軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第204話 エルフのフェリシー

「ミ、ミズトさん、すいません……」

自分たちが助けられたと分かっているデイヴが、恐縮した態度でミズトの元へやってきた。

他のメンバーも順次従う。

「ちょっと一旦休憩しましょう。モンスターが出現しないよう結界を張ったので、少しの間は大丈夫です」

ミズトの言葉は半分嘘で、エデンがマジックシールドを張りながら、出現するモンスターを一瞬で消し去るだけだった。

「あ、ありがとうございます……」

それがどれほど凄い事か分からない若者たちは、ミズトの言葉どおりに休憩することにした。

「では、五人はこのままここに居てもらって、フェリシーさんは少し来ていただいてもよろしいでしょうか?」

「え……? 私……!?」

フェリシーは、突然ミズトに名指しされ戸惑いを見せたが、ミズトが問答無用に離れていくので、慌てて後を追った。

ミズトは、五人に声が届かない程度に離れると、フェリシーへ語りだした。

「私は皆さんをサポートするだけなので、こんなことを言う立場ではありません。しかし、このままでは何度も危険な目に遭うことになるので、フェリシーさんのお時間をいただきました」

いちいち助けに入るのが面倒なんだよ、という本音は少しも見せてない。

「はい……」

「フェリシーさんは何故このパーティに参加されたのですか?」

「何故……? えっと……昇格のためです」

フェリシーが素直に答えた。

「そうです、フェリシーさんも、他の皆さんと同様に冒険者の階級を上げるために参加されたのだと思います。たしかにフェリシーさんはパーティの中で一番レベルも戦闘力も高いかもしれません。しかし、だからこそフェリシーさんが協力すれば、パーティの効率が良くなるはずなのです。競争しているパーティに勝ち、昇格する目的に最も近くなるはずなのです。もう一度伺いますが、フェリシーさんの目的は、実力を皆さんに示したいだけなのですか? それとも昇格したいのですか?」

(なんで俺がここまで言わないといけねえんだ)

「…………ミズトさんは、セシル様とパーティを組まれたことがあるというのは、本当でしょうか?」

(はあ~? こいつ話を変えてきやがった)

「セシルさんというのは、セシル・フルールさんのことでしょうか……?」

「はい! ハイエルフのセシル・フルール様です!!」

フェリシーの目が輝きだした。

「ええ、まあ……以前お世話になったことがあります」

「やっぱり本当だったんですね! あのセシル様と組むなんて、ミズトさん凄いですわ!!」

(なんだこいつ……)

急に擦り寄ってきたフェリシーに、ミズトは戸惑った。

【フェリシーさんはセシルさんに強い憧れを持っております。崇拝に近い感情のため、そのパーティメンバーであるミズトさんにも、敬意を抱いているようです】

エデンが答えた。

(なるほど、そういうことか。なら……)

ミズトはフェリシーに、セシルと出会ってエンディルヴァンド地下洞窟へ行った時の話を語りだした。

セシルは、パーティメンバーのミズトと相互に協力しあい、格下であってもパーティメンバーを尊重する人物だったと、必要以上に強調して説明した。それが、今のフェリシーとはかけ離れていると理解させるように。

「セシル様が低レベルの人間相手にそこまで……」

「はい、セシルさんはパーティが協力しあうことの重要さを理解し、それを実践していた尊敬できる人物でした」

「分かりました! 私もセシル様と同じように、パーティと協力するエルフになります! セシル様のことを教えてくださりありがとうございました!!」

フェリシーはそう言うと、『裂空の槍』のメンバーのもとへ駆け出した。

(…………)

ミズトが唖然としながら見ていると、フェリシーはメンバーに向かって頭を下げ、

「今までごめんなさい! これからは皆と協力して戦うわ!」

と謝罪した。

(切り替え早っ!?)

【それほどフェリシーさんにとってセシルさんの存在が大きいのです】

(まあ……なんでもいいけど……)

【ミズトさんもこちらの世界に来たからには、独りで生きていこうとはせずに、友人や恋人をつくり、ひいては家族を築き、様々な人たちと絆を結んで生きていくことを選んでください】

(…………)

大きなお世話だ、とミズトは心の底から思っていた。

それから『裂空の槍』の戦いの変化は目覚ましいものがあった。

フェリシーが協力的なことで、別々に戦っていた時より格段に効率的になったのだ。

その効果は外から見ているミズトはもちろん、本人たちも実感し、若い冒険者たちは協力することの大事さを学んだのだ。

そして、その後は地下二階で苦戦するようなことはなくなり、危なげなく地下三階への入口を見つけた。

地下三階へ降りたら終わり。そんな簡単な依頼のはずだった。