軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第28話

宮廷にいたときはもっと野心に溢れた貴族ばかりだったから、リガードさんは新鮮に見える。

ただ、リガードさんに対して俺は悪い感情は抱かなかった。

……もしかしたら、俺も似たような意識があるからかもしれない。

「俺もできる範囲で手伝いますから、頑張ってください」

俺がかけられる言葉はこのくらいのものだ。

できる範囲でなら、全力で補助したいというのは噓偽りのない俺の気持ちだ。

「オレはのんびり暮らせればいいんだがなぁ……フェイクはどうして貴族に婿入りなんてしようと思ったんだ? 大変ではないか?」

ぴくり、とアリシアが反応する。

権限はほとんどないとはいえ、アリシアと結婚することは俺も貴族の人に近しい立場になるのは確かだ。

というか、返答に困る回答だ。

貴族との関わりなどは俺も大変そうだと思っているし、面倒だなぁ、という気持ちもまったくないわけではない。

ただ、それ以上にアリシアと一緒にいられることが嬉しいというだけだ。

「……大変なことだとは思いますが、リガードさんの立場ほどではないと思いますし」

「でも、ほら。親父がうるさかったのではないか? アリシアのことかなーり大切にしていたようだし」

「……うるさいというか、色々とは指摘はされましたね」

「やはりそうか。まあ、親父のことはあまり気にするな。話半分で聞いていればいいさ」

「分かりました。何か言われたらリガードさんにそうしてもいいと言われたと言えばいいですか?」

「それはやめてくれ。親父にぶっ飛ばされるかもしれん」

リガードさんはひくひく、と頬が引きつっている。

冗談を言えるのも、リガードさんの持つ柔らかな雰囲気故かもしれない。

「冗談です、気にしないでください」

「むっ。フェイクまでもオレに意地悪するんだな。それで? 話を戻すが、アリシアとの結婚はどうなんだ? 面倒なら断ってもいいんだぞ? 貴族なんて嫌だろう? 一緒に逃げようではないか」

……ゴーラル様の話でうまく流せたと思ったが、話を戻されてしまったか。

期待するような目で見てくるリガードさんと、不安そうにこちらを見てくるアリシアが印象的に映った。

……恥ずかしいが、仕方ない。

本音を伝えるしかないだろう。

「俺も、確かに貴族の方々との関わりは大変だと思いました」

「だろう? やめておいたほうがいいぞ。もう、毎日吐いちゃうぞ」

「心配してくれるのは嬉しいですが……でも、その……アリシアと結婚できるのなら、それらは些細なことだな、って思いまして。……それが、俺の気持ち、ですかね」

めちゃくちゃ恥ずかしかったが、そういうとリガードさんはアリシアをちらと見た。

それから、にやぁ、と意地悪く笑ってからアリシアを指さした。

「だそうだアリシア。良かったなぁ、貴族が両想いで結ばれるなんて珍しいんだからなって……痛い! アリシア! それお兄ちゃんの腿!」

「……フェイクに、無理やり言わせるのやめて」

「無理やりとはなんだ! フェイクの素直な気持ちを否定するのか!?」

「私が怒ってるのは兄さんに。話逸らさないで」

「……わ、悪かったから! いいかげん腿を抓るのやめて! ネジ切れちゃう!」

「私がどうして同行しているか分かる?」

「か、回復魔法使えるからだろう! い、痛い!」

「うん。だから、安心して。怪我してもすぐに癒す」

「いやぁ! フェイク、助けてくれぇ!」

リガードさんが悲鳴を上げていると、アリシアがため息交じりに手を離した。

アリシアは投げやりがちに回復魔法をリガードさんに放ち、リガードさんは引っ張られていた腿を擦っていた。

「……も、もう。お兄ちゃんは二人の関係が心配だったから聞いただけなんだからな。まあ、フェイクとアリシアは良好な関係のようでお兄ちゃんは安心した。オレと婚約者のような関係じゃなくて良かったな、フェイクくん」

バシバシ、と俺の背中を叩いてくる。

時々フェイクくんと呼ぶときがあるが、そのときは恐らく半分ふざけが混じっているときなんだろう。

「そういえば、リガードさんも婚約者はいるんですね」

「まあな。貴族ともなれば色々な判断の上で、婚約相手が決まるものだ。そして、オレの相手は……とても野蛮なんだ」

「……野蛮なんですか?」

「ああ! すぐにオレに怒ってくるんだから、本当にやめてほしいものだ」

リガードさんが腕を組んでぷんすか声をあげ、アリシアがため息を吐いた。

「それは兄さんが情けない姿を良く見せるから。シーフィは別に野蛮じゃない」

「アリシアも知っているんだな」

「うん。友達だから。最近はあんまり会えてないんだけどね」

シーフィさんか。

いずれ、どこかで会うこともあるだろう。

二人の真逆の意見からどのような人なのかは判然としないが、それでもアリシアがここまで言うということは悪い人ではないのだろうと思う。

「こう話していると、嫌な気分も薄れていくな。よし、このまま迷宮のことなんて忘れて世間話でもしていようか」

リガードさんがそう言った時、御者を務めていたリガードさんの護衛が声を上げる。

「リガード様。迷宮が見えてきました」

「そのまま無視して進んでくれないか」

「ご準備をしてください」

「……はぁ」

リガードさんは情けなく顔を歪ませていた。

しかし、段々とその表情が引き締まっていく。

「リガードさんって、なんだかんだ言って領主としての顔を作るの上手ですよね」

「……あ、当たり前だろう。情けない姿を見せるわけにはいかない」

「立派、ですね」

「立派? 何を言っているんだフェイクくん! これはとても大事なことなんだよ!」

「どういうことですか?」

「皆をうまく鼓舞できれば、オレが直接動く機会がぐんと減るんだ! だからオレは、オレが楽できるように全力を出しているんだ! 覚えておくといい。いずれ、オレの跡を継ぐことになるんだからな」

「勝手に継がせようとしないでください」

……リガードさんが必死に外面を取り繕っている理由はそういうことだったのか。

自分が楽するために、周りの人に手を貸してもらうということだろう。

この考え方自体は間違っていないだろう。

一人で抱え込んでしまわずに済むだろうし。

リガードさんのそういった部分は俺も参考にしたいと思った。