軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第2話

「一大事が起きていたら、兄さんは泣きながら私たちの部屋に来るはず」

「……あぁ、なるほど」

「だから、たぶん悪いことじゃない。安心していいと思う」

アリシアの言葉には、長年兄妹をしていたゆえの説得力があった。

確かに、アリシアの発言したリガードさんの姿は想像できてしまった。

アリシアの兄であるリガードさんは、身内以外には完璧な人と見られている

だが、リガードさんの本性は基本的に憶病というか情けないというか……。

アリシアが言う通り、何か問題が発生したとしてじっと待っているなんてことはしないだろう。

リガードさんなら、ほぼ確実に先ほどのアリシアの言うような行動に出るはずだ。

ただリガードさんも、やるときはやるので……頼りにはなる人だ。領民や部下には頼りになる姿しか見られていないのだから、そりゃあ信頼されるわけだ。

とにかく、リガードさんのことをよく知るアリシアがそういうのなら、悪いことではないんじゃないかと納得できた。

「だとしたら、なんだろうな?」

「うーん……考えても分からない。とりあえず、兄さんに会ってみないと」

「そうだな」

アリシアも答えが出てこないようだった。

最近、何かあったかな?

そんなことを考えながらリガードさんの書斎まで歩いていった。

リガードさんの書斎の入口には兵士がいる。

こちらに気づいた彼は一礼して、それから口を開く。

「アリシア様。フェイク様。お疲れ様です。中でリガード様がお待ちです」

「分かった」

入口をすっと譲った兵士と変わるように、アリシアが中へと入っていく。

俺もそのあとをついていき、リガードさんの書斎へと踏み込んだ。

リガードさんの書斎には、リガードさんの本性を知る護衛とシーフィさんの姿があった。

椅子に腰かけ、堂々とした様子のリガードさんは俺たちを見るやその表情を緩めた。

「アリシア、フェイク。二人とも呼びつけてすまないな」

こちらを見るリガードさんの表情は穏やかだ。

この場にはリガードさんの本性を知っている人たちばかりなのにこの表情。

やはり問題が発生したわけではないようだ。

というか、なぜ俺はこんな分析をしているんだ、という考えが脳裏をよぎったが、それは考えないようにした。

「別に大丈夫ですが……どうしたんですか?」

俺がリガードさんに問いかけると、彼はにやりとからかうような笑みを浮かべる。

一体どうしたんだろうか?

不審に思っていると、リガードさんは一枚の手紙を懐から差し出した。

それをテーブルに滑らせるようにして、俺たちの方へと向けてくる。

俺たちはテーブルへと近づき、封のされた手紙を手に取った。

手紙にはゴーラル様の名前が書いてあり、俺とアリシア宛のもののようだった。

隣にいたアリシアが覗き込み、疑問の浮かんだ表情でリガードさんを見ていた。

「それはアリシアとフェイク宛のものだ。まあ、中を見てみてくれ」

そういわれ、俺はアリシアと目を合わせる。

どっちが読む? という感じで視線を合わせると、アリシアが僅かに微笑を浮かべ、片手を向けてきた。

この場にリガードさんたちがいるのを忘れるほどに可愛らしい笑みであったが、手紙についてをなんとか思い出して、それを開いていく。

アリシアが見えるように、腕を少し下げる。

手紙を開き終えると、隣に並んだアリシアが覗き込んできて、俺たちはその中身に目を通していった。

手紙の内容の前半は、リガードさんの手伝いをしたことへの感謝だった。また、シーフィさんの件などについても触れられていた。

感謝の手紙なのか? と思っていたのだが、二枚目の手紙から内容が変わっていく。

そしてそれこそが、リガードさんが俺たちを呼んだ最大の理由なんだろうと思った。

『それと、アリシアとフェイクの結婚式についてが決まった。日程に関してはこちらの屋敷に戻ってきたときに詰めるとして――』

「け、結婚式!?」

あっけらかんと書かれている内容に、思わず声を上げる。

いきなりこんなことが決まっても……驚きを共有したかった俺がアリシアを見ると、彼女も目を見開いていた。

「結婚式、決まったんだ」

あ、あれ? 思っていたよりも冷静だ。

アリシアがぽつりと呟くと、リガードさんがこくりと頷いた。

「らしいな。オレのもとにも親父からの手紙が来てな。『結婚式をするから様子を見てアリシアとフェイクを戻すように』という感じの手紙が届いていたんだ。そっちの手紙の内容についても簡単に触れられていたから、だいたい中身は予想できていたんだ」

リガードさんはからかうように、再び笑った。

俺たちを出迎えたときの笑顔の理由も、これで分かった。

アリシアのほうを見ると、少し恥ずかしそうにしながらもとても嬉しそうな笑みをこぼしている。

俺も、アリシアと同じように嬉しい気持ちでいっぱいだ。