軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第46話 救助

翌日、ミズトは街道を外れて走っていた。

街道を通る人々は馬車より徒歩の方が圧倒的に多く、皆が歩いているその横を走り抜けるのは、目立ちそうでどうも恥ずかしかった。

(エデンさん、道案内は頼むぞ)

【かしこまりました、お任せください。どうせでしたらポーション類の材料となるものを採取しながら進むのはいかがでしょうか? 万能生産者の熟練度が7になったミズトさんは、調合できるポーションが増えております】

(ああ、地下洞窟のとき散々中級ポーションを作ったからな。分かった、材料を採取できそうなコースで頼む)

【かしこまりました】

その日、ミズトは移動速度を考慮した道順をエデンに案内されたせいで、街道から遠く離れ、かなり奥地まで行くはめになった。

おかげでのんびりした旅のはずが、モンスターとの戦闘に明け暮れる旅になっていた。

(これじゃ移動が目的か採取が目的か分かんなくね?)

ミズトはエデンに苦情を申し立てた。

【ご安心ください、ミズトさんが一日で次の町へ到着可能で、最も効率よくポーションの材料を採取できる道順を選択しております。また、新たに習得した魔法を実戦で試すことも考慮に入れました】

(あっそう…………)

仕留めたばかりのゴブリンジェネラルが消滅する様を見ながら、エデンに何かを任せるときは詳細を確認しようとミズトは心に誓った。

(ところでエデンさん、モンスター同士で戦うことってよくあることなのか?)

【はい、魔力によって存在しているモンスターでも、生命活動を営んでいることには変わりありません。そのため生存競争に必要な戦闘が発生することは考えられます】

(なるほど)

ミズトは少し離れた場所でモンスター同士の戦闘らしきものを察知していた。

エデンの言っていることは納得したのだが、今までそれを察知したことはなかった。

それに、戦っている片方はゴブリンの集団だと分かったが、もう片方が何か分からない。人間ではないことは確かなのだが。

「ちょっとだけ見てみるか」

なんとなくその場所へ寄ってみる気になった。

到着してみれば、戦っていたのはやはりゴブリン。

フォレストゴブリンではなくゴブリンファイターやゴブリンメイジなのは、つい先ほど遭遇したゴブリンジェネラルを中心とした数百体のゴブリン軍勢の生き残りってことかもしれない。

対するモンスターは――――――ただの子犬にしか見えなかった。

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ブラックフェンリル LV1

属性:火水風地

ステータス

筋力 :I

生命力:I

知力 :I

精神力:I

敏捷性:I

器用さ:I

成長力:A

存在力:A

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(フェンリル? フェンリルって精霊じゃないのか? セシルが召喚してたし)

【はい、フェンリルは氷の精霊です。ただし、精霊界ではなくこちらの世界で生活している精霊は珍しいと言えます。なお、ブラックフェンリルという精霊やモンスターは、わたしのデータにはありません】

(ふうん、なんか弱そうだし、フェンリルの劣化版種族みたいなもんかね)

ミズトはブラックフェンリルを観察した。

見た目はどう見てもただの子犬。色も黒いしフェンリルには見えない。

ただ、受ける印象はセシルの召喚したウンディーネやフェンリルのような精霊に近い。

同じ犬でもシェパードやドーベルマンのような犬種もいれば、チワワのような犬種もいる。

それと似たように白く大きなフェンリルもいれば、子犬のようなフェンリルもいるのかもしれない。

ミズトはそう思うことにした。

「ワンワンワンワン!」

ブラックフェンリルは子犬のようにゴブリン達へ吠えている。

それを取り囲む五体のゴブリン達は、少しも 怯(ひる) むことなくブラックフェンリルに詰め寄ってくる。

そして、棍棒を持ったゴブリンファイターが殴りかかった。

「キャウゥゥン……?!」

ブラックフェンリルの小さな身体は簡単に飛ばされて、木に叩きつけられた。

「ゥゥゥゥン……」

一発で虫の息だ。

戦闘というより、ゴブリンの狩りだったのかもしれない。

人間同士の争いにも興味ないミズトが、モンスター同士の争いに興味あるはずがない。

どちらがどうなろうがどうでもいいことなのだが、片方がモンスターというより子犬に見えて、ミズトはそこから立ち去れずにいた。

【ミズトさん、限定ではありませんが、クエストが発生しているので一応お知らせします】

(ん? なんか 曖昧(あいまい) な言い方だな)

ミズトはエデンのよく分からない表現に引っ掛かりながら、素直にクエストを表示させた。

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◆クエスト発生◆

クエスト名:ブラックフェンリルの救助

ブラックフェンリルを救ってください。

報酬:経験値10

金10G

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(……エデンさん、言っておくが俺は動物好きってわけじゃないぜ。犬も猫も飼ったことないしな)

ミズトはそう言いながら、助ける口実ができて無意識に喜んでいた。

「ギィェーーー!」

そうこうしているうちに、五体のゴブリンが一斉にブラックフェンリルへ飛び掛かっていった。

しかし、それらが一歩目を動く前に、ミズトは魔法を唱える。

「ストーンバレット」

小石が五体を同時に貫き、ゴブリン達は一瞬で絶命した。

ブラックフェンリルへ目を向けると、苦しそうに倒れたままだった。

このまま放置すると長くは持たなそうだ。

(モンスターにポーションを飲ませても大丈夫か?)

ミズトはマジックバッグから初級ポーションを取り出しながら、ブラックフェンリルへ近づいた。

【モンスターでもポーションを飲ませることは問題ありませんが、体力の回復ではなく、傷を治すだけなら浴びせるだけでも治療可能です】

(飲まなくてもいいのか!?)

ずいぶん今さら言うな、と思いながらブラックフェンリルに初級ポーションを掛けた。

するとみるみるうちに傷が 塞(ふさ) がり、ブラックフェンリルは元気を取り戻していく。

「ワン!? ワンワンワンワン!」

自分がなぜ助かったのか理解しているかのごとく、嬉しそうに尻尾を振りながらミズトの周りを駆け回った。

(やっぱりこれ、ただの犬じゃないのか?)

【ステータスが表示されるのであれば、普通の動物ではありません】

(だったよな……)

ミズトはブラックフェンリルを見下ろしながら、そのフワフワな黒い体毛を撫でようか悩んでいた。