、さらに油断を──
「ま、何にせよこっちはご覧の通り人が少ないもんでな。アンタらみたいにお馬さんもおらんし」
パンさんがそう言うと、レードさんがクスっと笑う。
「これが”人脈”ですよ。どうですか? ドルトステラの皆さんも今後はいいお付き合いを──」
「すまんなぁ、ウチらにはお遊びに付き合うとる時間が無くてなぁ」
──ちょ、ちょっとパンさん!?
すっごい笑顔だけど、もしかしてイライラしてる……!?
「そうですね。師匠が貴方のような薄っぺらいギルドマスターじゃなくて良かったです」
ルーアンさんまで!?
「全員殺します」
アルテミスは黙ってて!?
「……まあまあ、今日はいい勝負にしましょう!……あっ、降参したくなったら言ってくださいね?」
「おーお気遣いありがとさん。ま、お互い降参は無しでいこか。──正々堂々、最後までやろうや」
「……後悔すんなよ」
「こっちのセリフや、ガキ」
……こうして、顔合わせは終了した。