軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第180話 噂のポーション屋

更に少し歩くと、ウィルは目的のポーション屋を見つけた。

聞いていたとおり大通り沿いにある五階建ての立派な建物で、人の出入りの激しさが、流行っている店なのだと教えてくれた。

「なっ!?」

ウィルが近づくと、店の中から先ほど遭遇したゴーレムが現れた。

ダンジョン内で戦ったことのあるゴーレムよりは一回り小さいが、間違いなくゴーレムだった。

あれが暴れ出したら自分が行くしかないが、アレックスたち家族を支えるために大きな怪我をするわけにもいかない。

ウィルは急に大きな選択を迫られたような気になった。

しかしゴーレムは先ほどと同様、ただの通行人のように歩き、周りにいる人たちはあれを気にしていない。

極限まで警戒心を高めたウィルの横を、ゴーレムは何ごともなく通り過ぎていった。

「…………」

ウィルはまたも少しの間、立ち尽くしていたが、帝都の日常に異変が起こることは無かった。

いったいこの状況はなんなのか、理解できないでいた。

気を取り直してポーション屋に入ると、品揃えの豊富さと活気に驚かされた。

武器や防具など様々なアイテムを取り揃えた総合店なら分かるが、ポーション専門店でこれほどの店をウィルは見たことも聞いたこともない。

さすがレガントリア帝国の帝都だけあると感心した。

店内を見回ると、目当てのポーション売場はすぐに見つかった。

活気のある店内の中でも、一際賑わっている一角が、最高品質専門の商品棚になっていた。

「し……信じられん……。最高品質のポーションをこれほど揃えるなんて……」

ウィルはポーションを一つ手に取った。

ラベルを見ると、最高品質の初級魔力ポーションと書かれている。

異界人(いかいびと) でもないウィルは、見ただけでアイテムの詳細が分かるわけではない。

しかし、この世界で商品の偽装は重罪であり、帝都のこのような場所にある店が偽るわけがない。

値段も良心的で、庶民でも手が届く範囲だ。

一人一つまでの購入制限があるにしても、噂以上に信じがたいポーション屋だった。

だが、ウィルの目的のポーションは見当たらなかった。

体力回復、魔力回復、解毒薬などの状態異常回復から、能力強化まで様々な種類のポーションが置いてあった。

どれも貴重で、とてつもない効果を期待できる。

しかしウィルが欲しているポーションはただ一つ、上級ポーションだった。

高品質以上の上級ポーションは、失った腕や脚を再生することができる。友人アレックスの脚を治すことができるのだ。

「くそ……せめて高品質でもあれば……」

ウィルは悔しそうな表情を浮かべた。

「お客さん、何かお探しでしょうか?」

そんなウィルにポーション屋の店員が声を掛けてきた。

愛嬌のあるハーフリングの男で、名札を見るとここの店主のようだった。

「いや……ここでも扱ってないようだ」

ウィルは小声で答えた。

「うちにないですって!? お客さん、いったい何をお探しで? 私はここの店主アリヤンと申します。ご希望の商品の棚へ私がご案内しますので、お探しのポーションをお申し付けください!」

アリヤンは少し感情的に言った。

「すまない、この店を責めているわけではないんだ。俺が欲しいのは上級ポーションだ。最高品質じゃなくても、せめて高品質があればと思ったんだが、さすがに扱っているわけがなかった」

「上級ポーション!? も、申し訳ございません……さすがに上級ポーションのお取り扱いは……」

アリヤンは目を伏せて答えた。

「だろうな。そんなものがあったら帝国騎士団が見過ごすわけがない。聖女様の力と同等のポーションなんて、あっていいものでもないしな」

「はい……おっしゃる通りです……」

「……それにしても、ここは良いお店だな。たしかに最高品質というとんでもない商品を扱ってはいるが、それを抜きにしても十分な品揃えもあるし、接客も良く清潔だ。この帝都に相応しいポーション屋と言っていいだろう」

ウィルは気落ちしたアリヤンを 励(はげ) ました。

「お客さんもそう思いますか! 私は誇りをもってこのお店をやっています! ただお金を稼げればいいわけではない! 薬師としてポーションを必要としているお客様を救うためにやっているのです!」

「へえ、キミは薬師なのか。ってことは最高品質のポーションはキミが調合したのか?」

「いえ、とんでもありません。最高品質の調合なんて、私には不可能です。いえ、私だけではなく、世界中すべての薬師には不可能と言っていいでしょう。本来ならダンジョンの宝箱から偶然発見するぐらいです。しかし、世界で唯一人、先生だけは最高品質の調合が可能なのです!」

アリヤンは興奮気味に言う。

「そうか、こんなものを作れる薬師がいるのだな。その人は間違いなく世界最高の薬師なのだろう。そんな人でも、上級ポーションが作れないのが残念だ……」

「何を言っているんです! 先生に調合できないポーションなんて…………あっ!?」

アリヤンは慌てて自分の口を両手で塞いだ。

「ちょ……ちょ……ちょっと待ってくれ…………。まさか、その薬師なら……高品質以上の上級ポーションを作れると言うのか……?」

「…………」

アリヤンは両手を離さず、何も答えない。

「作れるんだな!! どこだ!? その薬師はどこにいる!?」

ウィルは思わずアリヤンの両肩を掴むと、揺さぶりながら言った。

アリヤンは口を塞いだまま、顔を左右に振って答えない。

「頼む! その薬師に会わせてくれ! 上にいるのか!?」

「お、お、お待ちください、お客さん!」

アリヤンは、階段へ向かおうとするウィルを引き留めると、

「も、申し訳ございません、先生は帝都にいらっしゃいません! 今は帝国を離れ、隣国へ行っているはずです!」

「なに、いないのか!? 本当だろうな!? いや……すまない……そうか……今は不在なのか……」

ウィルはアリヤンから手を離した。

「はい、先生は二週間ほど前に帝都を発たれました」

「その薬師はいつ戻ってくるのだ?」

「分かりません。それに、もし戻ってきたところで、上級ポーションをお売りすることはないでしょう」

「そうかもしれないが……手に入る可能性があるなら、俺は諦めるわけには……」

ウィルは、「また来る」と言ってアリヤンの店を後にした。