軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第20話 待ち伏せ

次の日、ドゥーラの町に来て三日目の朝、雑貨屋の開店時間に合わせてミズトは部屋を出た。

前日に初級ポーション十本分の薬草を集めていたが、調合する前に割られた分の瓶を補充することにしたのだ。

雑貨屋までの間、いつもの敵意ある視線はだいぶ減っていた。

昨日の騒動のせいなのか、たまたまなのかはエデンでも判断つかなかったが、理由はどうあれミズトとしては大歓迎だった。

それから雑貨屋で五本の空瓶を購入し、部屋に戻って調合を実行した。

今日も成功したのは五本。現状の成功率は五十%と思って良さそうだ。

ミズトは五本の初級ポーションを持ってもう一度雑貨屋へ出向いた。

「そっちから出るのはやめておいた方がええ」

ポーションを売り、そのお金で次の分の空き瓶を購入してから店から出ようとすると、雑貨屋の主人がミズトを引き留めるように言った。

「なぜでしょうか?」

立ち止まって振り返る。

「お前さんが来るちょっと前から、その辺で待ち伏せしている奴らがおる。目的が分からんが、裏口から出てった方がええ」

「お心遣いありがとうございます。でも私は大丈夫ですので」

と、ミズトは笑顔で返した。

(雑貨屋のおじさん、良い人だな)

【はい。この町は治安が悪く、盗賊まがいの冒険者も多くいますが、ごく普通に暮らしている善良な人たちもちゃんとおります】

(だな)

ミズトはこの町に来て、初めて心が和んだ気がした。

「兄貴、このガキが昨日言った奴でっせ!」

店を出ると、五人組の男が現れた。

うち二人は、昨日ナイフを出して 脅(おど) してきた悪党の二人組だ。

(案の定、来やがったか。やはり俺待ちだったようだ)

【はい、そのようです。今のミズトさんは敵意の強さも感じ取れるので、遠目で様子を 窺(うかが) っている者と、こういう直接的な者たちとの判別ができるようです】

(こう何度も色んな視線に 晒(さら) されるとな)

【分かっていて出ていったということは、彼らと争うということでしょうか?】

(ああ、もちろんだ。俺の部屋を荒らした奴はきっとこいつらだ。もし違ったとしても、もうこいつらってことでいい)

【わたしの計算では五人相手にミズトさんの勝ち目はありません。昨夜の喧嘩結果を補正に入れても、勝敗は五分五分と算出されます】

(関係ねえな。そんなことより五人がかりで待ち伏せしてくることが気に入らねえよ)

増えた三人は全員レベル28で、格闘家のように大きな身体だ。兄貴と呼ぶだけあって更に強い者を連れて来たのだろう。

しかし今のミズトはステータスなんて見向きもしなかった。

「おいガキ! 今日は素直に金を出しても許さねえからな! 覚悟しとけよ、へっへっへ」

細身の悪党はもう勝った気でいるようだ。

昨日と違ってナイフを出してこないので、脅しではなく痛めつけるつもりで来たのが分かる。

「何の御用か聞くまでもないようですね。こちらから伺うつもりでしたが、来ていただいて助かりました」

ミズトは不用意に近づいて行くと、それを合図に五人が襲ってきた。

「このガキがぁぁぁ!」

「これでも喰らえ!」

「やっちまうぞ、こらぁ!」

ミズトは昨夜の喧嘩のように、最初のうちはうまく避けて殴り返していた。

しかし相手は五人。避けてばかりで殴る回数が少ないことにイライラしだして、途中から避けもせずに殴る回数を増やすことにした。

「こ、こいつワザと殴られて!?」

相手もそのことに気づきだすと、ミズトの異様な戦い方に気圧され、戦況はあっという間に傾いた。

「あ……兄貴! このガキ、頭イカれてますぜ!?」

「チッ、とんでもねえガキだったみたいだな……」

数分もしないうちに、五人とも立っているのがやっとの状態になっていた。

ミズトもかなり殴られていたが、とくに怪我らしい怪我はない。頑丈さに大きな開きがあるようだ。

「さて、盗賊の皆さん、どうされます? 私の勝ちでよろしいでしょうか? 引き分けという選択肢はお受けできませんが?」

「ガキが調子に乗りやがって……。クソッ、今日は俺らの負けだ! だがな、てめえはマックス一家に手え出しやがったんだ。ただで済むと思うなよ!」

兄貴と呼ばれていた男がそう捨て台詞を吐き、足を引きずりながら去っていくと、他の者も付き従った。

(一昨日きやがれ、ってこういう時に言うんかね)

【今のは危険な戦い方でした。相手のレベルがもう少し高かった場合、勝てるものが勝てなくなる可能性がございます】

(なんだよ、エデンさんは忠告までしてくるのか?)

【いいえ、今のは客観的な評価になります】

(あっそ……)

ミズトは辺りを見回しながら返事をすると、店から顔を覗かせている雑貨屋の主人と目が合った。

「お前さん、早く逃げた方がええ! やつらはマックス一家じゃ!」

主人は慌てて声を掛けてきた。

「マックス一家? そういえばそんなことを言ってましたね。ご存知なのですか?」

「お前さん、マックス一家を知らんのか!? この町の三大勢力の一つじゃ。マックスという恐ろしい男を頭にした暴力的な集団で、この町の治安の悪さは、半分以上がやつらのせいと言ってよい!」

(マフィアかヤクザのつもりか。こんな辺境でお山の大将気取りとか、まじウザったいな)

「そうでしたか。ご忠告ありがとうございます。十分に留意いたします」

「いや……お前さん……本当に分かってるのか……?」

「もちろんです。それではまた明日もお伺いしますので、よろしくお願いします」

「あ、ああ、そうかい……」

主人はそれ以上言葉が出ないようだ。

それからミズトは部屋に戻ると、籠を 担(かつ) ぎ、空き瓶十本も含め全ての私物を持って、町の外へ出掛けた。