軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第13話

「……恐ろしいな」

染みついた習慣というのは恐ろしい。

天蓋付きのベッドで目を覚ました俺は、部屋に置かれていた時計へと視線をやる。

いつものように午前5時に起床していた。

宮廷の仕事は基本的には9時から18時までとなっていた。

基本的には、である。

俺の場合は、朝6時までには職場に行き、各部屋の掃除などを行う必要がある。

昨日のうちに終わらなかった仕事の片づけはもちろん、新しく入っている仕事がないかどうかの確認も行う必要がある。

……まあ、そもそも俺は日付が変わるくらいまでは仕事をしていたので、新しい仕事に関してはだいたい問題はないんだが。

鍛冶師の仕事はエンチャントはもちろんだが、エンチャントが切れそうな装備品などに関しては鍛冶課からメンテナンスのお願いを各部署に出す必要があった。

鍛冶というのは武器を作るだけではない。細かな雑貨なども作製していたため、わりと様々な部署に顔を出していたのだ。

騎士課の次に多いのが、料理課か。宮廷内の食品に関して管理している部署だ。

……そろそろ、鍋や包丁などの手入れをする時期だったな、と思いながら俺はひとまず部屋を出た。

この時間に起きても今はやることがない。

鍛冶工房にでも行って、久しぶりに武器の作製でも行おうか。

軽く背筋を伸ばした俺は、鍛冶工房目指して歩き出した。

途中、メイドともすれ違っていく。

話を聞けば、メイドは早番組、遅番組などで分かれているらしい。

……見事な勤務体制だと思う。ちなみに俺は早番も遅番も一人で担当していた。

そんなことはいいんだ。

鍛冶工房へと入った俺は、早速部屋の隅に置かれた魔鉱石を確認していく。

魔鉱石というのは魔力を帯びた鉱石だ。エンチャントなどは魔鉱石で作ったものでないと付与が出来ない。

昔は鉄などで武器を作っていたらしいが、今ではこの魔鉱石が主流だ。

鉄にエンチャントを施してもあまり質が上がらないのだが、魔鉱石は違う。

エンチャントの有無で、切れ味が二倍三倍は変わるからな。何より魔鉱石は魔物から回収できるため、集めやすいというのもあった。

エンチャントのない武器とエンチャントのある武器で打ち合うと、前者の武器を余裕で斬り飛ばせるというのも冗談ではない話だ。

俺は早速魔鉱石を掴み上げ、手に魔力を込める。

魔鉱石にはいくつかの種類がある。

最高品質の魔鉱石がエスレア魔鉱石、そこからエイレア、ビイレア、シーレア、ディーレア、イーレア、エフレア魔鉱石と続いていく。

この鍛冶工房にあるものは、エフレア、イーレア魔鉱石ばかりで決して良いものではない。ただ、この魔鉱石が一番流通するものでもある。とにかく、今は最高品質の武器を作りたいわけではなく、ただ単に息抜きとして鍛冶をするだけだ。

火魔法を使い、持ち上げた魔鉱石を熱していく。

昔は火床やふいごを使ってこの魔鉱石を溶かす作業を行っていたようだが、今ではそういったものはほとんど使わない。

この鍛冶工房にも昔ながらの火床などはあるが、使われている様子はない。

魔鉱石が柔らかくなっていったところで、俺は小槌で魔鉱石を叩いていく。

キンッという音が工房内に響く。この音が俺は好きだった。

今回はナイフでも作ろうか。そんなことを考えながら、魔鉱石を叩いていく。

……魔鉱石が本来持つ魔力情報を理解しながら、魔鉱石を熱し、冷やしを繰り返し形を整えていく。

今使っているのはイーレア魔鉱石を用いての加工になるのだが、本来ならばまずは高純度の魔鉱石へと加工するところから作業は始まる。

複数の魔鉱石を組み合わせ、内部にある魔力情報を強化していくという作業だ。魔力製鉄と呼んでいる。

もとは鉄で行っていた作業なので、名前にその名残がある感じだ。

今回はそこまでしっかりとした武器を作るわけではないので、時間をかけての魔力製鉄は行わない。行えば、不純物が取り除かれてより素晴らしいものが出来上がるのだが、今は特にこれといった使い道を考えていないからな。

昔の鍛冶師は、才能も大事だが経験が重要視されていた。

温度を正確に判断できるように体で覚えたり、どの力加減で鉄を叩いていくか。

今でももちろんそれらは経験によって補えるのだが、今の鍛冶師は生まれながらの才能に左右される職業だった。

まず、属性魔法が使えること。火、水、風、土……この四属性が使えないと、中々鍛冶師になるのは難しい。

そして次に、今俺がやっているように「熱に強い体」が大事になってくる。

直接魔鉱石を手から伝わった魔力で熱していくのだ。これは、常人では熱量に耐え切れないらしい。

さて……次の作業へと移ろうか。