軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第33話

糸、ではなく……それは小さな蜘蛛だ。

まるで、子蜘蛛のようなそいつらは一斉に皆へと襲い掛かる。

その数はかなりのものだ。全員が人間の頭ほどのサイズはあり、それは俺たちのほうへも来ていた。

「フェイク様、アリシア様、下がりください」

俺たちの護衛をしていたレフィだったが、その表情は険しい。

……そういえば、蜘蛛が苦手だったか。

それでも、飛びかかってきた子蜘蛛をレフィは剣で切り伏せていく。

相手が魔物でなければ、今にも逃げ出していたかもしれないが、護衛としてついてきているだけあり覚悟が見られる。

子蜘蛛は数こそ多いが、能力はかなり控えめのようだ。

そう分析しているとき、子蜘蛛がさらに分裂してこちらへと飛び掛かってきた。不意打ちのような動きに、レフィが慌てた様子でこちらへと顔を向けてくる。

「フェイク様、アリシア様、後退してください!」

「いや、このくらいは大丈夫だ」

そう短く返事をし、俺は剣を振りぬく。

飛びかかってきた子蜘蛛を両断し、それから周囲へと視線をやる。

さらに増えていた子蜘蛛の一体が、アリシアへと迫る。

しかし、アリシアは、さっと動いてすぐにレイピアで貫いた。

俺よりもあっさりとした動きでアリシアはレイピアについた血を払っていた。

「うん、ちょっとくらい体動かしておきたかったから、ちょうど良かった」

にこり、と微笑み近くの子蜘蛛たちを眺めていた。

アリシアも……問題なさそうだ。

それどころか、体を動かせることが楽しいようで、次の獲物へと視線を向けている。

子蜘蛛を見つけると、にやりと笑うその姿は少し怖くも見える。

……あまりアリシアを怒らせないほうがいいかもしれないな。

「フェイク、この剣なんだけど……凄い使いやすい」

アリシアは素振りがてらレイピアを振りぬいてみせる。

そのたびに風を切る音が耳に届く。

「そうか……それなら、良かった」

「あれ、フェイクどうしたの?

なんだかちょっと顔が険しい」

「い、いや、そんなことないぞ」

誤魔化しながら前を見ると、そちらの戦況もかなり動いていた。

グランスパイダーは子蜘蛛を生み出したことでかなり体力を消費したのか、兵士たちの攻撃に反撃できていなかった。

そして……部隊の隊長を務めていた者が剣を振り下ろすと、グランスパイダーの体は両断された。

「バキャァァ……」

グランスパイダーは掠れるような声を上げながらその巨体を崩し、みるみるうちにその体が霧のように消えていく。

あれで、討伐完了のはずだ。

グランスパイダーの体が完全に消滅した瞬間、空間がぐわりと歪んだ。

そして、気づけば俺たちは外にいた。

……迷宮を攻略すると、自動で外に吐き出される、というのは聞いていたが奇妙な感覚だ。

外に出たことで、迷宮攻略の実感が出てきたのか兵士たちが雄たけびを上げていた。

「よっしっ! 無事攻略完了だ!」

「これもすべて、リガード様のおかげです!」

兵士たちは嬉しそうに叫び、それからリガードさんへと頭を下げている。

リガードさんは微笑を浮かべ、首を横に振った。

「オレはあくまでついてきただけだ。皆が頑張ったからこその勝利だ」

リガードさんの表情は、いつも以上に嬉しそうに見える。

それもそうだよな。

散々不安に思っていた問題が解決したんだから、誰もいなければ小躍りしていたかもしれない。

リガードさんの嬉しさが兵士たちにも伝わったのか、兵士たちもつられるように喜んでいる。

「……リガード様が凄い優しい笑顔をされている」

「……ああ、本当にオレたちのことを思ってくれているんだ」

「なんとお優しい方だ……」

……リガードさんって、良い方向に誤解されがちだよな。

まあ、でも、リガードさんは良い人だし、そんな風に誤解されるのは必然なのかもしれない。

それに、もしかしたら本当にリガードさんは兵士たちが言うようなことを考えている可能性だってあるし、俺も疑ってばかりもよくないよな。

「それでは、これより街へと帰還する。皆、忘れ物などはないな?」

「はい! 大丈夫です!」

兵士の返事を聞き、俺たちはそれぞれの馬車へと戻る。

俺たちもリガードさんとともに馬車へと入ると、リガードさんは馬車の窓から外が見えないようカーテンを閉めた。

入口の扉が完全に閉まったところで、リガードさんは両手を上げた。

「わーい! やったぞー! 全部終わったぞー!」

「……兄さん、はしゃぎすぎ」

「そりゃあ喜ぶだろうさ! あとは家に帰って寝るだけだー。これでまたしばらくは平和な日々が続くなー! アリシアだって、しばらく自由時間になるんだから嬉しいだろ? フェイクと一緒に海とか遊びに行くんだろ?」

「それは、そうだけど……いきなりそんなテンション上げないで。見てるこっちが恥ずかしいから」

「いいじゃないか。なあ、フェイク」

「……まあ、そうですかね」

急すぎる変化とはいえ、リガードさんが喜びたくなる気持ちも分からないではない。

悩みの種を解決できたときの喜びというのは表現しづらいほどに嬉しいものだ。

俺も宮廷時代にどうしても終わりそうにない仕事を、どうにか達成できたときの喜びといえば、それはもうリガードさんのようにはしゃぎたくなってしまうほどだった。

予定より早く終われば、六時間くらいは眠れるのだからそれはもう歓喜だった。

馬車が動き出し、リガードさんも椅子へと座り、俺たちを見る。

それからすっと頭を下げたあと、上げた顔には笑顔が浮かんでいた。

「二人とも、ありがとな。二人が来てくれたおかげで思っていた以上に簡単に攻略できたよ」

「もう、兄さんは。困っているときはお互い様なんだから、相談してね」

「本当か!? それならば、弟たちをどうにかして領主にする方法を考えてはくれないか?」

アリシアがじとーっとした視線でリガードさんを見ている。