軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第62話 モルガン視点

鍛冶長の立場を失い、その座には騎士団長様の知り合いという人間がついた。

鍛冶の才能はないが、この腐った鍛冶課を立て直すための人事ということだ。

オレも最近は鍛冶をしていない。とにかく、これまでに宮廷鍛冶師になった者たちに手紙を送るという作業をしていた。

何人かには連絡を取ることができ、実際に宮廷に戻ってきてくれた人もいた。

オレは必死に土下座をしていった。悔しい、苦しかった……。

それでも、生き延びるためにオレはプライドを捨てた。

そうしないと、生きていけないからだ。

『騎士団長様に目をつけられた以上、おまえを家に置いておくことはできない』

『パパ! 助けてくれよ! パパの後ろ盾がないとオレ死んじゃうよ! 見捨てるのかよ!?』

『黙れ。もうおまえは家から追放した。そもそもだ。コネで宮廷にまで入れてやったというのに、先に見捨てられたのは私たちの方だ! こちらだっておまえが原因で立場が前よりも悪くなっているのだからな! その責任を問わないだけありがたく思え!』

『ぱ、パパー!』

……これは、この前屋敷に戻ったときにあった会話だ。

オレの居場所はなくなり、今はこの宮廷で寝泊まりをしていた。

ここまでしているというのに、しかし……返事がない奴らもいる。

ふざけるなよ……! オレがここまでしてやっているというのに……!

オレがもっとも呼び戻さなければならないのはフェイクだ。

騎士団長様は絶対に勘違いをしているんだ。フェイクは優秀な鍛冶師なんかじゃない。

それが証明できれば、オレの立場も少しは改善するかもしれないんだ。

だからこそ、絶対にあいつだけは連れ戻す必要があるというのに。

なのに、なのに! あの野郎……! 一切の返事をよこさない!

アリシア様のもとにいるのなら、さっさと返事をしろというんだ! いないのなら、いないと連絡をよこさないか!

そんな基本的なことも出来ない奴らに、腹が立った。

そうこうしている間に、オレの取り巻きたちは全員解雇された。

完全に孤立した状況でも、オレは何としてでもフェイクを連れ戻さないといけないんだ。

バーナスト家は一体今どうなっているんだ?

なぜ手紙の返事が返ってこないんだ?

苛立ち、腹立たしかったオレだったが、その時鍛冶課の扉が開いた。

「アリシア様とそのフェイク様が、社交界参加のためやってきました!」

鍛冶課全体に衝撃が走る。オレは彼の話を聞き、我先にと飛び出した。

ようやく、ようやく戻ってきたな!

これで、オレの安全は守られるんだ!

フェイクは社交界に参加したあと、アリシア様とともに帰宅した。

……彼はアリシア様の婚約者となったらしい。

ありえない。こんなこと、ありえるはずがない。

騎士団長様もフェイクには声をかけたそうだが、もうこの国には戻らないと断ってしまったらしい。

……俺は今、無表情でこちらを見下ろしてきた騎士団長様と対面していた。

「これまで、良く鍛冶師たちを戻してくれたな」

「……そ、それでは――」

「一応、オレの部隊の一つが人手を欲している。騎士として雇ってやることもやぶさかではない」

「……き、騎士。せ、せめてもう少し立場の良いものを――」

「ならば、この話はなかったことにさせてもらおうか。それでは」

「ま、待ってください! わ、分かりました! き、騎士でいいです!」

「……そうか。それならば……おい、ルコル、彼が例の男だ」

騎士団長様がそう呼んだ男の名前には、聞き覚えがあった。

鬼教官のルコル。

彼の部隊は、犯罪者たちで構築されていると聞いたことがある。

奴隷の首輪をつけ、どうしようもなくなった犯罪者たちを教育し、兵として使っているとか。

……こ、この国内でも特にヤバい部隊の一つだ。

ルコルは、顔に大量の傷がある男だ。その威圧感のある顔に、オレはがたがたと震える。

と、ルコルはこちらを見下ろしてきた。

ルコルは感情の一切ない目をこちらへと向けてきた。

「貴様には、我が部隊の雑用係をお願いする」

「ざ、雑用係ですか?」

その言葉に、多少苛立った。今は立場こそないが、これでも元伯爵家の息子だぞ?

「身の回りの掃除などだ。そのくらいならば、出来るだろう」

「そ、掃除ぃ!? オレは鍛冶師だぞ!?」

「黙れ!」

ルコルの声に、オレの全身がすくんだ。

「雑用係として基礎体力を作ってもらう! おまえには寮の一室を貸してやる! その部屋の先輩騎士たちの言うことを聞くように! 先輩騎士の命令は絶対だ! トイレを素手で洗えと言われたら洗うように! ああ、言っておくがうちの部隊に体罰なんて言葉はないからな! すべて教育だ!」

「ひぃぃぃ!」

「さっ、行くぞ! 体力がつけば騎士としての鍛練も始めてやる!」

ルコルはオレの首根っこを掴まえ、そのまま引っ張っていく。

さ、最悪だ……。

どうして、オレがこんな目にあっているんだよ。

鍛冶長にまでなって、ずっと将来は安泰だと思っていたのにーーー!!