軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第231話 誇り高き騎馬民族トゥルガイ

「何者だ、貴様たち!」

集落に近づくと、馬に乗った男がそう叫びながらやってきた。

鎧ではなく、見慣れない装飾があちこちに施された、民族衣装のような革の上着を着ていた。手には槍を構えている。

馬車が止まると、ウィルは剣と盾を馬車に置いたまま降りた。

「驚かせてすまない。我々は通りすがりの冒険者だ」

ウィルは両手を上げて、男に話しかけた。

「冒険者だと?」

「ああ、そうだ。ハイデルンへ行く途中なのだが、相方の 異界人(いかいびと) が、せっかくの巡り合わせだし寄ってみようと言い出してな」

ウィルは人懐っこい笑顔を見せた。

(は? たしかに似たようなことは言ったが……)

ミズトも杖をしまうと、両手を見せながら馬車を降りた。

「ほう、この世界の者と 異界人(いかいびと) の組み合わせか、珍しいな。ここは誇り高き騎馬民族トゥルガイの集落だ。俺たちは敵意のない者を無下にしたりはしない。武器を持たないというなら、族長のところへ案内してやろう」

男はウィルの迷いのない瞳を見て、毒気を抜かれたように槍の構えを解いた。

ミズトには警戒心が消えたのが分かった。

(おいおい、受け入れるの早くないか?)

【ウィルさんの持つ特性と思ってください】

(なるほど、たしかに人たらし的な要素があるかもな、こいつ)

ミズトはエデンの説明を妙に納得した。

それからミズトとウィルは、男に一番大きなテントへ案内された。

どのテントも、男の着ている革の服と同系統の装飾が施されているが、このテントだけ特別な装飾なのだとミズトでも分かった。

中に入ると、その特別な装飾と同じ革の服を着た、三十代半ばの男が座っていた。

レベル65の人間で、彼が族長のようだ。

「よく来た、旅の方々よ。私は騎馬民族『トゥルガイ』の族長ケイリアスだ。我ら誇り高き騎馬民族『トゥルガイ』は、旅人を同志として迎え入れ、必要であれば手助けをしている。何か困ったことがあれば何でも言ってくれ」

騎馬民族『トゥルガイ』の族長ケイリアスは、背筋を伸ばし、微動だにせずミズトとウィルを見て言った。

悪意や敵意は感じない。彼の言葉に嘘偽りはないのだろう。

「おお、それは有難い言葉だ! 俺は冒険者のウィル。こっちが相方のミズトだ!」

「そうか。ウィル、ミズトよ、よろしく頼む。それで、二人はそれなりの冒険者に見えるが、何に困っているというのだ?」

ケイリアスはウィルに返した。

「いや、なに。俺たちは冒険者だ。キミたちが困っている旅人を助けるように、冒険者ってのは困っている人々を助けるのが仕事だ」

(いや……違うと思うが……)

「だから冒険者である俺たちは、キミたちが困っていないか聞きたい! 困っていることを手助けに来たんだ!」

「なんと!? この我々を助けにだと?」

「ああ、そうだ! 何でも言ってくれと言うなら、困っていることを俺たちに教えてくれ!」

ウィルは屈託のない笑顔で言った。

「我らの困っていること……はは……はははははっ!! 愉快! なんて愉快な男だ、ウィルよ!! 我らが誇り高き騎馬民族であるように、おぬしは誇り高き冒険者というのだな!!」

ケイリアスは楽しそうに笑っている。

「そのとおりだ! 俺は冒険者として、人々を救うことに誇りを持っている!」

(誇りって……あなた冒険者としては新人みたいなもんですけど……)

「気に入った! 気に入ったぞ、ウィル、ミズトよ!! 人々を助ける誇りを持った二人を、我ら騎馬民族『トゥルガイ』は歓迎する!!」

(んんん……俺も一緒に 括(くく) られるのは……)

ミズトは逃げたい気持ちでいっぱいになった。

「ウィル、ミズトよ、ちょうど食事の時間だ。食べていくがよい! 我らとおぬしらの旅路が交わったこの瞬間を、一緒に祝おうではないか!! 宴だ! 皆の者、宴を開くぞ!!」

「おおおぉぉぉぉ!!!」

ケイリアスの言葉に、周囲にいた『トゥルガイ』の男たちは歓声を上げた。

(まさかここで飯食ってけって言ってるのか!? 少数民族の集落なんて、どんなもの食わされるのか……)

【ミズトさん、それは侮辱であり、極めて失礼に値します】

エデンが注意するように助言した。

(ああ……もちろん分かってるが、そういうの苦手なもんは苦手なんだから、仕方なくないか? ゴーレム飯の方が全然マシなんだけど……)

【ミズトさん、諦めてください。せっかく歓迎してくださっていますので、お気持ちに応えましょう】

(だから、分かってるって言ってんだろ……)

ミズトは満腹なふりをするか、小食のふりをするか、なるべく食べないで済む言い訳はないか必死で考えていた。