軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第192話 坑道の奥

それから周辺の状況を確認しながら向かっているミズトに、エデンが急かすように言った。

【ミズトさん、もう少しお急ぎください。手遅れになる可能性があります】

(手遅れ……?)

一瞬、何のことか聞き返そうとしたが、目的の先にいるモンスターが何かを思い出すと、ミズトは少し急いで採掘場へ向かった。

すれ違う数体のモンスターを撃退しつつ採掘場に辿り着くと、周辺はかなり混乱した状況にあった。

採掘場にある複数の坑道からモンスターが現れ、数人の衛兵と鉱夫がそれにあたっている。

しかしモンスターの数に対処しきれずに、何体ものモンスターが街へ流れ出しているのが見えた。

ミズトが対処すれば簡単に終息するが、それよりもグリノス系モンスターの方が気になった。

(エデンさん、グリノスはどっちだ?)

方向は分かるが、どの坑道か分からないミズトはエデンに尋ねた。

【一番左端にある坑道になります】

(了解だ)

ミズトは答える間もなく、クロぐらいしかついて来られないような速度で坑道に突入した。

坑道に入ると、グリノス系モンスターだけではなく、奥にいる人の気配も察知した。

強力なグリノス系モンスター相手だというのに、どうやら戦闘しているようだ。

かなり勇敢なことではあるのだが、強さを感じとれるミズトからすると、それはただの無謀に思えた。

(くそ、間に合うか?)

一刻を争う状況と判断し、クロすら置き去りにする速度で飛び出した。

坑道奥で見つけたのはレベル98のグリノスミノタウロス。

戦闘の決着がついたところだったが、どうやら間に合ったようだ。

弱ってはいるものの、壁際に見える瓦礫の中から人の気配がする。

(あぶねー。様子を見に行ったら死んでました、なんて言えないだろ)

ミズトは、先ほどまで余裕を見せていた自分を悔やんだ。

ミズトに気づいたグリノスミノタウロスは立ち止まると、ミズトに向きなおり、

「ブォォォォォォォーーーーーッ!!」

と雄叫びをあげる。

同時に、瓦礫の下の気配が何か言っているようだが、よく聞き取れなかった。

(エデンさん、坑道が崩れないよう『マジックシールド』を張れるか?)

坑道内は広くない。

さすがに今のミズトの魔法制御でも、グリノスミノタウロスを倒すほどの威力で『ストーンバレット』を撃てば、坑道が崩れかねなかった。

【もちろん可能ですが、このような狭い場所では『エナジードレイン』の使用をお勧めします】

(エナジードレイン? なるほど、弱らせるって手もあるか)

「エナジードレイン」

ミズトは勧められた魔法をグリノスミノタウロスへ放った。

するとグリノスミノタウロスの気配は一瞬で消え、肉体が消滅していった。

(…………ん?)

【『エナジードレイン』は相手から生命力の一部を奪う魔法ですが、ミズトさんが使用すれば、この世界に存在するどんな生命体でも即死させられます】

(即死……?)

なんだかまた危ない武器を持たされたような気分になったミズトは、もう使うことはないだろうと考えた。

(ちなみに、一度覚えた魔法を忘れることはできるのか?)

【習得したスキルや魔法を削除出来る力は、神の領域になります】

(…………)

次から魔法の効果をよく確認してから習得することを心に決めた。

それから崩れた瓦礫を、空の段ボールを運ぶように簡単に取り除くと、エデンから聞いていたとおりタクマの友人ウィルの姿を見つけた。

(なあ、エデンさん。中級ポーションでも完治するか?)

ミズトは潰れたウィルの脚を見ながら、エデンに訊いた。

【接合ではなく再生が必要なため、完治させるには上級ポーションが必要です】

(そうか……)

ミズトはマジックバッグから上級ポーションを取り出すと、

「ご無事で何よりです。これをどうぞ」

とウィルへ差し出した。

「キ、キミはたしか……」

ウィルはミズトの顔を見て驚いている様子だ。

「私はタクマさんにお世話になっている者です」

相手が 異界人(いかいびと) 嫌いなのは知っていたので、警戒心を解くつもりでタクマの名前を出した。

「そ、そうだったか……」

ウィルは困惑している様子で、差し出された上級ポーションに手を出しはしたが、掴む直前で躊躇している。

さすがに上級ポーションだとは想像できていないだろうが、 異界人(いかいびと) から何か受け取ることには抵抗があるようだった。

ミズトは面倒になり、押し付けるようにウィルの手のひらに上級ポーションを充て、手を放した。

「!? まっ…………いや……すまないな……」

ウィルは思わず掴むと、そう言ってミズトの顔を見ながら上級ポーションを飲み干した。

すると全身の傷とともに、潰れた脚もあっという間に完治した。

「なっ……!? ちょっと……待って……くれ……。ま……さか…………これは…………!!?」

ミズトはウィルの言いたいことが分かったので、すぐに視線を逸らして、

「タクマさんがあなたのご無事を気にされていました。まずはここから出ましょう」

と出口へ歩き出した。

すでに追いついていたクロが、足元に寄ってくる。

「そ、それも……そうだな…………。たしかに、モンスター発生の状況も気になるところだ……。優先順位を間違えるわけにはいかん」

ウィルは立ち上がると、ミズトに従って歩き出した。

ミズトは周囲に意識を向けると、新たなモンスターの発生は止まっていることを確認した。

グリノスミノタウロスを退治したことで止まったのだ。

ただ、すでに街へ流れたモンスターが消えるわけではなさそうだった。

「なあ、 異界人(いかいびと) のキミが何故俺を助けに? 冒険者ギルドからの依頼か?」

後ろを歩くウィルがミズトに尋ねた。

「いえ、依頼があったわけではありません。たまたま、タクマさんと一緒にあなたの話を聞いたので、様子を伺いに来ただけです」

ミズトは振り返らずに答えた。

「そうか……。それにしてもあれを簡単に倒すとは、ヒロを止められるかもしれないという話……」

「はい?」

ミズトはよく聞き取れず聞き返した。

「いや、すまない、こちらの話だ。キミの言うとおり、まずはここから出ることが先決だな」

ウィルはミズトを追い越すと、小走りで出口へ向かった。

一緒に行動する理由はないのだが、ミズトもクロと共にウィルの後を追った。