軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第53話 冒険者登録

冒険者ギルドのエントランスはかなり広々としており、その三分の二はフードコートを思わせる空間で、百人を超える冒険者たちが自由に集まり、飲酒や食事を楽しみながら談笑している。

残りの三分の一には複数の受付窓口が 設(もう) けられ、その前に待合用の長椅子が並べられている。壁には掲示物がびっしりと貼られ、そこにも多くの冒険者たちが群がっていた。

各受付には番号が割り当てられていて、その前には案内板が設置されている。

1〜2番受付 C級以上

3〜5番受付 D~F級

6〜8番受付 G~H級

9〜10番受付 I~J級および新規登録

どの受付も数人ずつ並んでいて、ミズトは一番右の列についた。

(誰も俺のことなんて気にしてないようだな)

ミズトは敵意ある視線を感じないことにホッとした。

【この町ではミズトさんが目立つ理由はないようです】

(ホント助かるな。ところでC級とかD級とか冒険者の階級っぽいけど、最初はJ級からってことだよな? この紙の依頼に書いてある、J級までの依頼だけ受けられるってことか?)

ミズトは並びながら、目の前の壁に貼ってある紙を見た。

【はい、登録時はJ級から始まり、依頼達成の実績により階級が上昇します。それぞれの依頼には、受けるために必要な階級が記されています】

(ふうん)

先ほどクレアという女性が騒いでいた気持ちも少し理解できた。

J級で受けられる依頼は、たしかにロクなのがなさそうなのだ。

『下水道ねずみ駆除』

『ゴミ出し場の清掃』

『薬草採取』

視界に入る内容はこんなものばかりだ。

報酬も200G前後と低く、多くの依頼をこなさなければ、とても生活できるとは思えない。

ミズトが見つけた宿は、クロも一人分の部屋代を要求され、費用が思った以上にかさむので、それなりの収入が必要なのだ。

いざとなればテントで暮らすこともできるが、できればそれは避けたかった。

「次の方、どうぞ」

そうこうしているうちにミズトの順番になった。

「どういったご用件でしょうか?」

受付の前まで進むと、受付の女性がミズトに言った。

どの受付も同じデザインの服を着ていて、大きな会社の受付嬢のようにスマートな出で立ちだ。

「冒険者登録をしたいのですが」

「初めての方ですね。フェアリプス王国の国民証はお持ちでしょうか?」

「いえ、持っていません」

「でしたら鑑定が必要になります。どうぞこちらへ」

受付の女性は、受付業務を代わるよう近くの職員に言うと、自らミズトを案内した。

受付横にある通路の奥へ進むと、女性は部屋の前で立ち止まり木製の扉を開けた。

扉の札には『鑑定室』という文字が見えた。

「こちらが鑑定室になります。真ん中の台にある『鑑定球』に触れてください」

受付の女性はそう言って、ミズトに部屋へ入るよう 促(うなが) した。

中へ入ると何の飾り気もない小さな部屋だったが、部屋の中央に台があり、その上に水晶玉のような物体が置いてあった。

====================

アイテム名:鑑定球

カテゴリ:魔法具

ランク:4

品質 :高品質

効果 :触れた者のステータスを表示

====================

「これに触るということですね」

ミズトは『鑑定球』の前まで行き手を乗せた。

====================

ミズト・アマノ LV7

種族 :人間

所属 :なし

加護 :火の精霊

クラス:魔法使い(熟練度1)

転生者(熟練度1)

ステータス

筋力 :E

生命力:E

知力 :E(+E)

精神力:E

敏捷性:E

器用さ:E

====================

「クラスが二つ……? あ、ミズトさんはもしかして、 異界人(いかいびと) の方でしょうか?」

「はい、そう呼ばれているようです」

「キャッ! 初めてお目にかかりました!! レベル7でこれほどステータスが高いわけですね!」

(Eが高いのか??)

【この世界の人はそう感じるのが普通でしょう。ミズトさんたち異界人はステータスが最初から固定されていますが、この世界の人々はレベルの上昇に合わせてステータスも上がっていきます。通常、ステータスがEに達するのはレベル40台からとなります】

(なるほど、そういう細かい仕様の違いもあるのか)

「ステータス確認が完了しました。これから冒険者ギルド証を発行して参りますので、受付前にある席でお待ちください」

受付の女性は持参した紙に何かを記入し終わると、ミズトにそう言った。

それからミズトは受付前に戻り椅子に座って待つ。

五分ほどで十番の受付に呼ばれた。

「ミズトさん、お待たせしました。こちらが冒険者ギルド証になります」

鑑定をした女性が十番の受付に戻っていた。

「ありがとうございます。このカードが冒険者ギルド証ですね」

ミズトはクレジットカードのようなアイテムを受け取った。

この世界にプラスチックは無いだろうが、紙や木でもなさそうだった。

アイテムのカテゴリが『魔法具』となっているので、特殊な素材なのだろう。

「はい、冒険者ギルド証は全世界共通でご利用でき、表面にはお名前、種族、クラス、冒険者階級が表示され、裏面には冒険者ギルドから受領中の依頼が表示されます。依頼は達成されると文字の色が黒から青に変わります」

受付の女性は、そのまま冒険者ギルドの規約や仕組みを簡単に説明すると、最後に心がけるべき注意点を付け加えた。

「冒険者は登録後、最初の一年がもっとも命を落とす確率が高くなっています。 異界人(いかいびと) の方でも決して慢心せず、身の丈にあった依頼から順番に始めてください。とくにダンジョンに関わる依頼の場合は、必ずパーティを組んで生存率を高めてください。よろしいでしょうか?」

最後の言葉は語気を強めた。

これほどの規模の冒険者ギルドだ。

彼女はきっと様々な冒険者たちと接してきて、中には命を落とす者もいたのだろう。

そんな経験から言わせている言葉なのだとミズトは感じた。

「貴重なご意見ありがとうございます。私も自分の命が大事ですので、慎重に冒険者として生活していきたいと思います」

(パーティなんて組まないけどな)

ミズトは頭を下げた。

「はい、ぜひお願いしますね! 説明は以上です。何かあればいつでも九番十番窓口にお越しください。朝と夕方以外は比較的空いてますので」

「ありがとうございます。その際はまたよろしくお願いします」

元々の目的は身分証代わりになる冒険者ギルド証を手に入れること。

これさえ手に入れば後はどうでもよかったので、ミズトは興味があるフリをしながら愛想よく返事をすると、早々に冒険者ギルドを出た。