軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第154話 ミズトの成すこと

それから小一時間ほど経過したが、革命軍との交渉はまだ続いていた。

戻ってきたジェイクが言うには、条件に折り合いをつけて停戦に持ち込もうと帝国が提案しているにも関わらず、革命軍が納得せず長引いているようだった。

顔合わせのような共和国との会談と違って、中身のある交渉にジェイクは興味ないので、一人で抜けてきたのだと言う。

その間、帝国軍は忠犬のように、革命軍の陣地周辺で整列して待っていたが、冒険者たちはとっくに自由行動をとっていた。

彼らを自由にさせることで、帝国軍相手と同じように、革命軍と小競り合いでも始めたら 煩(わずら) わしいと考えていたミズトだったが、実際は反対だった。

革命軍の陣地内で冒険者たちは人々と仲良くなり、あちこちで酒盛りを始めてしまっているのだ。

(こいつら、何しに来たか分かってるのか?)

陣地内をジェイクたちと歩いていたミズトは、そんな様子を見ながらそう考えていた。

【羨ましいのでしたら、ミズトさんも輪に入ったらいかがでしょうか?】

いつも通りエデンはミズトを思って提案する。

(……入らねえし)

【 異界人(いかいびと) であることを気にされているのですね。そういうことでしたら、以前イベントクエストで入手したアイテムを利用すれば、 異界人(いかいびと) と気づかれないようにすることも可能です】

(イベントクエスト……? まさか着ぐるみとか言わねえよな?)

【着ぐるみには、『偽装ステータス』と『認識阻害の機能』が付与されています。そのため着ぐるみを着たままでも輪に入ることができるでしょう】

何言ってるんだこいつはと思いながらも、もともとミズトは大勢で飲み食いしながら騒ぐことが苦手なので、エデンの言葉を無視した。

ただ、輪に入ろうとしなくても、歩いているだけでミズトが 異界人(いかいびと) だと何度か騒ぎになった。

ジェイクたち『氷雪旅団』が同行していたので、いい隠れ 蓑(みの) になっていると思っていたのだが、気づく者は気づくようだ。

しかし、騒ぎになるたびに、ジェイクたちが帝国の冒険者だと説明し、話が大きくならずに直ぐに収まった。

それどころか何度か繰り返しているうちに、革命軍の中でも話が浸透して

「いや、待って待って。彼は帝国の冒険者らしいよ。セルタゴでこんな可愛い子犬を連れた 異界人(いかいびと) なんていないからね。『スマイルファミリー』とは関係ないし大丈夫だよ」

と仲間内でも説明してくれるようになっていた。

【良い方たちばかりですね。ジェイクさんたちは、帝国の冒険者だと説明するために同行してくれていました。革命軍の方々も、共和国と関係のない 異界人(いかいびと) まで敵意を向けるようなこともなく、とても親切に接してくれています】

ミズトが何度か酒の席に誘われたことを、エデンは言った。

(…………)

【ここは革命軍の味方になってみてはいかがでしょうか? ミズトさんなら彼らのために帝国軍も共和国軍も全滅させられます】

(はは……)

アホらしくて答える気にもなれない。

【ではどうされるのでしょうか? 彼らのために何かしてさしあげないのでしょうか?】

(…………)

彼らのために。

ユウマたち『スマイルファミリー』だって同じだったのかもしれない。

異界人(いかいびと) と共和国の人々が共存するために、彼らなりにやってきたことなのかもしれない。

それがたまたまこんな結果になってしまった。

ミズトが仮に彼らのために何かやっても、良い結果に結びつくとは限らない。

ユウマたちが間違っていて、ミズトが正しい。そう言える根拠なんてないのだ。

ミズトは、この革命鎮圧部隊で何を成せばいいのか、分からなくなっていた。

「モンスターが出たぞー!!」

突然、ジャンジャンと鐘のようなものを鳴らす音と共に、見張り台に立っていた男が大声を上げた。

ミズトは言葉の意味を理解し、すぐに周囲の気配を探ってみた。

たしかに百体程度のモンスターの気配がする。

ただし、聞いていたとおりレベルはあまり高くなく、冒険者たちなら簡単に対処できそうだった。

しかし、ほとんどが一般人の革命軍は、そうもいかないようだ。

初めてミズトと対峙したときと同様、武器と言えるかどうかも怪しい道具を構え、恐怖に怯えながらモンスターを迎え撃とうとしている。

「ミズト。どうやら俺様たちの出番のようだな」

ジェイクが小声でミズトに言った。

そしてすぐに、周囲を見渡しながら大きな声をあげる。

「てめえら! ここは俺様たちに任せて、冒険者以外は邪魔だからテントに入ってろ!!」

ジェイクの低い声が遠くまで届く。

悪役のような乱暴な言葉だったが、革命軍の人たちには彼の意図が伝わったのか、ありがとうと礼を言いながらテントに入っていく者さえいた。

「よし! 足手まといがいねえうちに片づけちまうぞ!」

ジェイクはそう言って斧を構えると、『氷雪旅団』のメンバーを引き連れて周囲のモンスターを狩りに向かった。

一人取り残されたミズトは、周囲の気配に改めて意識を向けた。

数も強さも、冒険者が圧倒している。これなら革命軍に被害が出るようなこともなく、ミズトの出番もなさそうだった。

(弱いモンスターしか発生しないって言っても、革命軍のメンバーだけじゃ対処は難しそうだな。なあ、エデンさん、何でこんなとこを陣地にしたんだ? モンスターが発生しない場所はあんまりないのか?)

【申し訳ございません、今はお答えできません。なお、一つだけ補足しますと、大きな街道は比較的モンスター未発生エリアに整備されています】

(………………なるほど)

エデンが答えない部分が多少気になったが、この世界の人々にとってモンスターは当たり前の存在。この程度のモンスターの脅威は当然のリスクとして受け入れているのかもしれない。

ミズトはそんな気がした。